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その2 1パート

「そうかぁそんな事も有るんやなぁ」

「うん、そうなんだ、桜花ちゃん」

「あー、また言うた亮太郎!なんべん言うたらわかんねんな!」

「あっ…ゴメン」

「今日もバツとしてまた送って行ってなぁ」

「分かったよぉ…本当に」

 桜花と出会ってから一ヶ月、毎日神社に訪れ端から見ると「下らない」と言われそうな会話をする毎日が続いている。

別にこれといって決まった話題とかじゃ無く、日々の暮らしの事や学校の事なんかのささいな話題ばかりであった。

僕の気持ちの中でも最近ここへ来る目的も変わってきていて、神社の中のゆったりとした時間を楽しむ為では無く、桜花と出会って会話をしたいという思いになって来ている。

またこうして桜花と色々な会話をしているからかどうか分からないけど、少しずつ学校でもクラスメイトと会話が出来るようになってきた。

もっとも、まだ友人と呼べるような存在はいないけども、友人と言えそうなのが出来るのもそう遠い日では無いだろうと思う。


「あー!そうや!」

桜花が何かを思い出したかの様な声を上げながら手をポンと叩いた。

「ところで亮太郎」

改まった表情で桜花は僕の方に向いた。

最近、真面目な顔でこちらを向かれると思わずドキッとする。

別に「好き」とかいう感情で無く、何か「気になる」というのだけども。

「ん?ど…どうしたの改まって?」

「うちが改まった顔したら悪いんかいなぁ」桜花はぷいと小さくむくれた。

「いや、そうじゃなくて、ちょっと驚いただけだから」

僕は桜花をなだめる。もう本当に「天真爛漫」という言葉がぴったりくる。

笑う・怒る・悲しむ・真面目になる…

色々な表情がコロコロと変わる、その度に僕もなだめ・共に笑い、そして悲しむ。

そんな毎日が有るから桜花と毎日の会話を続けているのだけれども…

「何か趣味か何か有るん?」

「どうしたの、いきなり?」

「うん、ずっと聞こうと思ってて忘れてたかたと思ってなぁ」

そう言われて僕は色々と考えてみたが…

「趣味?うーん…本とかは良く読むけども…これといったものは無いね」

良く読書はするけども趣味と呼べるものでも無いし、他に思い出せなかった。

桜花はにへら笑いを浮かべた。


 マ…マズイ


本能的に「何か有る」と僕の中の危険信号が点滅する。

この一ヶ月色々な会話をしてきたが、桜花がこの表情をした時はロクな事がなかった。

一番最近この表情した時は、無理矢理ジャンケンをさせられた上「亮太郎が負けたから」とか言ってたこ焼きを奢らされたっけか。

「なら丁度良かったわ」

「丁度良かったって?」

「うちなぁ、最近アトリエに通ってんねんよ。良かったら今度の木曜日見に来る?」

へ?何じゃそりゃと思いながら、僕は訝しげに問い返した。

「アトリエって、絵とか書くアトリエ?」

「それ以外に何が有るんよ」

「いや、確認までにね…で、なんでまたいきなり僕を誘うの?」

「誘って悪い?」

「悪いと言うわけじゃ無いけど、どうしてかなぁと」

「そりゃ、何かやりたい事を亮太郎が見付けるのにやけど?」

何か凄くこじつけのような気がするのだけど思いつつ…

「……分かったよ、行かさせてもらうよ」こう返事するしか無かった。

別に断る理由も無かったし、ここで出会う以外の表情を見てみたいという興味も合ったから。

「やった!うれしいわぁ。なら木曜日にここに来てな!」

と桜花は地図を書いた紙をポケットから取り出して僕に手渡した。

「…えらく準備がいいね?」

「え?何の事や?気にしたら負けやねんよ」桜花はとぼけた顔をする。

「因みに「趣味有る」って答えたらどうするつもりだったの?」

「そりゃ…」

「それは?」

「「ここへ木曜日来てなぁ」って言うて地図を渡すだけよ」

胸を張って開き直った答える。

「いずれにしても僕には拒否権は無かったんだね」

「まぁいいやん、たまには。さぁ、駅までお見送りよろしゅうなぁ」

何かはめられた様な…


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