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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第89話


◇第二部隊隊長オベロン視点



「おぅおぅ、またぞろぞろとご苦労な事って」


そう、思わず呟きながら、教官……いや、今は『司令官』か?……まぁ、どっちでも良いか。とにかく、その通り司令官から借りて使っている『ソウガンキョウ』とか言う魔道具を顔から下ろす。

一応、地獄の様な訓練とそれに続くレベリングのお陰で、ヒョロかった体や、未熟だった心や技術だけでなく、五感の類いも軒並み強化されているので、肉眼でも見えなくは無いのだが、さすがにココまで距離がある(約1km)と、目が疲れるからあんまりやりたくは無い。

……まぁ、コレ(双眼鏡)が無かったらやらされたんだろうけど。


その点、この魔道具は良いね。

仕組みは良く分からんが、消費する魔力は少ないし、ピンポイントで見たい所が見れる上に、目がそれほど疲れない(ココ大事)のが良い。

欠点を挙げるとすれば、使っている間は両手が塞がるって所位かね?


……いや、本当に、コレ良いな。


こんな感じのヤツ、弓と一緒に使えないかな?

こう……弓自体にくっ付けるとかすれば、ちゃんと両手は空くんだし、そう出来れば目が良くないヤツでも、長距離の狙撃が可能にならないかね?

二つの筒を両目で覗いている形になっているのを、筒一つに変えられれば、片目で覗ける様になるから、狙いも付けやすくなりそうじゃないか?

そうすれば、狙える範囲も広がる事になるだろうから、それに合わせて、弓自体ももっと強いヤツに変えたいな!


確か、同じ材料から作っても、最初から弓の形で削り出したヤツよりも、何層にも重ねるように、薄めの素材を重ねて形成した方が、より強い弓になるってギムリのおっさんが言っていた様な気がする。

以前試しに作ったヤツは、試作品として作ったからただの木製だったらしいけど、改めて作るなら金属やら魔物素材やらを使えば、もっと強い弓が作れたりしないかな?

まぁ、でも弓自体が強くなる分、引くのに強い力が必要になるらしいけど、以前ならともかく、今の俺なら、まぁ大丈夫だろう。多分。

……これが終わったら、司令官にコレ(双眼鏡)の仕組みを教えてもらって、おっさんと一緒になって、本格的に作ってみようかしらん?


そんな感じに、この世界初となる『単眼鏡(スコープ)』とそれに合わせた『複合弓(コンポジット・ボウ)』の開発が計画され出したのだが、割合と重要な監視任務で来ていた事を完全に忘れて双眼鏡をいじり回していたオベロンの頭頂へと、容赦の無い手刀が降り下ろされる。


「痛って!」


小さくは有るが、まるで岩盤を金属塊で叩き壊した様な打撃音が聞こえ、降り下ろした手刀と、降り下ろされた頭頂からは、湯気にも似たナニカが登っているのが幻視出来る様だ。

教官達によって施された、ある種の改造じみた訓練により、ステータス等が段違いに跳ね上がっている彼に対して、ダメージを与えられるだけの手刀を降り下ろせる人物なんて、そうそう居るわけでは無いハズなのだが、その事実を忘れて怒気を滲ませつつ、攻撃してきたであろう人物がいるハズの背後に、声を荒げながら振り返る。


「痛ってぇじゃねぇか!何処の誰だか知らねぇが、何、しやが……んだ…………」


しかし、その振り向いた先に居たのは、彼が……いや、彼ら訓練兵達が、本能的なレベルで恐怖を刷り込まれ、絶対服従を半ば無理やり誓わされた者達の内の一人。

その中でも、彼が最も敬愛し、最も多くの恐怖と挫折を体験させられた人物であった。





「ふ~ん?私に対して、『何しやがんだ』とは、随分と大きく出たねぇ?最初は私が誰だか分かっていなくて、特定の相手が居た女性なのに速攻で求婚して来た上に権力を思いっきり振り回そうとしたけど、一番振りかざしたかった相手には歯牙にもかけてもらえずに、ぶん殴られる結果に終わったオベロン君?君ってそんなに偉かったっけ?うん?

……コレは、『再教育』の必要が有るかしらねぇ……?」





この直後、ユグドラシル国境付近の森に、聞いた者の魂を凍り付かせる様な、凄惨な断末魔の叫びが響き渡り、それを聞いてしまったノーセンティア軍が、新手の魔物か何かと勘違いして、暫く周囲への警戒を強める事となり、予想していたよりも移動速度が鈍る事となったのだが、現段階では、彼らが知るよしも無い事である。





******





◇主人公視点



「……んで?何か凄い悲鳴が聞こえてきた様な気がするが、大丈夫何だろうな?敵に気付かれる様なヘマは止してくれよ?」


『そこは気にしなくても大丈夫よ。……多分。取り敢えず、想定していたラインに沿って移動しているから、このままの速度で移動を続けてくれれば、予定通りにいくハズよ?』


「……それならば、良いんだがね?……しかし、作戦のためとは言え、自分達で作って使って来たものを、自分達の手で壊させるのは、さすがに心が痛いね……」


『まぁ、仕様がないんじゃない?そうしないと、奴等に使われる事になるんだから、仕方の無い事だと思うけど?むしろ、奴等に使わせない為に!って感じで、嬉々として壊して焼いてをしている所も有るっぽいけど?』


……マジかぁ……。

案外とストレスフルなのかね?この環境。

まぁ、悲しんでいる訳で無いのなら、それで良いか。


「……まぁ、良いか。取り敢えず!引き続き監視よろしく。俺の『気配察知』でも、監視出来ない事は無いけど、さすがにそれで手一杯になっちまうからね。頼んだよ?」


『任された♪んじゃ、通信終了』


シルフィからの報告も終わり、『意志疎通』による通信が途絶される。

それと同時に、机の上へと広げておいた地図に視線を落とす。

コレは、ユグドラシルとノーセンティアの国境付近に広がる森林地帯の地図なのだが、そこには、ポツリポツリと黒いインクで点が打たれ、それに線が引かれて繋がれていたり、いなかったりしている。

そして、ノーセンティア側の予想進路を示す赤い線と、現在地を示す赤い駒が置かれている。


「……ハサンからの情報で、ユグドラシル側の村やら町やらの位置等は、全部ばれているってのは分かっていたけど、まさか真っ直ぐに『国境から最寄りの村』へと進路を取るとは、予想通りとは言え、ちと迂闊過ぎやしないかね?」


地図に打たれていた黒い点は村や町。引かれていた線は道を示していたのだが、ノーセンティア軍は、何を考えているのか、その道に沿って行軍し、国境線に最も近い村に向かって移動している様なのだ。

……普通、こんなに分かりやすい事するかね?

確かに、その村を襲って物資等を確保した上で、順当に攻め上がれば、首都の目の前に出られるコースだけど、そんなにストレートに事が進むわけが無かろうに。

まぁ、例のガイドラインの通りだと思っているのなら、コレも不思議では無い……のか?

でも、既に食い違う点が出てきているってのに、それを無視して行動するのは、些か危険過ぎってモンですぜ?ノーセンティア軍の大将さんよぅ?

そんな事を考えつつ、今回の戦争でおそらく最も重要なポイントになるであろう所に先行し、細工しているギムリへと通信を入れる。


「こちら司令官(マスターユニット)、第三部隊隊長のギムリ、進捗の報告をされたし」


『うおぅ!本当に、突然来るんだのう!驚くから、あまりやらんでくれんかね?司令官』


「悪い悪い。んで?どんな感じよ?」


『まったく……。作業自体は、そこそこかの?元より、儂らドワーフ向けの作業故、皆張り切ってやっておるからの。予定通りか少し早い程度には終わりそうだのう。そっちの方はどうなっとるのかの?』


「行軍自体は、今の所は予定通りらしいから、早めに仕上げてくれた方が助かるかな?他も、概ね順調らしいぞ?」


『ほう?そいつは、何よりだのう。では、儂の方も、作業に戻るとすかの。……報酬の『まだ儂らが飲んだ事の無い酒』を忘れんで下されの?司令官?』


「了~解。んじゃ、そっちも気を付けてな?では、通信終了っと」


……フム、大体の仕込みは完了、予定の通りに行ってくれれば、そんなに掛からずに終わるとおもうのだけど、どうなるかねぇ?

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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