表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/139

第74話

今回から訓練回の予定でしたが、予定を変更して一話挟んでからになります。ご了承下さい

ジョシュアさんへとお願いした、訓練生の選抜が終わるまでの間に、幾つか用意しておきたかった事が有ったので、その為にゴソゴソしていると、暇をしていたのか、それとも久方ぶりに帰って来た実家は居心地が悪かったのか、シルフィがこちらへと近付いてくる。


「よぅ、どうした?『美貌の賢姫』さんや?それとも『放蕩王女』って呼んだ方が良いか?なんぞ用事か?」


「マジで止めぃ、その呼び方!てか、何処で聞いてきたのよ、その呼び名は?」


「ジョシュアさんが教えてくれたぞ?まぁ、何でそんな渾名が付いていたのかまでは、教えてくれなかったけどね。んで?何やらかしたんだ?お?お兄さんに言ってみ?の?」


「おのれ、あ奴め……後でどうしてくれようか……。ってか『お兄さん』て……転生前はどうだったのか知らないけど、こっちに来てからの年齢で言うなら、私軽く100年は生きてるんだけど?確実に年下でしょうに……?」


何……だと……!

と、言う事はつまり……。


「……つまり、お前さんは、俺を襲うまで、100年以上も処女拗らせていた訳か。……ちと拗らせ過ぎじゃあ無いか?」


「煩せぇ!!好きで処女だった訳じゃあないわい!!」


「いや、幾ら長命なエルフ族とは言え、100超えて相手無しってのは、さすがにマズイんじゃ……?」


「……大丈夫!エルフ族の10年は人族の1年相当だから!私、人族の年齢に直せば、まだピチピチの18歳だから!まだまだ青春真っ盛りだから、ぜんぜん大丈夫!無問題(モーマンタイ)!!!」


ん?人族換算で18で、エルフ族だから十倍して……。


「……成る程、実年齢は180~189歳ってことか。さすがに俺の方が年下だな。まぁ、どのみち俺がこの世界に来てからまだ一年経って無いんだから、俺が年上な訳も無いんだがな」


「アァアアアア~!!!しまった~!!!実年齢計算された~!!!おまけに、ショタコンなんて目じゃない位に年齢差が有った事まで判明した~!!!!!これ、元の世界だったら、確実に手錠が掛かる事案なんじゃぁ……」


「実年齢云々で言えば、全員そうなるだろうから諦めろ。んで?何やらかしたんだ?わざと自分で話をずらしたってことは、相当な事をやらかしたんじゃないのか?」


「おぉう……自分から振ってきた年齢ネタの癖して、勝手に締めやがったよこいつ……」


と、半ばふざけながらわざとよろめいて見せながら、気を取り直した様に表情を引き締めて、会話を再開させる。


「で?私が何をやらかしたのか、だったっけ?」


「そうそう、それそれ。一体何をやらかしたら、あんな矛盾しそうな渾名を頂戴する事になるんだ?」


ん~、と少々思い出そうとするような仕草をしながら考えているが、おそらく、本人的には大したことはしなかったとでも思っているのだろう。しかし、本人にとってはその程度でも、周りからすればド級の事をやらかしていた可能性は、十分過ぎる程に有ると見てまず間違いは無いだろう。


「……これと言って、特別な事はしなかったハズよ?まぁ、内政チートはやりかけたけど、貴方が国でやっていたのよりもショボい程度だったし、それも定着せずに、今は殆ど無くなっちゃっているみたいだしね?神様と転生する時にした約束の為にも色々と試してみたけど、そっちも大した成果は出ていなかったハズだから、そんなに派手にはやらかしていないハズなんだけど?」


「……取り敢えず、『神との約束』の件はおいておくとして、具体的には何をやったんだ?もしくは、やろうとしたんだ?」


俺がそう聞くと、シルフィは指を折りながら、数え上げる様に次々と、実際にやった事・やろうとした事を報告してきた。


「えーっと、まずは『農地改革』でしょう?神様との約束を履行するための第一歩として、四輪作を試しに導入させてみたんだけど、どうやらこっちの作物には合わなかったみたいで失敗……って程じゃあ無かったとは思うけど、そんなには成果は出なかったかなぁ。まぁ、それまでは農作物としては見られていなかった作物の類いを発掘したりもしたから、この分野は成功に近いかな?今もまだ作られているハズだし。現に市場で売ってたからね」


そう言ってから、無造作に『空間庫(アイテムボックス)』から幾つかの作物を取り出すシルフィ。

ジャガイモっぽいモノ(変にデカイ)とかキャベツっぽいモノ(緑じゃなくて青い)とか色々だ。

……正直、食えんのか?と思わんでも無いが、本人曰く「ちゃんと美味しいから大丈夫!」なのだとか。

……本当に大丈夫なのだろうか?


「他は、こっちも神様との約束絡みで、『技術革命』何かも起こしてみようかと思ったけど、あんまり使い道と言うか、需要が無かったんだよねぇ。紡績系は、元々手先の器用なエルフ族からは、変な道具を使わない方が綺麗で頑丈に出来るからって、あまり使って貰えなかったっけか。でも、確か、他の種族からはそれなりに感謝されていた様な気が?製鉄系は『高炉』とか試しに作ってみたけど、職人のドワーフ達からは『武具に使うには、粘りが足りない!』って突っ返されちゃったしなぁ。でも、農具だとかに使う分には合格は貰えたっけ。一度に沢山製鉄出来る様になった事は感謝されたけど」


まぁ、日本刀程ではないにしても、武具に使うならばある程度の粘りは欲しいわな。

うろ覚えだけど、『鉄』って金属は、純度を上げすぎても武器の素材として使うには、硬くなりすぎてダメになるんだったっけか?

近代における『刀』の質が悪いのは、確かこれが原因の一つだったと思うんだけど、違ったっけか?


「他にも、インフラの整備だとか、税制の改革だとか、議会の設置だとかも試してみたけど、やれ資金が無いだとか、今までで大丈夫だったから変える必要は無いだとかの横槍がガンガン入って結局ご破算、って感じだったかな?『発酵食品の開発』は、大豆も代用出来そうなモノも見つけられなかったから、計画の段階で立ち消えになっちゃったんだよねぇ……」


そいつは、御愁傷様で……。


「まぁ、そんな感じで色々と試してみたり、失敗したりを繰り返していたら、私がしていた事で直接的な利益を得ることが出来た、鍛冶師や農民の人達が呼びだしたのが『美貌の賢姫』で、利益が有った訳でもなく、私がやろうとしていた事が実現していたら、多大な損をしていたであろう人達が、王族としての役割を果たそうともしていない私を指して『放蕩王女』と呼びだした、ってのが、私に付いた渾名の由来だね」


「……成る程ねぇ……。また、随分とやらかしたもんだのう?」


「大丈夫!自覚は有るから!」


と薄い胸を張って答えるシルフィ。


「まぁ、これで何をやらかしたのかは解ったけど、最初の方に言っていた、神との約束云々ってのは、何の事だ?」


一応、俺もしていると言えばしているが、そこはしっかり確認しておかねば。


「まぁ、言ってみれば単純な話でね?私がこっちの世界に転生して来る時、神様と会って会話したんだけど、その時に『貴女はこれからエルフ族へと転生していただきます。そして、最近力を付けだした人族に負けないように、力を付けていただきたいのです』ってお願い?約束?されちゃってねぇ。

まぁ、私だって自分の種族が負けて滅ぼされる様な憂き目には逢って欲しくなかったから、色々と試してみたって訳さね」


「……でも、それらの殆どは失敗か空回りする結果に終わり、こうして『俺』って言う異分子を内に引き込んでどうにかなる、かな?って程度まで追い込まれていらっしゃる様子だけど?」


スッと視線をそらしながら、情け容赦の無い俺の質問に答えるシルフィ。


「……いや、だって、ねぇ?まずは国力からどうにかしようかと『農』の方をいじってみれば、期待したほどの成果は出ず。次に武力面での強化を狙って炉を作ってみたけど、本来望んでいた様な結果は出てこない。その他にも色々とやってはみたけれど、結果が出たり出なかったりを繰り返している内に人族では統一王国が樹立しちゃうし、それに対抗して、近隣の亜人種達に声掛けして、連合国家として纏まったのまではまだ良かったのだけれど、そうこうしている間に現在みたいな小規模な戦闘→休戦のサイクルが出来てしまって、全体的なレベルまで低下して行っててね?それらをどうにかしたかったから、国を飛び出して冒険者なんてやっていた訳でしてね?そのお陰で貴方様に出会えた訳ですので、無駄では無かったんじゃ無いかな~?と思ったり思わなかったり?」


「……つまり、その心は?」


「ぶっちゃけ、やり方間違えたっぽいわね!アッハッハ!!」


開き直って高笑いするシルフィ(バカちん)


「『やり方間違えたっぽい』じゃあ無ぇわ、この戯けが!!」


阿呆(シルフィ)目掛けて拳を落としながら言っておく。


ゴツン!と聞いている方が痛くなってくる様な音を出して、半ば崩れ落ちながら頭を抑えるシルフィ。


「お、おぉう……。これは、味方の女の子に落っことして良いレベルの拳骨じゃあ無いと思うのだけど……?」


「お前みたいな阿呆には、この程度で十分だろうが。まったく、現状がこうなりそうだと、予め聞かされていたってのにこの様とは、もうちょっとやり様が有ったんじゃ無いのか?」


そう、半ば呆れながら言ってやると、多少ばつが悪そうにしながらも、何処か安心した様な表情でこう返してきた。


「まぁ、確かにあそこでああしておけば、あの時こうしておけば、とかも思わなくは無いけど、何だかんだ言っても、助けてくれるんでしょう?私の『魔王様』?」


誰がお前のだ!と返しつつも、乗り掛かった船だし、何よりも、本人から『お願い』されている事でも有るからね。途中で投げたりするつもりは、皆目有りはしませんよ、と。


そうやって、シルフィと会話していると、ジョシュアさんが俺を探しているこえが聞こえてくる。

……あの人もう選抜を終わらせたのか?

さすがに、書類やら印象やらからの選抜だよね?

もう既に、人も集まっていて、直ぐにでも訓練開始出来ます!とか言われても、さすがにこっちの準備がまだなんだけど?

……まぁ、ジョシュアさんがストレス抱えずに仕事出来てるなら、それで良いか。


そんな事を考えながら、俺を探すジョシュアさんの元へと向かうのであった。





そして、その一週間後、ユグドラシルの歴史に刻まれ、伝説ともなる事となる最初の訓練(地獄)開始(顕現)される事となるとは、教官を務める事になる魔王を除けば、一人として欠片も予想してはいなかった。

途中で出てくる鉄云々に関しては、作者の素人考えや聞きかじりによるものですので、間違っていたとしても生暖かい目で見ていただけると在りがたいですm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ