表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/139

第61話

あれから何度か、潜入しているあいつ(実は名前を知らない。聞いても教えてくれなかった)に連絡を取り、色々と調整を重ねて、サウザン側の戦力並びに総領主を首都前の平地へと引き摺り出し、決戦と相成ったのは、こちら側の予定通りにあの会議から四日経った今日となった。

いや~、良かった良かった!

上手い具合に『フェイズツー』完了出来て。

後気を付けないとマズイのは、『フェイズスリー』をしっかり完遂出来るかどうか、かね?

……いきなりなんぞ?ってか?

そう言えば、説明してなかったっけか?

いつぞや、あいつとの通信でも出てきた事だが、この状況に誘導するために、幾つかの段階に分けて、作戦を実行していた訳だ。


大雑把に説明すると


『フェイズワン』:情報操作により、人族側へと『籠城による抵抗』ではなく、『平地による決戦』を選択させる。

これは、あいつが潜入に成功してしまった為、より直接的な介入を行うことが出来たので、想定よりも楽に行えた。


『フェイズツー』:こちらによって操作した情報により、敵の戦力の殆ど並びに敵総大将を確実(・・)に戦場へと引き摺り出し、予め侵入させておくこちら側の人員によって城門を封鎖し、前回のイストリア戦に経験した『勝利条件の消滅』を防ぐ。

これも、あいつが潜入出来たお陰で、色々と楽が出来ているが、本来ならば俺達魔王勢でどうにかするしかないかなぁ?なんて考えていた位の面倒臭さである。もっとも、あいつがいた為に、それらの準備等は無駄……ではないが、要らぬ備えに成ってしまったけどね。

城門の封鎖には、人族に化けられるウシュムさんとウカさんを表から、ジャックやグールナイト部隊の副長等を、あいつの手引きで裏側から侵入させて有る。あのメンバーなら、確実だろう。


そして、肝心の『フェイズスリー』なのだが、この段階における主な目的二つ。

まず一つ目は、フェイズツーにも含まれているが、『首都の外』で『確実に』総大将であるサウザンの領主を抹殺する事。

前回のイストリア戦みたいに、大将は前線に出ずに城へと引き籠られたり、ある程度不利に成った段階で、城門を閉じられると面倒なので、確実に頭を潰してしまいたい。もちろん、アニマリア側、出来ればレオンの手によって。……正直、抹殺するだけならば、俺達魔王勢だけで楽勝なので、こんなに面倒なことをせずに済むのだが、この戦いが終わった後のサウザン周辺の統治まで考えると、レオンに殺らせた方が良い。寧ろ、殺らせないとマズイ。でないと俺達でやるはめになる。……只でさえ人手が足りんのに、そんなことまでしてられん……。


そして、二つ目だが、これもイストリア戦の時と同じく『亜人諸族の奴隷達』が、『追い詰められた人族』によって危害が加えられる前に、侵入しておいたこちら側の戦力で奪還し、内部に残っている人族を殲滅する事である。

イストリア戦では、割りと早々に内部へと侵攻出来たのでそこまで被害は出なかったが、それでも自らの安全を確保する為に、亜人の奴隷を人質として肉壁にしようとしたケースが何件か有ったと報告を受けている。

幸い、被害者も犠牲者も出さずに済んだらしいが、今回もそんなに運良く事が進むとは限らないので、確実性を重視して行きたいからね。

まぁ、侵入済みのメンバーには、ジャックだとかの戦闘力高めな連中も混ぜてあるし、二人一組で行動するように指示してあるし、それぞれ片方ずつに『気配察知』と『意志疎通』スキルを共用させて有るから、確実な強襲&奪還が出来ると思われるけどね。


まぁ、この『フェイズスリー』に関しては、発動のタイミングが要になるので、ほぼ確実に決戦が始まってからになるだろうけどね。


ついでに、今回の決戦においてかなり重要な役割を担っている、後方部隊へと連絡をしておくかね。


『あー、テステス。こちらジョンよりレオーネ。そちらの準備はどうなっている?応答せよ』


『こちらレオーネ、こちらは準備完了出来ています。いつでも行けます。兵達の士気も上々ですので、いつでも行けます』


フム?士気が上々?

低いよりはやり易いが、何故に上がって来てるんだ?さては、レオーネがナニかしたな?


『準備完了は了解した。それで?一体何をしたんだ?報酬でも確約したか?』


『ええ、まぁ、一応?報酬になる……のかな?アレ』


『妙に歯切れが悪いな?一体何をしたんだ?』


『いえ、別段変わった事はしていないハズですが?強いて言うなら、昨晩、決戦前夜ってことで、ジョンさんが見つけさせた米を皆に振る舞って、勝てばコレが好きなだけ食える様になるかもよ?とは言いましたし、一番の戦働きをした者には、好きなだけ食わせてやる!と言っただけなので、それが原因だとは思いませんが……』


……いや、それしか無いだろう……。

しかし、真に恐ろしいのは米の魔力か?

一回食わせただけで、そこまで取り憑かれる程かね?


『……まぁ、良いか。んじゃ、よろしく頼むよ?通信終了』


さて、細かい調整は終わったし、今回俺達魔王勢は表向きには参戦しない事になっているから、ゆっくり観戦でもしていますかね。

……人族側はどう動くかな?




******




魔王がアニマリア側の戦陣の奥にて、作戦に関わっていない者達と双眼鏡を覗き込んでいる時、サウザン側の陣では、まさに最後の会議が開かれていた。


「……では、今奴等の後方に見える者達のみであると?」


そう不機嫌そうにノイン将軍(偽)へと問いかけるゼクス総領主。

彼は、遠征軍が奴等(アニマリア軍の残党)の後ろから追い立てていると聞いて、その100000を越える軍勢の全てで来ているとばかり考えていた為、実際に目視出来る彼らの規模の小ささに落胆と共に苛立ちを覚え、それらを今回の件の統括に任命していたノイン(偽)に、嫌味の形でぶつけている所である。


「……しかし、これは仕方の無い事かと」


「『仕方がない』だと……?ふざけるでないわ!あの残党を取り逃がしたのは奴等の責任であると言うのに、これっぽちしか送ってこないとは、我等を嘗めているとしか考えられんぞ!!」


そう激昂するゼクスだったが、そんな主(仮)に対して、内心で冷笑を浮かべながらも宥めに掛かるノイン(偽)。


「閣下、彼等はアニマリアを『征服』して帰って来た、いわば『英雄』達です。彼等がそんな英雄と成るには、とてつもない様な艱難辛苦の事柄が続いた事でしょう。実際、私が直接(・・)話した伝令から聞いた話では、首都を落とし、偉業を達成するまでに、全体の半数近くが英霊と成ったとの事でした。更に、そこから、街や町等の抑え等に人員の割かねばならない関係上、今回送って来た約30000の軍勢が精一杯……いや、寧ろかなり無理をして送って来た可能性すら有ります」


「……無理、だと?」


「はい、恐らくは。アレだけの軍勢の維持する食糧、彼等を送り出した事による征服地での戦力低下、そしてそれに伴った残存勢力による反乱の可能性の増加。上げればまだまだ切りが有りませんが、それは彼等も承知の上での派兵でしょう」


「……何故、そんなことまで分かる?そんな状況が予測出来るのなら、普通は援軍なぞ出さんだろう?」


「……『何故』?……今『何故』と仰られましたか?

……無礼を承知で申し上げます閣下。お忘れかも知れませんが、あの遠征軍の将兵の内、殆どは私の教え子であり、私が直々に鍛え上げた部下でもあります。そんな彼等に、あらゆる状況においての対応と対処法、考え方を教えたのも、また私です。

……そんな彼等が、敵の総大将を討ち取れれば、他の勢力も力を失う事は良く理解しています。その為には、自分達が犠牲と成っても、最終的な天秤はこちらに傾くと知った上での派兵と、それを支えるために、死ぬ可能性が高いのを理解した上での残留組に別れているのです。そんな彼等の志を!覚悟を!無駄であると!!意味の無い事だと!!そう、仰りたいのですか!!!」


普段は寡黙と言っても良いほどに静かなノイン(部下等からの調査結果)からの、主である自分への激昂振りを目の当たりにしたゼクスは、最初は呆気に取られ、やがて彼の言葉の意味が頭に浸透したのか、目をつぶって考え込んだ後、ノイン(偽)に対して軽く頭を下げてから、こう続ける。


「……すまなかったな。あの遠征軍の殆どは、お前の関係者だった事、大勝したとは聞いていたが、国一つ落としたのだから、当然多くの将兵が戦死していたであろう事を、すっかり忘れていた。彼等のお陰で、こうしてあのレオンを討ち取る機会に恵まれたのだから、感謝こそあれども、文句なぞ付けられる事ではなかったな……」


「……いえ、私も口が過ぎました。今回の決戦では、私は直接前線に出て、部下達の仇を取って来ようかと存じます。よろしいですね?」


「分かった。指揮は私が取ろう。かの『英霊』達への手向けにするが良い。レオンを討ち取った暁には、旧アニマリアの全権をお前に託そう」


「ハッ!身に余る光栄です!では、私は最前線へと赴きますので、これにて失礼します!!」


最後に一つ敬礼してから、会議室として使用されていたテントから退出するノイン将軍(偽)。

自らのテントへと向かいながら、先程までの会話を思い返す。

あれらは、あの場ででっち上げた話ではなく、ノイン将軍(真)の部下や教え子であったと言われていた遠征軍の連中であれば、恐らく実際にしたで有ろう内容を語ってやったに過ぎず、あの語り口とて、本物のノインであれば、多分あんな感じに成ったであろうと予測しての行動である。

それらを見て、聞いて、感心していた様だったゼクスだが、まさか、その頼りにしている『英雄』達が、全て敵であったと知った時に、どんな顔をするのかが楽しみで楽しみで、思わず邪悪な笑みが溢れそうになるが、渾身の精神力を振り絞って抑え込み、テントへと飛び込んで真の主へと通信を入れた。


(阿呆)はこちらの望み通りに動きだし、作戦の条件は整った、と。





そして、この一時間後に戦端は開かれ、両軍は激突する事と成る。

少々冗長になりましたが、次で両軍激突します。

……魔王の活躍?恐らく、今回は余り無いかと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ