その1 1パート
はじめまして、此道 遊と申します。
この文章は、私が所属しているサークル「あきないやほんぽ」にて頒布している同タイトル「小さな小さな物語」と同一の作品です。
少し変わった内容となっておりますが、宜しければお付き合い下さいませ。
「コツン」と僕に何かが当たる。
何かなと思い振り返ると、例のごとくクシャクシャに丸められた紙切れが僕に当てられた様であった。
ふぅ…またか…
クラス全体の冷たい視線がヒシヒシと伝わってくる。
僕こと清原 亮太郎は、どうもクラス全員からの無視と無言の嫌がらせいうイジメに遭っているみたいだ。
「みたいだ」と表現するのは変なのだろうけど、僕自身があまり気にしていないからだろう。
両親の仕事の関係で転校を繰り返しているのでクラスに余りなじめず、無視されるなんていうのは日常茶飯事だからだ。
この学校にも、4月の新学年が始まって数日してから転校してきたから馴染めるはずも無い。
オマケに何かに優れている訳でもないからこれと言ったとりえも無い、ごく平凡な中学生だから人気者にもなれやしない。
こういう風にやる気も無い、みんなから嫌われ無視される中学校生活も良いものかなと最近思うようになってきた。
「起立!礼」
今日も何事も無く授業が終了した…
クラスのみんなは楽しくおしゃべりをしているが、僕に声をかけるクラスメイトはいない。
無言のイジメに遭っているみたいだから当然よ言えば当然なのだが。
僕は無言のままクラスを後にする、どうせ友達もいないのだから掃除当番でも無い限り長居する必要も無かった。
「今日も…行こうか…」
学校の校門を出ながら呟く。
ここに転校してきて見つけた趣味の読書以外の僕だけの時間…誰にも邪魔されない空間へ。
誰も居ない家に帰り制服を脱いで私服を着て再び家を出る。
近くの商店街を抜け、路面電車の踏切を渡るとそこに目的の場所はあった。
「車折神社」という神社である。
歴史は相当古いらしく平安時代まで遡る事が出来沢山の小さな神社もある上、全国でも珍しい「芸能神社」という芸能を司る神社がある。
その為かこの神社には有名人の名前が多く見受けられ「こんな人もお参りしてるんだ」とか見て歩くのも結構楽しい。
それにこの神社には4対もの狛犬が有ったりもする、しかも色々な姿形で。
古びた石作りであったり
木製で綺麗に色が塗られていたり
怖そうな顔をしていたり
優しそうな顔をしていたり
そんな色々な表情を見るのも楽しい。
しかも結構な都会の中に有るのに、ここだけは時間の流れが穏やかに感じる。
そういう密かな楽しみを見つけた僕は、最近良くここに来ているのだ。