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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第84話



「「「「「……………………え?」」」」」



突然の事に驚愕し、ショックのあまり唖然・呆然とする元班長達。

そして、ザワザワと騒ぎ出す他の訓練兵達。

まぁ、こうなるのも当然かねぇ?

いきなり『転移するぞ!』と言われて驚いていたのも束の間に、跳んだ先がそれまでとは真逆の気候帯である、緑生い茂る熱帯のジャングルだったのだから、こうなっても仕方がないか。


だがしかし、これから行う諸々の事柄からすれば、あまり『良い』とは言えない反応ゆえに、ちと『渇』を入れておくとするかね。


「ハイハイ、お前さん達!驚く気持ちも分からんでもないし、それで固まる事もよくわかるが、何時までも固まっているのと、あんまし『よろしく無い』ぞ~?未知の事柄に遭遇した程度で、一々フリーズしている様じゃあ、戦場やら何やらでいきなり『よくわからんナニか』に遭遇しただけで死ぬのが確定しちまうぞ~?」


戦場では『何だか分からんが取り敢えず死んでおけ!』位の心掛けで居ないと、敵さんの『秘密兵器』だとか、隠し持っていた『切り札』を投入されただけで死ぬのはもちろんとしても、ただ単に奇抜な格好をしていた一般兵だとかに気を取られて、あっさりと殺られました、ってオチがあり得ちゃうからね。

例え未知の場所だったとしても、戦闘が起こる『かもしれない』状況では、好奇心は優先させてはならんのよ。


俺からの指摘で、自分達の現状があまり『よろしく無い』と判断出来たのか、それともただ単に再起動しただけかは知らないが、取り敢えず硬直を解除して活動を再開させる班長を含めた訓練兵達。

訓練の合間合間で戦術論だとか、部隊の運用方だとか(当然のように元の世界からの輸入知識)を教えておいた事も有るのか、直前までの様子からは考えられない程に、元班長達が的確に指示を出し、周囲の警戒や軽い索敵、地形の把握等を行っている。

……自分で焚き付けておいてアレだけど、これは思っていた以上に身に付けていたって事かね?まぁ、嬉しい誤算ではあるから良いのだけど。


暫く班長達の指示の元に、周辺の安全確認が行われていたが、それが一段落した段階で、今回の件の首謀者と思わしき俺(大正解)へと詰め寄り、質問攻めにしてくる元班長達。


「で?教官殿?一体全体、ここは何処で、何が目的で、何を私達にさせようとしているのでしょうかな?」←目が笑っていない満面の笑みを浮かべるジョシュアさん


「……ジョン教官。俺が言えた事では無いでしょうし、確実に俺達の為になる事なのでしょうけども、予め一言お願い出来なかったでしょうかね?」←頭痛を堪える様な表情と仕草をするオベロン


「儂は別段とやかく言うつもりは無かったのだがの、教官?さすがに、ここまで気候の違う所に連れてくるのであれば、せめて一言お願いしたかったぞい?」←ドワーフ特有の立派なお髭が原因(?)で、とても暑そうにしているギムリ


「一応、周辺の安全確認及びに索敵は終わらせました。もっとも、我々にとっては全くの未知な地域な上に、突然の移動も相まって、班員達にも動揺等がみられる関係上、完全とは言い難いでしょうけどね」←一応は状況報告に来ているけど、チクリと刺して行く事を忘れないレゴラス


「まぁまぁ、皆もこの位で、ね?彼が何の考えや備えも無しに、こんな大掛かりで意味不明な事なんてする訳が無いだろう?そこら辺も含めて、これから説明してくれるハズだから、抗議するのはそれからでも良いんじゃ無いかな?」←周りを宥めつつ、俺から情報を引き出そうとしてくるクズハさん


そんな彼らに、俺は簡潔な答えを返してやる事にした。




「ココが何処か、ってか?ココは大陸南部を掌握する、獣人国アニマリアの更に奥地、アニマリアの住人でも、滅多に人が寄り付かない秘境、魔物が闊歩する文字通りの『魔境』だよ。

そんで、何故こんな所に、だったか?そんなもの一つしかないだろうに。当然の如く、訓練の為さね。実戦訓練って奴さ。お前さん達、ほとんど経験が無いだろう?実際の戦闘って奴の、さ」




そう言ってやると、五人全員が『やっぱりね』と言わんばかりの表情を顔に浮かべて肩を落とす。

……そんな、五人が五人とも『知ってた』って言う様な顔をする様な事なんて、まだした覚えは無いのだがね?





******





「そんな訳で、諸君らには、この辺りの魔物を狩っる等して、今から半月の間、死に物狂いでレベル上げを行ってもらいます。一応、野営地の設営だとか、調理等の世話はしてやるけど、食料そのものの調達だとかは君達に任せるし、部隊の指揮や仕事の割り振り等も、別段俺達でするつもりは無いから、適時元々班長をしていた五人に指示を仰ぐ様に!以上!行動開始!!」


そう宣言すると、戸惑いを隠せないながらも、元々自分が所属していた班の班長の元へと向かって集まる訓練兵達を横目に、たったの半月とは言え、今日から過ごす事になる野営地の設営を行い出す。

……まぁ、言いたいことは分かるよ?『ただの丸投げじゃねぇ?』ってのは。

だが、これも必要性が高いと思われる為にやっている事なのだから、仕方ない。

ぶっちゃけた話をすれば、別段俺達はこれから来るユグドラシル対人族(北部)の戦争には干渉……は既にしていると言えばしているが、コレ以上(兵の訓練や物資の支援)の介入や直接的な戦力の貸与等はしない予定なのだ。

理由としては、以前のアニマリアを助けた時と同じで、何でもかんでも俺達に投げられるのは面倒だし、こっちが下に見られて舐められる事になると後々面倒な事になる故に、出来るだけ自力での勝利に導きたいからだ。

それ故に、先程(前話)の様に、俺が指揮を取って当然!みたいな状態は、ぶっちゃけあまりよろしく無い。

それが、この件が終わったら、俺の所に来る予定になっているジョシュアさんの班だけであったとしてもだ。


まぁ、なんだかんだと言っても、要は自分達で考えて行動しましょう!って事さね。

まぁ、今回の訓練で使うために、この季節(冬相当、基本的には魔物も活動が鈍る)でも魔物の活動が活発に成りやすいアニマリアを選択し、そのなかでも『数が多く、且つ比較的強めな魔物も出現するポイント』って言う、レベリングに最適な条件で探した結果としてココにしたのだけど、転移魔方陣を設置させる(出来るエルフを拉致って)のに、大分時間がかかってしまったけどね。

……アレだね。

あまり戦闘の心得が無い人間を、魔物が蔓延る土地に連れてくるものじゃあ無いね。

もっとも、その時に大暴れ(周囲を軽く殲滅)したお陰で、ココが安全地帯(セーフゾーン)と化しているのは、ココだけの話。


こんなこんなで設営を始めた俺達だったのだが、そこで予想外の事態が発生する事になった。

俺達の予想では、なんだかんだで訓練兵達が動き出すのは、俺達が設営を終えた直後位、時間的には昼過ぎ位になるんじゃないかなぁ?程度に考えていたのだが、その予想は外れる事となった。

何故なら……




「教官。全体図とか、それに近いモンは何か無いかの?」


「あ、あぁ。コレがそうだ」


そんなやり取りを挟んで、野営地の全体図(予定)を一人のドワーフへと渡す。

そいつは、その全体図を確認し、一度俺へと戻してから、同じく設営を行っているドワーフ達の元へと向かって行く。

辺りを見回せば、似たような感じで作業しているドワーフやエルフ達が見受けられるのだが、彼らは別段俺が連れてきた『教官』と言う訳ではない。


彼らは、全員『訓練兵』だ。


彼らは、俺達が思っていたよりも、何段階も早く行動を開始するだけでなく、俺達が想定していた行動(取り敢えず魔物狩り)ではなく、自分達で判断し、班ごとに別れて行動を開始しだしたのだ。

より具体的に言えば、



第一班・食料調達も兼ねた地形等の調査(最強(ジョシュアさん)がいるため比較的奥地まで入っている)


第二班・『狙撃組』が最も多い為、最初のレベリング(遠距離からの様子見も兼ねて)


第三班・野営地の設営の補助(実質的には三班が主導する形に)


第四班・人獣族の嗅覚等を生かして水源の探索&確保(ついでに弱そうな奴だけ狙ってレベリング)


第五班・野営地周辺の安全を確定させると同時に、野営地の警護を担当(後で他の班と交代予定らしい)



となっているらしい。

……いや、確かに、このように訓練の真意的には大歓迎な初動だし、各自できちんと考え分担して行動しているのだから、文句を付けるのは筋違い・検討違いなのは分かっている。

……分かっているのだが、何故にこんなに素早く順応しているのだろうか?




後で知った事なのだが、どうやら俺がこの手の事をしようとしている、またはする予定であると言うことが、他の教官達からそれとなく訓練兵達へと通達されていたらしく、元第一~五班の班長達は、それに備えてある程度のパターンを予想し、それらに対応した行動等を、予め決めておいたのだそうな。

……間違ってはいないけど、それはそれでなんだがなぁ……。

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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