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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第54話

いつの間にか背後から強襲してきた、何となくレオーネに似ている気がする人獣に首を飛ばされた俺。

誰のだか判別出来ないが、悲鳴が上がっているな~何て思いながら、変に高く、そして逆さまになった視界でモノを見ている。

初めてかつ貴重な体験だ、とか思っているけど、我ながらその感想はどうなんだろうか……。

そして、その逆さまに映る視界の中で、念には念をと言わんばかりに、追撃を放とうとしている人獣族の姿が見えている。

流石にそこまでは食らってやれないので……




******




◇???視点


フム、どうにか上手く行ったようだな。

あれだけの軍勢を前にしても、まだまだ余裕が有りそうだったから、避けられる可能性も考えてはいたが、気の緩んだタイミングを見計らい、『気配遮断』スキルを全開にしての、この『断頭の剣』での頸への一撃は防げなかった様だな。

女の悲鳴が聴こえているが、このバケモノを討ち取る為だ、多少のショックは勘弁願うとしよう。

思えばこやつは、我が娘までたらしこんだと聞く。

そんな奴を誅勠するのだから、正義は我に有るハズだ。

……思考がずれたが、確実に止めを差しておくか。

我の勘では、このままではマズイ気がするのだ。

流石に、頸を落とされて生きている生物はいないハズだが、念には念を入れて、胴も薙いでおくか。


そう思って再度剣を構えたのだが、その時異変が起きた。


いざ、剣を振り抜こうとした時、未だに首を飛ばされたままの体勢をキープしていた身体が突然動きだし、おそらく初級魔法、そして、魔力の色からして闇魔法のダークボールをほぼ0距離で撃ち込んで来たのだ。それだけでなく、魔法を放つとほぼ同時に斬撃を抜き打ちで放って来る事までしてきた。

咄嗟に我は、魔法に対しては大剣の腹を楯にしてガードしたのだが、斬撃は受け止めきれないと判断して距離を取るべく後退する。

……こやつ、一体何者だ?頸なしで動いているのもそうだが、大して溜めが有ったようには見えない初級魔法、しかも完全にガードしたハズの状態で、手が痺れる程の威力。辛うじて回避出来た斬撃にしても、下手に受ければ剣ごと叩き斬られかねない程の圧を感じる。

そんな事を考えていたからか、奴が抜き打ちの状態から、更に一歩踏み込んで来て、こちらへと放って来た蹴りを胴に貰ってしまう。

流石にここまで繋げてくるとは予測していなかったが、これ幸いと素直に蹴り飛ばされて距離を稼いでおく事にする。

しかし、このままではマズイ。マズ過ぎる。今の一撃で分かったが、体術のレベルもかなり高い。このままではじり貧は間違い有るまい。

ならば、捨て身で攻めるか、と着地と同時に一足で踏み込み、今度は大上段からの振り下ろしを仕掛ける。

首を落としても動くのであれば、身体を二つにして、動けなくしてやれば良い!……もっとも、左右で二つにしたところで、動けなくなってくれるとは、到底思えはしないが……。

だが、そんな考えも読まれていたのか、こちらが渾身の力で振り上げ、振り下ろした大剣を、最初から解っていましたと言わんばかりのタイミングで、いつの間にか二本に増えていた剣を交差させて受けられており、こちらがマズイ!と思った時には、そのまま左右から引き斬る形で斬りつけられ、挟み切りにする形で刀身の半ばから両断されていた。

半ば反射で剣を手放し、体勢が流れてがら空きになっている胴へと一撃入れようとするが、こちらの斬撃と同時に、おそらく隠蔽展開していたと思われる闇魔法を我の両肘・両膝に撃ち込み、その場で地面に拘束と同時に、戦闘力の無力化をされてしまう。

剣の形をした魔法により、完全に地面に縫い付けられてしまっており、下手に動こうとすると手足が千切れかねない角度で刺さっている。


……これは、どうにもならんな……。


そう覚悟した時だった。


奴は左手で、未だ空中に有った頭部を受け止め、上下が逆さまになっていた首の、断面が下になるようにして持ち直すと、両手で首もとの断面を合わせ、位置を微調整してから口を開いた。



「全く、痛いじゃないか!こちらはわざわざ助けに来てやったと言うのに!そうやって手を差し伸べて来た相手に、いきなり背後から奇襲してくるとは、獣人国の王はとんだ卑怯モノだな!死んだらどうするつもりだ!!」




……普通は、頸を落とされれば死ぬのだが?

それよりも、こやつは一体何と言った?


「ちょっと待て、どういう事だ?我は聞いていないぞ?」


そう言って、我は愛しい愛娘であり、奇跡的に生還した我が国の第一王女であるレオーネへと視線を向けた。するとそこには



我の目から見ても、激怒に染まっているとはっきり解る表情を浮かべた夜叉が居た。



……もしかして、我、やらかしたか……?





******





◇主人公視点


……まったく、エライ目にあったぜ……。

そんなことを思いながら、切り離された首を元通りに戻すために、位置の微調整を繰り返す。

……うん、こんなとこだろう。

納得の行く場所が見つかったので、毎度お決まりのアレ、闇魔法製の『名状し難いナニカ』通称(?)闇ゼリーで切り口を埋め、形だけは接着を完了させる。

これで、見た目だけは、首もとに黒っぽいナニカを巻いているだけに見えるハズだ。


接合具合を確認するため、首を左右に曲げたり捻ってみたりしてみる。

……うん、やはりと言うか、何と言うか、頸骨はまだ繋がっていないので、支えが無いためか、非常にバランスが悪い。いや、ここは取り辛いと言うべきか。

首自体は一応繋がっているので、頭が落ちる事は無いが、やはり頭部の重量を支えるためには、強固な支柱(頸骨)が必要なのだな、と再確認する事になってしまった。

仕方なく、そのまま身体ごと回転し、目的のモノを捜索する。


「お?有った有った」


予想は出来ていたと思うが、探し物は少し前に殲滅した人族の死体である。

取り敢えず、最寄りの死体に近付き、剣をブスリと刺して、久方ぶりの『骨喰(ほねばみ)』を発動させる。

骨を吸収されてぺしゃんこになった死体を横目に、ちゃんとくっついたのか確かめるため、首を振ったり捻ったりを繰り返してみる。

うん、ちゃんと接合出来てるみたいだな。


「良し!治った!」


そう言いながら、俺は幹部連へと向き直る。

するとそこには、全力戦闘一歩手前の段階で、こちらに視線を釘付けにした状態で固まっている皆(レオーネを除く)の姿が有った。


「……どうした?そんな変な顔して固まって。何かの儀式か?邪神でも呼び出すつもりなら、こんなとこでやらずに他の場所でやれよ?」


「「「「んな訳有るか!!!」」」」


と息ぴったりのタイミングで、台詞を合わせてくる女性陣。

一方、メフィストとティーガの男性陣は、苦笑を浮かべながらヤレヤレと言わんばかりに肩を竦めている。

それでも、地面に座り込んでなので、案外とショックを受けていたのかも知れない。

……ちと悪い事をしたかね……?


そんな事を考えていたのだが、俺が無事であると認識した女性陣が何故無事なのか?と問い詰めて来たので、一応教えておく事にする。


「いや、だって俺『スケルトン』じゃん?スケルトンの急所って、首じゃあなくて、(ココ)に有る魔石だろう?だから、体力はゴッソリ削られたけど、普通に活動出来たって訳さね。ちなみに、皆忘れているかも知れんけど、俺、アンデッドだからね?首が落ちれば死ぬような『生物』の範疇には無いからね?」


まぁ、今回俺の首を落とす事が出来たのは、あの剣の能力のせいでもあるのだろうけど。

そう思いながら、既に真二つになってしまっている大剣へと視線を向け、再度『鑑定』スキルを使用して、詳細を見てみる。



断頭の剣1/2:希少度・F(SS) 危険度・E( EX)

半分に断ち斬られた断頭の剣。

本来は首への攻撃に限り、相手の防御力を無視した斬撃を放つ事が可能であったり、使用者の身体能力を引き上げたりする効果が付与されていたが、半分にされているので、それらの能力は行使出来ない。



……うん、これのせいやね。

まぁ、これは、もう壊れているので、使うことは出来ないので安心だが、他に似たようなのが有ったら、ちと危なそうだな。

接近に気付けなかったのは、多分その手のスキルでも持っていたんだろう。

そう思って、地面へと縫い付けておいた人獣族のおっさん(仮)の方へと視線を向ける。


するとそこには、どうやったのかは知らないが、俺の魔法による拘束からは解放されたが、両の肘と膝から血を垂れ流しにしたまま、正座させられて娘から説教されている、獣人国国王の姿が有った。


……レオーネよ、せめて治療位はしてやれよ……?




******





「この度は大変申し訳無い事を……」


と地面に土下座しながら謝罪しているのは、レオーネの父にして、この獣人国アニマリア国王である、レオン・リオ・アニマリア本人である。

彼曰く、レオーネが生還したと知らせを受けて、急いで門まで来たところ、レオーネによる説明を門番の兵から又聞きし、俺が危惧した通りに勘違いし、俺達が戦っている様を見て、まともにやりあえば確実に負けると判断し、せめて頭である俺だけでも倒しておかねば!と特効してきて、現在に至るのだとか。


……まぁ、その件については、まともに説明出来る奴を送らなかったこちらにも責任が無いでもないし、心配するのは解らんでもないしね。


「……まぁ、さっきの件は不幸な事故だったって事で、取り敢えずおいておきましょう。それよりも、まずは本題を片付けてしまいませんか?」


「……了解いたした。しかし、本題とは?」


……この人、本当にアレだけ聞いて飛び出してきたのね……。


「……まぁ、俺達がこっちに来た理由です。娘さんであるレオーネから、この国を助けてほしいとお願いされましてね。そんな訳で、この獣人国と統一王国との戦争に介入したわけですが、獣人国としては、どうしますか?」


それまで、申し訳無さが前面に出ていた彼の表情が引き締まり、個人ではなく王としての風格を纏いだす。


「……『どうする』とは、どう言う意味ですかな……?」


このまま腹芸を展開しても良いのだが、それはそれで面倒なので、本音をぶち込んでみるかね。


「何、そのままの意味ですよ。貴方達アニマリアは、国として俺こと『魔王』に救援を求め、共に行動するのか否か、と問うているのですよ。さて、どうしますかな?」


そう言われて考え込むレオン国王。

まぁ、当然だわな。

目の前で、数万の軍勢を葬り、自身すら破った相手ならば、戦力としては申し分ないが、これを素直に受けるわけには行くまい。

何せ、こちらはまだ、報酬等の条件を提示していないのだから。

このまま、何も言わずに頷いてしまえば、法外な要求から、下手をすれば、俺達に国を滅ぼされかねない……とか思っているのだろうね。

まぁ、そんな事しやしないがね。

しかし、ここでしっかり考え込むってことは、お飾りの阿呆ではなく、ちゃんと考えて行動できる王様だって事も確認出来たし、この辺で助けておくかね。……考えすぎて、頭から煙が出ているし。


「……と、言った処で、実はこのアニマリア。既に危機は脱しているのですけどね?」


「……なんですと?」


「実は、ここに来るまでの道中で、目視出来た人族の部隊は全て潰して有りますし、この首都近辺で展開していた部隊も既に排除済みです。先程のアレが本隊だった様ですが、それも全滅させましたので、実質的には、このアニマリアを攻撃している部隊はもう居ないハズです。一応そちらでも確認を」


俺のその言葉を受け、反射的にレオーネを見るレオン国王。

そのレオーネが、「事実です」の一言と同時に、しっかりと頷いたのを受けて、何やら表情から険しさが抜けた様に見える国王。

そして俺の方に向き直り、改めて交渉に入る。


「レオーネがそうだと言うのならば、そうなのでしょう。……娘の願いを聞き届けて下さり、最早感謝の言葉も有りませぬ。

しかし、我が国には、この大恩に報いるだけの何かが有るとは思えませぬ。この国その物を欲するのでしたら、民には寛容に、そして、この無能な王の首一つで勘弁していただけると有難い」


そう言って、俺に向かって首をつき出してくるレオン国王。

……本当にこの国の人達は、話を聞かんな……。


「はぁ。もうぶっちゃけて言いますが、国なんぞ要りません。つか、この手の話は既に娘さんと済ませて有ります。それに、俺は言ったでしょう?『どうするのか?』と。ただ単に、報酬をせびっているのであれば、そんな事言いませんよ」


「……では、どう言うことですかな?」


と不思議そうな顔(多分)をして聞いてくるレオン国王。


そんな国王に、俺はニヤリと笑いながらこう聞いた。




「何、俺はこれから統一王国南部の首都であるサウザンを落とす。アニマリアも散々あそこには苦汁を舐めさせられただろう?だから、一緒に攻め落とさないか?ってお誘いさ。参加するなら、サウザンはそのままくれてやるよ?

参加費はただ一つ、『――――――――』ただそれだけだ。どうする?」




それを聞いて、レオン国王は俺と同じくニヤリと笑い、俺が差し出していた手を握りながらこう答えた。



「良かろう。その誘いに乗らなければ、男でも、王でもあるまいて。報酬の件についても、我の名で確約しよう。

では、共に行くとしようか?魔王殿?」



「こちらこそ、よろしく頼むよ?レオン殿?」



こうして、魔王と獣人国との同盟が締結される事となった。

次なる目的地は、統一王国南部首都、サウザン。

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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