第5話
どうにか年内の更新ができました(^^;
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今回、初の戦闘描写が入ります……一応
ヘルプ機能の誘導に従って進みながら、“魔法の扱い方”の練習をしておく。
正確に言えば、“魔力の扱い方”ではあるが
駄女神に突っ込まれた情報によると、この世界の魔法は《呪文を唱えて特定の現象を引き起こす》のでは無く、《魔力を操作して己の望む現象・結果をもたらす》事であるらしい。
魔力の種類によって型分けされていて、全部で6種類あり、火・水・風・土・光・闇となっている。
それぞれの属性で得意な分野や長所が異なり
火・炎、熱等の操作や魔術そのものの破壊力、身体能力の向上
水・流体の操作や柔軟性、怪我等の治癒
風・長距離での魔力行使と魔力そのものの精密操作性
土・防壁の構築や物質の硬化等の魔力干渉
光・浄化、解毒、結界の敷設
となっている。
闇だけは少々特殊で、特別得意な分野が存在しないが、苦手な分野もまた存在しない。
例えるなら、『5段階評価で得意科目は5を取れるが、それ以外は1~2』が闇を除いた5属性であり、『5段階評価で5は取れないが、確実に3ないし巧くやれば4』なのが闇属性である。
俺は闇魔法のスキルを持っていたので、闇属性である。
そんな事を脳裏(?)に浮かべながら、魔力行使のお復習兼練習の為、魔力を操作する。
魔力は心臓で生成される。これは人間でも魔族でも亜人族でも魔物でも変わりはしない。勿論、生成出来る量の大小は存在するけどね。
種族の平均値で比べると、魔族が一番多く、ついで魔物・亜人・人間の順になる。
無論、アンデッドもといスケルトンである俺に心臓は無いが、代わりに魔核が生成してくれる。
生成された魔力は血液を媒介に全身へと送られ、体の表層に薄い膜のように展開・保持される。
俺のようなスケルトンの場合、媒介になるのはやっぱり骨。魔核から生成され、各骨を伝って全身へと周り、表層で展開・保持される。他の諸族のそれは垂れ流しに近いのだが、スケルトンを始めとする骨系アンデッドにとってはかなり重要な意味がある。
実は骨系アンデッド、間接部処か骨同士が何かでくっついている訳では無いのである。
ではどうやって形を保っているのか?
既に見当はついているとは思うが、例の“膜のように展開・保持される魔力”によってである。
これにより我等骨系アンデッドは体がバラけるのを防げているだけで無く、身体を動かすと言った行為も行う事が可能なのである!!……らしい。
まぁぶっちゃけた話、これ等はインストールされた情報の受け売りだし、既に普通に行動してしまった後なので、感覚的にも馴染んでいるから『ふーん』とか『へー』程度の感想しか出てこない。
……アレ?元々何の話をしていたんだっけ?
あっ、そうだそうだ、魔法の練習だった!
と言う訳でこいつの出番っと。
そこで俺は視線を左手に填まる、黒紫の石が嵌め込まれた指輪へと向ける。
これは魔法を行使する際に使用する“発動器”と呼ばれる道具である。
魔法を発動させる事自体は、それこそ何も無くても出来る事は出来るが、消費する魔力に対する効果が低すぎるので、普通は発動器を使う。
発動器は大まかに分けて三種類あり、それぞれ長所と短所が存在する。
長杖・最も魔力消費を押さえられる上に威力も上昇する。但し、大型で取り回しがしづらく、常に片手が塞がるのが欠点。
消費魔力90に対して威力110程度
短杖・長杖よりも短く軽い為、取り回しが効きやすく、いざと言う時はしまって両手を空けられるのが利点。欠点はあまり無いが性能自体はパッとしない。
消費魔力100に対して威力100程度
指輪・杖型に比べると消費対効果が下がってしまうが、取り回しは考えるまでも無い程度に押さえられるのが魅力。両手が塞がっていても魔法を行使出来る事が最大の売り。
消費魔力100に対して威力90程度
因みに何もなしだと、
消費魔力100に対して威力10程度しか出ない。
と言う事でさっそく軽く使ってみる事にする。
垂れ流すのではなく、故意的に魔力を行使する場合、まずは魔力の源泉たる心臓(俺の場合は魔核)に意識を集中させる。
源泉にて魔力の存在とその流れを確認したら、それを発動器を持っている方の腕へと誘導し、何をするのか・したいのかを明確にイメージする。
インストールされた情報の中には、各種の初級魔法の術式も存在したので、それに従って実行してみる。
因みに“術式”とは、『AをBすればCになる』と言ったモノで数式に似ている……気がする。要はテンプレである。
(えーっと?“用途・攻撃、形状・球、任意で発射し的へと飛ばす”っと)
すると、手のひらを上に向けていた左手に、黒紫色の球体が現れる。大きさは野球ボールを一回り小さくした位で、それが5つ程間隔もバラバラに手のひらの上2~3㎝位のところに浮かんでいる。
闇魔法初級『ダークボール』の完成だ。
「おお!成功した!やれば意外とイケるもんだね!」
おっと、嬉しさのあまり口から出てしまった様だ。
解・……なにやら魔力をいじり回していると思えば、その様な事をなさっておられたのですね。
何はともあれ、初の魔力行使の成功、おめでとうございます。
ん、あんがと。
ヘルプ機能に返事を返しつつ、目的地まで後どの位か聞いてみたところ、まだもう少しかかるとの事だったので、練習を続ける事にした。
幸い、魔力の消費はそれほどでもないらしく、色々といじくり回してみる。
と言っても、ほとんどお遊び感覚で、形を球から直方体や円錐形に変えてみたり(直角にするのが少々大変だった)、大きさを変えてみたり(ピンポン玉~ソフトボールサイズまで)、重さを変えてみたり(風船ランク~鉄塊クラスまで)、身体の細かい動作の練習も兼ねて、右手にも魔力を通してお手玉してみたり(最大4つまで成功)、と一通り試してみたタイミングでヘルプ機能から到着したと連絡が来た。
******
到着したので、よし行くか、と入って行こうとした俺にヘルプ機能から警告が飛び出す。
曰く、
・この先に生息しているのはゴブリンである
・ゴブリンは最下層の魔物ではあるが、スケルトンもそれに等しい
・一対一で戦ったとしても、現時点(レベル1)でも負けはしないが、確実に辛勝となる
・ゴブリンは複数で行動する場合が多い
との事である。
どうしたものか、と思いながらも殺らねばレベルは上げられないので、兎に角入って行く。
暫く探していると、何やら草の揺れるガサガサとした音が聞こえたので、そちらへと向かう。
近付いてみるとそこには、
体長1m程で体色は緑色をした“THE・ゴブリン”
が存在した。
但し、2体。
1体ではなく。
幸いにもまだこちらには気付いていない様だが、どうしようか……。
気付かれる前に奇襲を掛ける?それなら1体は殺れそうだが、確実では無いし何より失敗した場合ほぼ確実にこちらが殺られる。
では諦めて他を探す?しかし、それは手間だし何より勿体ない。
そんな事をつらつら考えながら、何気なく目線を落とすと、練習の為に出していたダークボールが浮かんでいた。
……そうだ、魔法を使おう!
どうせ5発までは同時に出せるんだし、さっきの実験の応用で“重く小さい形状”に変化させて、実際に打ち出してやればイケるのではないか?
幸い、奴ら(ゴブリン)はこちらに背中を向ける形になっているし、仕留めるまでいかなくとも弱らせる事は出来るハズ!!
その後剣で息の根を止めてやればそれで無問題!!
よし、殺るか!
早速とばかりに左手のダークボールを最重最小の形に変形させ、放つタイミングを木陰から伺う。
少しすると、片方は背中を向けたまま、もう片方が脇腹を晒す形になったので、ここだと発射する。
狙いは背中を向けている奴の頭部・首・腰と脇腹を晒している奴の額と腹だ。
狙いがバラバラなのに当たるのかって?
そこはほら。魔法故、的として設定した所に飛んでいく仕様だから。
それらのポイントならば、確実にダメージを稼げるので、直後に控える戦闘も有利に運べる事間違いない!……ハズ。
感覚的には手首のスナップで 軽く投げたつもりだったが、術式自体に速度設定まで含まれていたのか、結構な速さで飛んでいく。
それこそ、発射した本人だから認識出来ているけど、それ以外だと目で追えるかどうかの速さである。
(この速さであの重さのモノがぶつかったら、下手しなくても死ぬんじゃ……)
なんて考えているうちに着弾。
結果。
背中を向けていた方
腰と頭に大穴を開け、首を標的にした一発で首が千切れ飛ぶ。
横を向いていた方
臓物と脳味噌のペーストを向こう側にぶちまける。
かくして彼の初戦闘は幕を下ろす事となった……が、
どうしてこうなった……。
因みに、何気なしに使っていたダークボール。
それを練習に、と色々と変化させて遊んではいたが実は
既に成立させてある魔法を後から加工するには、軽く上級魔法2~3発を同時展開出来るだけの処理能力が必要だったり、重さを変化させる為に追加で魔力を注入していて、こちらも中級魔法並みに消費していたりする。
余談ではあるが、魔族における最高峰の魔術師がダークボールを使用したとしても
大きさ・ピンポン玉より一回り小さい
数・通常3つ、頑張って4つ
速度・目で追えなくはない程度
威力・全弾頭部に集中させればゴブリンが死ぬ程度
である。
彼が自分のやっている事が異常である事を知るのはまだ先の話。
皆さん、良いお年を(^_^)/~~