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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第91話


◇第三部隊隊長・ギムリ視点



「俺(たちゃ)ドワーフ♪」


「「「「鉄叩く♪」」」」


「鉄が無けりゃあ♪」


「「「「土を掘る♪」」」」


「そいつが終われば♪」


「「「「酒盛りだ♪」」」」


「ヘ~イ、ホ~♪」


「「「「ヘ~イヘイ、ホ~♪」」」」



……ふぅ、ざっとこんな感じで良いかのぅ?


「よし!もうこの辺りで大丈夫じゃろう。お前ら!撤収準備じゃ!道具は忘れるで無いぞ!!」


「「「「「「うぇ~い」」」」」」


ドワーフ族に伝わる作業歌を歌いながら、各々で道具を振るい、作業をしていた部下達へと声を掛けてから、儂自身も作業の手を止める。


取り敢えず、司令官殿からのオーダーを、全て満たすように細工出来た(……ハズ)の儂は、それまで振るっていた道具(相棒)を肩に担ぐと、首に掛けていた手拭いで顔に浮かんだ汗を、作業で付いた汚れごとガシガシと拭い、腰からぶら下げていた水筒型の魔道具(made・in・主人公)を直接煽り、キンキンに冷えている中身を、作業で火照った身体へと流し込む。


ング、ング!ング!!


ック~!たまらんのぅ!!


本音を言えば酒の方が良かったが、それでも水分を求めていた身体には、極上の甘露となって染み渡るのぅ!


……作業の報酬として約束して下さっとった酒も魅力的だが、ついでにコレもお願いしてみるかのぅ?



思わずそんな事を考えてしまう程に、その水筒型魔道具の性能は、ドワーフ達の生業としている工業にぴったりのモノであった。


まず、水筒内部の底の部分に仕込んで有る魔石には、魔力が流される事によって、水筒内部を水で満たす効果が付与されており、魔石内部の魔力が尽きるまで、水を出し続ける事が出来る。

おまけに、その機能を起動させる為に必要な魔力は極少量で済むので、種族的傾向として、魔力の少ないドワーフ族でも、安心して使用できる親切設計である。(実はロハの偶然だったりする)

それらの機能は、先程の歌にもあった様に、『鍛冶師』と『鉱夫』が種族としての生業であるドワーフ族にとっては、かなり大きな意味を持つ事である。

何せ、どちらにしても、作業に慣れた彼らドワーフ族ですら、大汗をかきながらすることになる仕事であり、それらをするためには、当然の様に水分を持ち込んで現地で適時補給する事が必須と言っても過言ではない。

だが、それらの仕事を効率的にこなそうとすると、どうしても長時間籠る(鍛冶師ならば工房に、鉱夫ならば坑道に)必要が有る。

その為、途中で水筒が空になったから一旦外へ、と言った具合に作業を中断する必要が無くなるのは、彼らにとってかなり大きなメリットとなるのだ。


他にも、この水筒は、側面にも魔石が仕込まれており、そちらは水筒の内部を常に一定の温度へとなるように冷やす効果が付与されているのだ。

コレも、ドワーフ族にとってはかなり嬉しい機能だ。

何せ、鍛冶師に成ろうが鉱夫に成ろうが、どちらも仕事場は熱が籠る環境に有る以上、水分の補給と同じく、身体を冷やす事を考える必要が有るからだ。

さすがのドワーフ族とは言え、長時間高温に晒されたままでの活動は、正直かなりキツイのだ。

もっとも、鉱脈を堀当てた直後だったり、鎚が乗って来たりする場合は、ついつい忘れがちになってしまうのだが、本来は、水を補給するために外へと出るついでに、身体を冷やす事も兼ねて休憩を取ったりするのだ。

しかし、この水筒の機能が有れば、外への移動時間すらも短縮することが可能になり、その分作業に打ち込む事が可能になるだろう。

もちろん、仕事場へと持ち込んだ水が、大抵の場合は飲む頃には温くなっていて、お世辞にも『美味い』とは言えない状態になっている事も、水筒を欲する理由の一つでは有るのだが。


そして、最後になるが、この水筒は持ち歩くのに、サイズが丁度良いのだ。

大きさは精々が500mlのペットボトル程度でしかなく、身長の低いドワーフ族(150有れば巨人レベル)でも、無理なく持ち歩く事が出来るサイズであり、主人公の気遣い(気紛れ?)から、腰のベルトやその他の帯にでも引っ掛けられる様に、と小型のカラビナ(ロープ等を引っ掛けたりするアレ)が標準装備されており、各個人の好みの場所にぶら下げる事が可能なのである。

こちらも、本来であれば、前述の様に作業時間の確保等の目的として、一度に大量の水を持ち込むため、水気を通しにくい魔物の皮を使って作られた水袋を使用するのだが、それで水を持ち込もうとすると、必然的に袋が大きくなってしまうのだ。

それこそ、持ち歩くのがシンドイと感じる程度の大きさと重量(中身の水込み)になってしまうのである。

そんなサイズの水袋なので、気軽に持ち運ぶ事なんて出来るわけもなく、一ヶ所に纏めて置いておかれている事が多く、作業している場所からわざわざ移動しなくてはならない煩わしさや、他の者達と同じような場所に置いておく事になるため、自分の水袋がどれだか分からなくなる事も頻発するのだ。またサイズや重量との兼ね合いから、運ぶ際には、背中に背負って運ぶのが確定してしまう為、大きな道具の類いを運搬する事が出来なくて、不便な思いをすることも、良く有る事なのだ(ドワーフ族アルアル)。

その点この水筒は、小さく・軽い上に、何処にでも気軽に引っ掛けられる為、携帯性・携行性は抜群であり、位置の調整さえきちんと出来れば、作業中に身体からぶら下げていても、全く行動を妨げる事は無いだろう。むしろ、それまでの様にわざわざ取りに行く手間が省ける上に、喉の渇きを覚えたならば、即座にソレを潤す事が出来るのだから、コレほど便利に感じる物は、そうそう有りはしないだろう。



そんな種族的な事情と背景が有った為、画期的なアイテムとして、かなりこの水筒型魔道具がお気に入りになっているギムリ。

そんな彼は、それまで作業していた場所から部下のドワーフ達を撤収させ、自分も司令官(主人公)からの指示で作っておいた安全地帯(・・・・)へと移動しながら、再度水筒内部を水で満たし、その冷えた水を豪快に煽っていた。


……やっぱり、コレは良いのぅ。

本格的に、お願いしてみるかのぅ?

いや、いっそのこと、自分等で造ってみるか?

魔石ヘの付与は、オベロンの小僧にでもやらせれば良いじゃろう。

……そう言えば、あの小僧。何やら面白そうな弓の案が有るとかなんとか、司令官殿を挟んで通信が有った様な記憶が有るし、コレが終わったら一回話し合ってみるかのぅ?


そんな事を、水筒を傾けながら考えていた時だった。




『ヘロ~?こちら司令官(マスターユニット)、ギムリさんギムリさん?進捗はどんな感じかねぇ?』




唐突に、主人公からの『意志疎通』スキルによる通信が入ったのだ。

突然の通信に、当然の様に驚くギムリ。


「……!ッグ!!ゲホッ、ガハッ!!」


そして、水を飲んでいる最中に驚かされればどうなるのかなぞ、説明しなくとも分かりきった結果にしかなりはしない。


『……お~い?大丈夫か~?生きてるか~?死んでるなら、死んでるって返事しろよ~?』


「まだ、生きとるわ!この戯け!ッゲホ、あ~死ぬかと思ったわぃ」


『何だか知らんが大丈夫かね?お前さんよりも年上なドヴェルグの方は、まだまだ元気モリモリだぞ?』


「……大概は、司令官殿が原因なんですがのぅ?それに、ドヴェルグのオジキと一緒にせんで下され。あの人はドワーフ辞めておられるからのぅ。それで?いかがなされた?」


『いや?一応、作業が完了しているかどうかの確認と、定時になったからギムリ達の安否確認ってだけだよ?……んで?どんな感じかねぇ?』


「……一応は、司令官殿が言っておった要望を、基本的には満たしておると思うのだが、実際にやってみない事には分からん部分も有るから、はっきりとは断言することはできんぞ?」


『まぁ、そいつは最初から分かっていた事だから気にしない、気にしない。正直なされた話、どのくらいの確率でイケると思うよ?』


「……儂らの仕掛けの確率ならば、七割って所かのぅ?」


『なら、十分さね。んじゃ、うまく行ったら、約束の通りに、今まで飲んだことの無い酒を、浴びるほど呑ませてやるよ』


「ホッ!では、そいつを楽しみにしとくとしますかの!」


『んじゃ、打ち合わせ通りの場所で待機って事でよろしく!通信終了』


唐突に来た通信は、これまた唐突に切られて、辺りはまた静けさに包まれる。

そんな静けさの中で、実際にあれこれやっていて、これから人族の侵攻軍がどんな目に合うのかを把握しているギムリはポツリと溢す。



「……のぅ、司令官。さすがにコレは、ちとやり過ぎでは無いかのぅ?」



そう呟いてから、地下道(・・・)を進み、崩れない(・・・・)様に設計された安全地帯へと急ぐのであった。

さて、主人公は一体何をするつもりでしょうか?

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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