第57話
今回少し短めです
レオン王との会談を終え、夕食に存在の判明したばかりの米が出され、シルフィは歓喜の余り号泣し、それ以外の面子は初めて食べる米の食感や味を楽しんだ夜。
珍しく襲われないなぁ、平和だなぁ等と思いながら皆でマッタリしていた時に、それまで疑問に思ってはいたが、聞いたことがなかった話題を思い出したので、思い切って聞いてみる事にした。
「……なぁ、この『アニマリア』ってさ、何で獣人国なんだ?ここの王族って、レオンやレオーネみたいな人獣族だろう?」
敢えて今の今まで、ヘルプ機能にすら聞いたことの無い疑問だが、これだけ人数が居るのなら、誰かしら知っているだろうかな?
しかし、そんな俺の『誰かしら教えてくれるだろう』的な思惑は、俺以外のメンバーが、キョトンとした表情で顔を見合せつつ、全員が一処に集まってヒソヒソと相談し始めた事により崩壊する事と成った。
……アレ?俺、何か変な事聞いたかね……?
そんな事を思い、いっそのこと質問の対象をヘルプ機能に切り換えようか?とも考えた時、ウカさんが恐る恐ると言った感じで、俺に質問してきた。
「あの~、つかぬことをお聞きしますけど~、ジョンさんは『獣人族』と『人獣族』の見分けは~、出来ていますよね~?」
……ん?どう言う事?
「ぇ?人寄りな外見していて獣耳と尻尾が有る人が『獣人族』で、獣寄りの外見をしているのが『人獣族』……だよね?」
……もしかして、違うのか?
「ええ~、それで~、合ってますよ~」
……良かった、合ってた。
しかし、何でそんな事を聞くかね?
「では~、その二つの種族が~、元々、同じ種族だったと言ったら~、どうしますか~?」
………………へ?なんですと?
「実は~、私達『獣人族』と~、レオーネさんみたいな『人獣族』って~、元を辿ると~、両者の中間みたいな外見をしていたらしいのですが~、いつの間にか~、人寄りの見た目に成る人と~、獣寄りの見た目に成る人に~、別れる様になったらしいですよ~?」
……と、言う事は?
「まぁ、それぞれ血統などによる、どちらかへの偏りは存在しますし、実質的に、両親が同じ側であれば、基本的には子供も同じ側に成ります。ですが、獣人族の両親から人獣族の子供が産まれる事も珍しくはありますが、別段無い事ではありません。その逆も然りです。ちなみに、獣人族と人獣族の間で子供を作った場合、産まれる子供は大体半々の確率でどちらかになります。そして今までの話が事実である根拠としましては、現王族である私の家族が良い例ですね。私の両親は両方人獣族ですが、私の下の弟と末の妹は獣人族として産まれていますからね」
へー、そうなんだ?
「んじゃ、アレか?偶々今の王族には、人獣族が多いだけで、建国なんかの時は獣人族が王様やっていたから、『獣人国』なのか?」
「概ねそんな感じです。それと、私達の総称として『獣人族』が使われている理由ですけど、その建国した際の演説にて『我等、獣の力を宿しながらも人である獣人族は~』と大々的に宣言し、自らの国を『獣人国』である!と宣言したので、私達『獣人国』に住む獣の特徴を宿した亜人種の事を総称して『獣人族』と呼ぶ様になりました。 その中でも、より人に近しい見た目であり、建国王と同じタイプの人々を指して『獣人』と、逆に獣に近しい見た目であり、それに応じて高い身体能力を誇る人々を『人獣』と呼ぶ様になったそうです」
「ふーん、そうなんだ。知らんかったよ。教えてくれて、ありがとね。
ちなみに、他の亜人種の人達でも、似たような事になってたりするのかね?」
その疑問には、目から光を消したシルフィが答えてくれた。
「……他の種族はどうだか知らないけど、私達エルフは似たような感じね……」
「と言うと?
てかどうした?なんか感じが変だけど?」
「……ほら、この手の世界では定番でしょ?『エルフ』と『ダークエルフ』って。まぁ、獣人族みたいに、外見から能力まで何もかも違う、って訳じゃあ無いけどね?パッと見、肌が黒くて一部が大きく違うけど多分エルフ、って感じの外見だし、能力だって大差が出る程違いがある訳でも無いしね?
外見の違いだって、私達みたいに森の奥地で生活せずに、森の外周部分に近い場所で生活していたから、日に焼けて肌が黒くなり、それが血統として定着した、って程度だしね。ちなみに、肌が黒い、って言ったって、真っ黒って訳じゃあ無くて、どちらかで言えば、濃い目の褐色って感じかな?」
「お、おう。そうか、ありがとうよ。
で?何でお前さんのお目目から、ハイライトさんが脱走してるんだ?」
シルフィは、拳を握り締め、唇を噛み締めながら、地獄の底から聞こえて来るような怨嗟の声で、こう続けた。
「……エルフ族ってさ、私みたいなスタイルが基本なんだ。もちろん、アルヴさんみたいな『出るところは出て~』って感じのスタイルの人もいたけど、そちらは少数派で、基本はこっちなんだ……」
「お、おう。それで?」
「……でさ、ダークエルフ族の人達ってさ、私みたいなエルフ族とは、肌の色以外にも、決定的に違う外見的特徴が有ってさ?」
……あ、なんとなく解ったかもしれない。
「……皆が皆、こう、凄いんだよね、スタイルが。
個人で多少の誤差は出るけど、基本的にボン・キュッ・ボン!な感じでね?しかも、ボディラインを強調するような服ばかりを好んで着る様な民族性故に、これでもかとスタイルの違いを見せ付けられて、もう……もう!」
……哀れシルフィ、最終的には、血涙まで流していました。
その後も「最低でも並乳以下のダークエルフを見たことが無い」だとか、「大きい人だと、頭でも入っているんじゃ無いかと思うくらい大きくて……」とか呟き続けていたのを、なんとか慰めて現実に復帰させたのだが、帰ってきた瞬間に、とんでもない爆弾を投下されてしまう。
「全く、そんなに胸の大きさごときを気にする必要性がどこに有るのですか?」
そんな事を、私呆れてます、と言った雰囲気丸出しで言い切ったのは、何処が、とは明言しないが、凄く大きいレオーネさん。
「大きくても、動くときに邪魔になったりするので、そこまで良いモノでは無いですよ?」
シルフィの急所にクリティカルヒット!
思わず、胸を抑えて蹲るシルフィ。
しかし、その一言に続く様に、無情にもシルフィのHPを削りに来るメンバー達。
「そうですよ~。男の人からは~、厭らしい目で見られますし~、お洋服も種類が選べないですからね~?」←素晴らしく大きいウカさん
「家事等の動く時には、少々煩わしいですね」←とても大きいウシュムさん
「……自分、大きいのでありますか?」←自覚が無いので、自分でムニムニと触っている、十分大きいガルム
この時点で既に吐血し、変な痙攣を起こしているシルフィだったが、彼女達の次の一言で、止めを刺される事と成る。
「でも~」
と、それまで大きい事の弊害を愚痴っていたウカさんだったが、俺の方をちらりと見てから、少し頬を赤らめて、体をくねらせながらこう続けた。
「コレでご奉仕すると~、ご主人様って~、凄く喜んでくれますよね~?」
「「「確かに!!」」」
「それだけで~、今までの苦労が溶けて行くと~、思いませんか~?」
「「「然り!然り!然り!!」」」
「……ゴフッ……」
そう苦鳴を上げて、完全に倒れ込むシルフィ。
自らの吐血による血溜まりに沈み、心なしかエルフ耳すら萎れ、全体的に真っ白になっている様にすら見える。
そんなシルフィを横目に、俺を強襲(意味深)した際に、コレでここをこうした~、だとか、こうしたらこうなった~、だとかの情報交換に勤しむ豊満組。
近くでそんな話をされているシルフィは、嫌でも内容が耳に入り、ビクン!ビクン!!と大きく体を痙攣させている。
……もう止めて!シルフィのHPは既に0よ!
完全に死体蹴りである。憐れシルフィ。
暫く、自分には、してみたくても出来ない事を延々と聞かされ続けたシルフィだったが、いきなりプルプルと震えだしたかと思うと
「ウガーーーーーーッ!!!」
と、突然に叫び声を上げ、俺をスレイプニルで縛る(回避?出来る訳無いでしょう?)と、俺を担ぎ上げてから、散々自分をからかっていた彼女達に、ビシッ!!っと効果音が出そうな程鋭い指差しをしてからこう宣言した。
「貴女達の巨乳主義は良ーーーーく解った!!!
ならば、私は、こいつを巨乳派から、私の様な貧乳派へと改宗させるまでよ!!!これから、こいつを洗の……じゃなくて調き……でもなく、教育してくるから、今晩は私の独占って事で!!ハイ、決定!!!」
……簀巻きにされ、肩に担がれているが、立場的にはモロに当事者な俺は、一応抗議的な何かをしてみる事にする。
「えーっと、俺の意見を申請し「申請は却下です!」デスヨネ~」
……ダメでした。
結局、この後シルフィにお持ち帰り(意味深)され、色々と教育(こちらも意味深)される事になったが、元々無派である俺としては、そんなに気にしてはいなかったのだけどね?
そして、魔王が獣人国へと画期的な穀物をもたらしてから、四日の後、サウザンへの橋頭堡として予定していた街が、ついに陥落し、彼らの手に落ちた為、本格的に『魔王・獣人連合軍』と『統一王国南部軍』との戦争が戦端を開く事となる。
ちなみに、皆でヒソヒソしていた理由は『主人公の意図が解らなかった』為です。何故そんな常識を聞くのか?と言った感じです。
日常回はここまで、次回からはサウザン攻略編に入ります




