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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第77話



「総員、集合!!」



俺の号令に従い、最後の一周を終えた三班が、既に集まっていた二班の所に合流する。


……うん、モノの見事に全員死にかけとりますな……。


300人近く居るなかで、約一名を除き、まだ走れそうなのは皆無だし、大半がどうにか立っているって状態だ。一部の連中なんて、脱水と疲労等によって、文字通りに死にかけている。現に、俺の元へと集合した直後、それまで持たせていた気力が尽きたのか、その場で倒れたりする者が続出しているからね?……あ、また一人倒れた。

ちなみに、例外の約一名ってのは、分かっている人も多いだろうけど、何時ものごとく、やっぱりジョシュアさん。何故か一人だけ、まだまだ元気そう。それこそ、今からもう十周行ってこい!って言っても、笑顔で完遂して来そうな位には元気。

……この人、元々『文官』で『魔法特化型』のステータスだったハズなんだけどなぁ……。


っと。

イカンイカン、思考がずれた。

さて、意地と根性とその他の何かで、死にかけてでも俺の命令を完遂しようとした可愛い『バカちん』共に、ご褒美の時間と行きますかね。

……その前に、死にかけの連中も含めて、全体のケアをしておくかね。初日から人死には勘弁願いたいからね。

俺は、俺からの命令を完遂した三班へと向き直り、口を開いた。


「良くやった、ヒヨッコ共!!貴様らには、中々に根性と見処(・・)が有るようだ!そこのプライドだけは高い、根性無しで腰抜けなウジ虫共とは違ってな!!そんな貴様らには、完遂報酬として、これから補給物資を支給する!各班長は、班員に行き渡っているかの確認を怠るなよ!!物資を受け取り次第、小休止!その後、昼飯だ!!」


その言葉を合図に、第一・第三・第四班の所へと、訓練場のスタッフ達により、補給物資である『とある飲み物』が配られて行く。

既に倒れている者にも救助スタッフが近付き、風魔法や水魔法等での手当てを行うと同時に、補給物資を飲ませて行く。

すると、それまで結構ヤバそうな顔色をしていた連中が、あっという間に顔色を取り戻し、元気になって起き上がって来たのである。

また、倒れはしなかったが、既に疲労困憊状態になっていた様な連中も、支給された瓶一本を飲み干す頃には、訓練を始める前より元気になっている奴まで出てきている。


……うん、自分で用意しておいてアレだけど、凄い効き目だなぁ、おい。

こんなに劇的な効果が有るなんて、予想もしていなかったんだけど?

……まぁ、元気になったんなら、それで良いか。

材料にも、そんなにヤバい物使った覚えも無いから、多分大丈夫だろう。

……何?『そもそも、何を飲ませた』のか?

大丈夫、大丈夫。

飲んだだけで疲労が『無くなった様に』感じたり、テンションが異常にハイになったりする様な危険物じゃあ無いから。

ただの『お薬』だよ。

俗に言う回復薬(ポーション)ってやつさね。

ほら、いつぞやの『ンドゥバ草』って有っただろう?アレをその他数種類の薬草の類いと調合する事で精製出来る、体力の回復並びにある程度までの傷の治癒もしてくれる優れものだ。

生傷の絶えない冒険者の必需品だね。

まぁ、凄まじく不味い『らしい』けどね。

何で『らしい』のか?

そんなの決まっている。

俺本人は飲んだことが無いからさね。

だって本体骨だもの。効果が無いんよ。


で、何でそんな大層なモノを大量にばら蒔けているのか、についてだが、理由は簡単。

いつぞや、魔人国との間に道を通すために、魔の森を開拓した際に、必要な薬草が山程手に入ったので、無駄にするのも勿体無かったし、その後の戦争で使うかな?と思ったので、その時に作っておいたのだ。

まぁ、山程作ったのまでは良かったのだけど、結局使わなくてシルフィの『空間庫』で眠らせていたブツを使っているだけなのだけどね。


そんな回復薬(ポーション)なのだが、訓練兵達は不味いハズのそれを、喜んでゴクゴク飲んでいる。

別段、奴等の舌がおかしくなった訳ではない。

以前作った時に、どうせ飲むなら美味しい方が良いよね!って事で色々と弄ってみた所、味が激マズ となる原因の薬草の代用品として使えるモノが判明し、結果として『美味しい回復薬(ポーション)』が完成するに至ったのだ。

ちなみに、味としては、仄かに甘酸っぱくて、性別問わずに結構良い評判だった。

今回支給した奴は、ある程度薄めてあり、普通に飲み物としても使える(?)様にしたやつなので、一本当たりの量はソコソコ多めだ。

何せ、元々リ○D程度の大きさの瓶一本が基準のブツを、大体500ml位の量まで嵩まししているからね。ソコソコ薄味にはなっていると思うが、元が濃い目の味だったし、運動直後の喉への給水故にそこまで濃い味だと、飲みにくそうだから丁度良いだろう。多分。


そんなこんなで、回復薬と休憩で復活した訓練兵達だったが、復活した故に別の問題に直面する事になる。

極度の運動と、それに伴う筋肉等の破損を体が回復しようとすることで発生する!ある種の状態異常。

そう、空腹感だ。

魔法やスキル、回復薬なんかで回復したとしても、それに伴って消費されるエネルギーは、空腹と言った形で現れるからね。

それ故に、真面目にやっていたヒヨッコ達は、現在絶賛腹ペコ状態となったいるのだ。

死にかけだった連中何かは、特に凄まじい空腹に苛まれているに違いあるまい。

今はまだ、理性によって制御出来ているが、後少しすれば、餓えた獣と成って暴走してもおかしくない。


しかし、俺は、そんな餓えた獣共に『福音』をもたらす者である。


「よし!では、休息終わり!食堂まで行くぞ!全員着いて来い!」


俺の号令に顔を輝かせる訓練兵達(飯抜きの奴等を除く)。

そんな彼ら彼女らを先導して歩き出す俺。

さて、俺からの最大級の『飴』に対して、どんな反応をするのか、楽しみだ。





******





「よし、ヒヨッコ共。お前らには、今から三つの選択肢をくれてやる!」


訓練場に設置された食堂に到着し、中に入るなりの俺からの発言に、ほぼ全員が「ポカーン」とした表情になる。

一部の連中は、そんなもんどうでも良いからとっとと食わせろ!と言いたげな表情をしているが、もう少々待ちたまへ。

その方が良いことあるから。

俺は、食堂に配備された、調理場から料理を受け取るカウンターをさして続ける。


「何、難しい事じゃあ無い。お前達はこれから、三種類用意されたセットの内から、一つを選んで昼食にしてもらう。見ての通り、カウンターには受け取るスペースが三ヶ所あるから、それぞれの所に行けば、そこに対応したセットが注文出来る」


現在、カウンターは三つに区切られており、端からそれぞれ、『現地で雇った料理人』『ウシュムさんとレオーネ』『メフィストと一人分の空間』である。

そして、俺がメフィストの隣の空き空間へと入りながら、呆気にとられている訓練兵達へと声をかける。


「それぞれの担当の者に聞けば、どんな料理を出すのかは教えてもらえるから、積極的に聞きに行く様に!一部の間抜け共のお陰でお代わりは自由だが、複数の種類のセットを取ることは許さん!尚、今回の人気で、次からの料理番が決定する事になっているから、そのつもりで取りに来るように!では、好きな所に取りに来い!!」



そう、俺が声を上げた瞬間だった。

それまで、最前列ではあったものの、確りと他の訓練兵達と同じ所にいたハズの『奴』が、いきなり(・・・・)目の前に現れたのだ。



「では!教官のセットでお願いします!大盛りで!!」


ハイ、安定のジョシュアさんです。

……この人、マジで何者だよ……。

俺もいつ来たのか分からなかったし、隣にいるメフィストだって、珍しく動揺している所から察すると、多分こいつも知覚出来ていなかったな……。

おまけに、いつの間にか、第四班の面子が中心となって、俺達のスペースの前に行列が出来かけていた。


でも、これはある意味予測出来ていた事だからな。

この人、ウチに来る度に、「こちらの料理がここ最近の生きる糧になっています」とか言っていたし、一度冗談で俺が作って出してやったら、「この料理は誰が?是非ともお会いしたい!」とか言っていた位だし、絶対に食い付くだろうとは思っていたからね。

第四班にしても、奴隷から解放した際に、俺達の炊き出しを食っている経験が有る以上は、こっちに来るであろう事は予想出来るからね。

まぁ、俺達の所に来なくても、今回の料理は全て、ヤバい素材(グレード的にであり、決して危険な材料を使っている訳ではない)を使っているので、どこのを取っても目的は達成出来る。

そう、極限の空腹に、今まで味わったことの無い様な素材と調理法によって作られる、見たことも無い様な料理によって、あいつらの胃袋は鷲掴みよ!

さぁ、ドンドンと食うが良い!








尚、今回最も人気が有ったのは、案の定俺達のセットであり、最下位であった現地の料理人は泣いていた。

可哀想だったので、後程料理スタッフとして雇い入れ、戦力の増強を図ったのであった。


そして、俺の発言が元となり、結局教官と兼任して、料理人もする事になってしまったのであった。

……解せぬ。

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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