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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第93話

一応、『仕込み』の種明かし


多くの者にとってソレは唐突に……と言う程対象となった者達の数は多くは無いし、事が起こった周囲に居たもの達にとっては、別段唐突でも何でも無かったが、少なくとも、かの『アルフの町』を占領したと思い込んでいたノーセンティア軍にとって、ソレは唐突に発生したのだった。


彼らはアルフの町へと入り、町の食料庫や商店等にある程度残されていた食料や、周囲の森から狩って来た獲物を調理して、久方ぶりに温かな食事で腹を満たしてから、さすがに全員がベッドを使うには全く数が足らず、マントや寝袋等で我慢せざるを得なかった者が半数近くに登りはしたが、それでも壁と屋根に囲まれた屋内で、暖炉に火を入れて暖まりながら就寝すると言う、現状の彼らにとってはある種『夢』の様な贅沢を味わいながら眠りに就いていた。


そして、その日から日付が変わるかどうかと言った位の文字通りの『真夜中』。

ほとんどの者が深い眠りに就いていた時間に、ソレは起きた。


……始まりは、感覚の敏感な斥候部隊の者や、冒険者の中でも『盗賊』系の役割(主に偵察や罠の解除等を行う者の総称。実際の盗賊であることも多い)を主な仕事としている者達が、辛うじて感じ取れる程度の揺れだった。

しかし、彼らが感じ取れた揺れの大きさは、ある程度纏まった魔物の群れが移動したりする等の条件が揃えば、割合と簡単に発生する事であり、大して珍しくも被害が出る訳でも無い程度の揺れでしか無かったので、報告したり、避難を始めたりはせず、再度眠りに就くために目を閉じたのだ。


……その時点で、起き出して警戒しておくなり、周りを起こすなり、町から脱出して避難しておくなりしておけば、この後に出る被害は少なくて済んだのだが、それを知るよしもない彼らには、それら最善の行動を取れるハズも無く、結果的には最悪と言っても過言ではない選択をする事となったのである。


それからも幾度か同じような揺れが続き、最初はその度に飛び起きていた感覚の敏感な者達も、二~三回も経験すれば、それが『無害なモノ』であると認識して、起きることすらしなくなった時の事だった。



突然に、アルフの町全体へと、それまでとは比較にならない様な、それこそ人が立っていられないクラスの揺れが襲い掛かったのだ。



「「一体、何が起きた!!」」


それぞれ、ジャウザー団長は町中心部にあった町長のモノと思わしき屋敷で、カブラカン隊長は比較的外周に近い場所で眠りに就いていたが、その揺れで両者共に飛び起き、真っ先に発した言葉がそれであった。


しかし、彼らは自らが発した命令の応えを聞くことは出来なかった。



何故なら、そのタイミングで一際大きな、最早『地揺れ』等とは呼べない様な規模での揺れが発生し、それと同時に、彼らの足許の地面が崩れ始めたのだ。




「「な!!!」」



ガラガラと音を立てて崩れ行く地面に対して、両者共に驚きの声を上げてしまうが、片やダンジョンで集中的にレベルを上げた一国の騎士団長であり、片や国境で常に戦場へとその身を置いていた戦士であるが故に、魔力で全身を覆って防御力を上げる等の対応策を咄嗟にとり、地面の崩落が収まるまで耐え抜く事に成功するが、さすがに無傷で乗り越える事は出来なかったらしく、ジャウザー団長は左肩を右手で押さえ付け、カブラカン隊長は切れた額から流れ出た血で片目が塞がっている。


「クソッ!何がどうなってやがる!誰か状況を報告しろ!!」


突然の状況に、苛立ちを隠そうともせず、怒鳴り散らすように周囲へと命令を下すカブラカン隊長。


「ほ、報告します!」


そう、言葉を詰まらせながら報告してきたのは、警備隊でカブラカンの側近を勤めている男だった。

その男もやはり寝起きだったのか、辛うじて戦闘装束を纏い、愛用の武器を手にしてはいるが、防具や装備品の類いを身に付けるだけの時間は無かったらしく、生き残るので精一杯だったのか、全身に大小様々な傷を負い、衣服を真っ赤に染めていた。


「っ現在、我々は!この町ごとっ……ゲホ、地面の崩壊に巻き込まれたらしく、……げ、原因は不明ですが、軍全体でかなりの被害が出ていると思われますっ!ゴフッ!」


必死になって、どうにか報告を終えた側近だったが、報告を終えた事で気力が尽きたのか、それとも崩落の際に折れて刺さった肋骨によるダメージが限界に達したのか、それとも両方なのかは不明だが、盛大に吐血して、その場で膝から崩れ落ちてしまう。


「!!!ッ、クソ!」


急いで側近へと駆け寄り、常に携帯している回復薬を取り出すと、有無を言わさずにその口へと捩じ込み、そのあまりの不味さに、反射で吐き出そうとするのを無理やり押さえ付け、強制的に飲み下させる。


……取り敢えずは、これで死にはしないだろう、と一息付きながら周りを見渡すと、崩落によって崩れた建物が暖炉等に引火して、そこかしこで火が出ており、それらに照らされる形でそこかしこに人影が見受けられる。

それらは、あの崩落に巻き込まれたが、様々な理由(高レベルによるステータス、体術等の技術、運良くと言った偶然等々)によって生き残った者達ではあるが、遠目に見ただけでも、無傷で済んでいる者は一人も居ない。

そんな彼らの中に、自らの部下達が居た事を確認したカブラカンは、それまで見ていた方向である、崩落前は町があった方向から視線を動かし、本来であれば壁があったハズの方向へと目を向けた。


するとそこには、土で出来た壁が視界一杯に広がっていたのだった。


その上端を見ようとすれば、カブラカンの居た場所からでは、首が痛くなる程後ろ側へと倒す必要がある程高く、範囲を見るために左右へと視線を動かすが、見える範囲では壁に切れ目は見受けられなかった事から、最悪の場合、この町を完全に囲む形になっていてる可能性が有るかもしれない。


……実際には、主人公の指示によってギムリ率いる第三部隊達によって仕掛けられた、超巨大落とし穴による籠の鳥作戦の血管なので、正確には『壁』が出来たのでは無く、彼らが『穴』に落ちたのが正解なのだが、それを知るよしもないカブラカンは


『町の崩落は、あの壁を土魔法によって作った際に、町の地下から材料を引っ張って来て使用したからだ』


と判断していた為、カブラカン本人も、そんな大魔法を使った直後に追撃するだけの余力は無いと考え、取り敢えず周辺の生き残りを纏め、中央部に居たハズのジャウザー団長へと合流すべく移動を開始しようとしたのだが、そこであり得ないハズの追撃が発生する。


そう、主人公に誉めてもらうために、殺る気満々で殺気マシマシになっている第四部隊が、壁の上(正確には穴の縁)から颯爽と飛び降り、瓦礫だらけ岩だらけな地面へと音もなく着地を決め、そのままの勢いで、一切の慈悲や躊躇無く得物を振るい、生き残り達を刈り取り始めたのだった。


そして、それと同時期に、カブラカンと同じような判断を下して、取り敢えず中央部へと集まって居たジャウザー率いる騎士団中枢のメンバー達だったが、何処からともなく湧いてきたドワーフ達(中央部地下に潜んで居た、ギムリ率いる第三部隊)によって強襲されており、万が一あのまま合流を図ることが出来ていたとしても、どの道助かる事は、無かったのは間違いが無いと言えるであろう。





……そして、その様を、少し離れた木の上に登り、お手製の双眼鏡で観察していた主人公だったが、


「……うわぁ~、えぐいわぁ~……、えげついわぁ~……。一体、誰だ?こんな事考えやがった奴は?」


等とすっとぼけた事を呟いて居たので、この後にソレを仮面の誰かに部隊長達へとリークされ、全員から


「「「「「お前(君)がやらせたんだろうが(じゃろうが)!!!」」」」」


と総突っ込みを受ける事となるのだが、それは別のお話。

尚、第三第四以外の部隊も確り参加していたけど、分担の場所が違ったので、出てきていないだけですので悪しからず。

それと、例のメイちゃんは、さりげにたっぷり・がっつり・えげつなく活躍していたので、確りと誉めてもらった模様。

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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