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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第75話

今回から訓練回となります。

人によっては不快に感じる表現や、そこは違うんじゃ?と言った箇所が有る可能性が有るので、それでも構わない方だけどうぞ。



「陛下!訓練兵500名、集合完了致しました!!」



そう言いながら、俺の眼前でビシッと敬礼を決めているのは、何故か訓練に参加するつもりマシマシでやる気モリモリになっているジョシュアさんだ。

……何で誰も止めなかったんだ?

つか、何でまだ配布していないハズの訓練用迷彩服まで着込んでいるんだろうか、この人は……?


「……えーっと、ジョシュアさんや?」


「何でしょうか、陛下!」


「……この場に居て、その格好をしているってことは、参加するってことで大丈夫なんだよね?」


「はい!その通りです!」


……確かに、事前に貰っていたリストの中に、ジョシュアさんの名前も有ったけど、てっきり同名の別人で、本人な訳が無いとばかり思っていたからね?


「……ぶっちゃけた話、これから俺がやろうとしている訓練って、多分、地獄の方がまだ生温いと感じる程度には厳しくする予定なんだけど、それでも参加するのかい?ちなみに、こうして直接会話する様な仲で、将来ウチに来る予定の人だとしても、地獄の鬼が裸足で逃げ出すランクから落とすつもりは毛頭無いけど大丈夫?」


「もちろんです!それくらいの事は平然とこなせる位でないと、陛下の部下としては使い物にならないでしょう?」


それに、と一旦言葉を切り、ジョシュアさんの後ろ、訓練兵達から見れば最前列に当たる処に整列している、あの時の部隊の人達に視線を向けて、彼らが一同に頷くのを確認してから、こう続けた。


「それに、彼らもまた、陛下について行くと決めた者達です。幹部の方々や、既に高位に在る方々とは比べるまでも無いでしょうが、それでも陛下と共に、陛下のために戦いたいと、この国を出る事に決めた者達です。その為にも、訓練程度で音を上げるようでは、お話にもならないでしょうしね」


……やれやれ、文官として採用する予定だったんだけどなぁ……。


「……仕方ない、か……。では、後ろの彼らの纏め役として、『百人長』をやってもらいます。結構無茶ぶりもしまくる予定ですんで、覚悟しておいて下さいね?」


「了解しました!むしろ、望むところです!」


そう応えて、満足そうに列へと戻って行くジョシュアさん。

……まぁ、ジョシュアさんが内側に居て、外側からだけでなく、訓練兵の内側からもコントロールを掛けてくれれば、こっちも楽になるか。……なるよね?

……まぁ、良いか。

さて、気を取り直して、と。

気持ちを切り替え、表情を引き締めて、改めて訓練兵達へと向き直り、全500名に及ぶ彼ら彼女ら(少ないながらも女性兵も混じっている)を見渡してから口を開く。


「訓練兵諸君!よく集まってくれた!私が、君達の教官を務める事になっているジョン・ドウである!!諸君らは、これから行われる訓練によって、死ぬよりも辛い目に会うことになるだろう!もちろん、本当に命を落とす者が出る可能性も十二分に在る!それを聞いた上で、訓練を受ける覚悟の有る者だけ残ってくれ!今去るのであれば、『尻尾を巻いて逃げ出した負け犬 』の称号を得ることだけで済むからな!!」


そう言ってやると、俺と直接会ったことの有るメンバー以外の訓練兵達の雰囲気に、緊張や期待以外に『怒り』が混ざった様に感じられる。

……よしよし、良い傾向だな。


「では、残った者は、こちらからの誘導に従い、これから支給する『訓練様戦闘服』と『認識票』を受け取った後、班分けを行う!それが終わり次第、分けられた班ごとに整列せよ!以上!行動開始!!」


俺の言葉の通りに、教官側のスタッフとして雇っておいた人達が、設置しておいた建物へと誘導し、全員に迷彩服と認識票を支給して着替えさせている。

ちなみに、今居るこの訓練場は、ティタルニアから使っていない山を丸ごと一つ押収し、ウチのドワーフ衆や獣人族で手が空いていた人達にお願いして、ロードワーク用の通路や訓練用の施設、訓練兵達学生これから寝泊まりする事になる寮や食堂等の敷設をしてもらったのである。もちろん、有料で。

更に言えば、現在支給している迷彩服と認識票もこっちで作ったモノだ。

迷彩服の方は、この辺りの植生を調べて、それに適応するような色合いとパターンにしてある。認識票は、ギルドカードの発券器を少々改造する事により、名前の打刻と、こちらが予め決めておいた班分けを同時に行ってくれる様にしてあるので、配布さえ終わってしまえば、そう掛からずに訓練を開始することが出来るだろう。


……あぁ、楽しみだなぁ……。




後で聞いてみたところ、その時の俺は


『自身が考えた中で、最高のシチュエーションで最高の嵌まり方をした間抜け共を、嘲笑いながら見ている悪魔』


の様な顔をしていたそうな。

……どんな顔だよ……。




******




支給した迷彩服を着て、班毎に整列した訓練兵達をグルリと見渡す。

そうなるように、と、こちらで調整したのだが、見事に種族・種類で別れて班になっている。


右端から順に、ジョシュアさんをこちらが強制的に指名して、班長である『百人長』に任命した、あの時のメンバーを固めた『第一班』。


次に、エルフ族が中心となって構成されており、顔立ちから判断して(ここの王族は姓が無い為判断出来ず)、おそらく王族関係の誰かであろう青年?(エルフにつき年齢不詳)が班長を務める『第二班』。


『第三班』はドワーフ族で構成され、ぶっちゃけた話をすれば、一番個人の判別がし辛い(どいつもこいつも髭だらけ)班になっている。班長は、ウチのドヴェルグの親戚らしい。


獣人族(人獣族を含む)中心に構成されている『第四班』。アニマリアにはいなかった種類の獣人族達が数多く見られたのだが、ここの班長に選ばれた男性は、なんとウカさんのお兄さんであったらしい。ほぼ確実に。何せウカさん本人が言っているからね。『意志疎通』スキルで。ちなみに、一番女性の割合が高い班でもあり、以前俺が解放し、そして今回わざわざ志願して来てくれた『元奴隷』の人達を班に固た班でもある。


そして、最後の『第五班』だが、こいつらは、何時ぞや俺達に強襲を掛けてくれた戦闘部隊、その生き残り……と言うか、わざと止めを刺されず、送り返された奴等の中で、上位に位置していた連中である……らしい。まぁ、あの戦闘部隊は実際の処、誰も死なずに全員帰還(送還?)しているので、実質的にあの部隊上位の連中って事だろうね。現に班長はあの部隊の隊長だった奴っぽいし。



しかし、こうやって全員の顔を見渡してみると、第一と第四は期待とやる気に溢れ、第二と第五は敵愾心と反骨心でいっぱい、って感じなのがよくわかる。

……第三?……あいつらは、支給された迷彩服と認識票に夢中だな。これだから職人って奴は。

まぁ、良いか。

さて、一丁やりますかね!


「全員揃ったな!では、諸君がこれより三月過ごす事になる、ここのルールを説明する!


一つ、俺を始めとした教官の命令は絶対!

二つ、発言はこちらが許可を出していなければ、原則禁止!

三つ、貴様ら訓練兵は、俺達教官に対して発言する際には、まず手を上げて許可を乞い、許されたならば最後に『サー』を付けて発言しろ!女性に対しては『マム』だ!

四つ、夜間は各自に割り振られた部屋から出る事は禁止だ!


以上だ!何か質問の有る者は居るか?」


……質問は無いっぽいな。

良し、じゃあ、そろそろお兄ちゃん『鬼モード』になっても大丈夫かな?


「フム、質問は無い様だな。では、これより最初の命令を出す!『俺の言葉には、全て『はい』か『分かりました』か『了解しました』で答えろ!』分かったな!」


「「「「「…………」」」」」


初っぱなから、突然の暴論に唖然とする訓練兵達だが、ここで手を止めては訓練にならない。

故に追撃だ!


「貴様ら!返事はどうした!!」


「「「「「……は、はい……」」」」」


「声が小さい!!」


「「「「「はい!」」」」」


「『サー』はどうした!!」


「「「「「はい(yes)!サー!!!」」」」」


まぁ、初めてだし、こんな処か。


「よろしい!では、早速訓練を開始する!!

各員、コレ(・・)を持ってコースを走って来い!!」


そう言って俺は、予め用意しておいて足元に置いていた『鉄塊』を指差した。

シルフィ作の炉により精製された、一抱えもある高純度の鉄の塊。重量?知らん。

この世界においても、トレーニングをすることに意味は有るのだが、この場に居るのは殆どが戦闘職種の連中ばかりであるので、ぶっちゃけた話、コレくらいの加重をしておかないと、効果が薄いのだ。


「教官殿!質問が有ります!!」


そう言って手を上げ、俺に許可を求めるジョシュアさん。

ある意味狙い通りになってきているので、内心ほくそ笑みながら、少々苛立たしげに許可を出す。


「誰が、質問をして良いと言った?……まぁ、良い。何だ、言ってみろ」


「ハッ、有り難うございます、サー!

教官殿は『走って来い』とだけ言われましたが、どのくらい走れば良いのでしょうか、サー!」


……まったく、何でこの人は、欲しいと思った事を、欲しいタイミングでしてくれるのかね?


「良いだろう、教えてやる。『俺が止めて良いと言うまで』だ。分かったか!」


「お答え頂き、有り難うございます、サー!」


俺の返答に、顔をあからさまに青くする訓練兵達。

……第一の連中だけは、変にやる気が有る様だけど。


「では、お前の班全員に、俺の許可なく発言した罰として、この場で腕立て10回!分かったか!」


「「「「!!り、了解しました、サー!」」」」


そう言われて、少々驚いた風にしながらも、班全員が腕立てをし出す第一班。

それを、様々な視線で見ている他の班だが『あいつらだけ』なんて、俺は一言も言っていないぞ?


「そして、必要な事を聞こうとして来なかった罰として、第一班以外全員!その場で腕立て100回!」


「な!」「うそ!」「そんな!」「マジかよ……」


「分かったか!!返事はどうした!!」


「「「「……了解しました、サー!!」」」」


うん、これで、許可の無い発言では罰を受けるけど、必要な時に発言しなければ、もっと酷い目に遭うと理解出来たかな?


そうこうしている間に、腕立てを終わらせた第一班が鉄塊を持ち上げて、何ヵ所かに設置しておいた地図に従ってロードワーク用のコースへと走って行く。


……さて、楽しい楽しい訓練の始まり、始まり……!

全員、どの程度まで耐えられるかな?

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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