第42話
UPVが10000件を突破しました!
皆さん読んで下さりありがとうございますm(__)m
ここ数日で、一気にPVが増えたのですが、何か知ってますか?
豚貴族を確保し、階下に居た残り殲滅した時点で、外の森にて待機させておいたガルムへと合図を送る。
『残念ながら、こちらは予想通りになった。作戦開始!』
『了解であります!』
さて、手筈通りなら、もうすぐ騒がしくなるハズ。
……一応、ギルマスには一言言っておくか。
俺は後ろに振り返り、より処無さげに佇んで居たギルマスに話し掛ける。
「えーっと……アレ?そう言えば、あんたの名前俺知らねぇや。まぁ良いか。取り敢えず、ギルドマスター?これから、ちょーっと騒がしくなるし、知ってる名前が出てくるかも知れないけど、そこには突っ込まない方向でお願いしますよ?」
彼女はポカーンとした顔をして固まっているが、言いたい事、言っておかないと少々不味い事は、一応伝えておいたから、どうにかするでしょ。
一応はギルマスなんだし。
「良し、じゃあ行くか。そこの豚の確保は……メフィスト、頼めるか?」
「ヤレヤレ。まぁ、彼女達にはさせられませんからね」
「悪い、頼んだ」
「頼まれましょう」
状況を理解出来ていないのか、オロオロとしているギルマスを横目に、ギルドを出ようとする俺達。
そして、偶然であろうが、それとまったく同じタイミングで、突然にこんな声が聞こえてきた。
『あ~あ~、テステス。この街の住人である、人族に告ぐでありま~す!この街は~我等が主殿、『魔王ジョン・ドウ』様の命により~、自分達フェンリル族が占拠するでありま~す!
しかし~、慈悲深きジョン・ドウ様は~、この街を明け渡し~、その身一つで逃げ出すのならば~、命までは取らないと仰せでありま~す!
なお~、勝てると思っているのなら~、戦うのも吝かでは無いでありますが~、その場合は~、この場にいるフェンリル族100体にて~、皆殺しにする事になるので~、あまりオススメはしないでありま~す!
期限は今より一時間とするでありま~す!
迅速かつ~、賢明な判断を期待するでありま~す!』
……あの駄犬、もうちょっと遅くても良かったんじゃ無いか……?
まだ、建物から出られてなかったから、ギルマスが凄い目でこっち見ているんだけど?
******
外壁の門前なう。
何でこんな所に居るのかと言えば、あの時ギルマスに捕まり、色々と聞き出そうとしてきた彼女をあしらっていたら、この街の領主からの伝達が有り、勧告へは従わずに戦う事に決定したと通達された。それにより発生した『強制依頼』に巻き込まれ、現在へと至る。
ギルマスがしがみついて離れなかった為、俺は逃走出来ず、ウカさんとシルフィを逃がすので精一杯だったのだ。
発生したであろう混乱に乗じて色々とやっておきたかったのだが、彼女達さえ行動出来れば、不完全でも、どうにかなるかな?
しかし、このギルマス、何処が魔法使いだ。俺が振り払えなかったって事は、単純な腕力だけでもかなりのモノがあるハズだぞ?確実に前衛だろう。
もしかして、アレか?前衛系魔法使い(物理)ってか?
しかも、あいつの勧告に、魔王として俺の名前が出ていたのに、わざわざ最前線へと配置するって訳が分からん。
一応、名目上は『竜を討伐出来るのだから、取り敢えず暴れて数を減らせ』との事だったが、報告は『撃退した』としてあったハズなんだが、この国の貴族ってのは、頭悪いのか?
ちなみに、人族の冒険者やこの街の騎士団並びに、近々魔人族領へと侵攻するために用意された兵力も合わせた総数約8000は、全て俺の後方に展開している。
何故に『人族』かって?
そんなの、獣人族からは『我等が信仰の対象であるフェンリル様方が、この街を滅ぼすのであれば、我等はそれを受け入れるのみ』と座して動かず、エルフ等の亜人諸族からは、そもそも反応すらなく、総スカンを食らったからだ。
それに、あの勧告は、対象は人族だけである、と取れなくも無い内容だから、そっちで勝手にやれって事だろうな。
まぁ、実際の所、大正解なのだけどね?
しかし、これはアレかね?
いざと言う時は、俺ごと始末するつもりの陣形かね?
さては、ギルマスが領主か何かに話したな?
仮にも恩人を売り飛ばすとは、どうかと思うよ?
これは、ちょーっとオシオキが必要かねぇ?
……アレ?ギルマスが、必死の形相でこっちに走ってきた。
俺の所まで辿り着いたギルマスが、息を切らしたまま、必死にしてきた説明によると、どうやらこの街の領主にも、豚貴族から俺の名前に関しては、情報が行っていたらしく、そちらの独断でこうなったのだとか。
……まぁ、本人の裏切りで無いならそれに越した事はないが、あの時拘束されてなければ、既に状況は終わっていたハズだったので、やっぱりオシオキだな。
ギルマスへと向けていた視線を前方へと移す。
そこには、目算で100m程離れた所で待機している巨大なモフモフの群れ……もとい、ガルムが里帰りして連れてきた、フェンリル族の皆さんだ。
大小様々な個体が居るが、最小の個体でも、俺の身長(約180)と同じ位の体高が有る様なので、どれだけデカイかは、想像に難くないハズだ。
……ああ、あのモフモフパラダイスに突撃して、思う存分モフりたい!
『……私達が真面目にお仕事してるのに、何一人だけふざけた心の声を垂れ流しにしてんのかなぁ?』
『モフモフなら~、昨日あんなにしたじゃ無いですか~』
……ありゃ?ついつい情熱が漏れてしまった様だね。
『こりゃ失礼。んで?そっちはどんな感じだい?』
『バッチリ』
『当初の予定通りに進められました~』
あらら、この街の軍事施設も領主の館も、警備は大した事無いらしいね。
まぁ、SSランクの魔物相当の力量を持っている襲撃者なんて、想定している訳も無いか。
さて、ではこちらもさっさと終わらせるとしますかね。
『ガルムー?』
『何でありますか、主殿?』
『そろそろ、片付けるとしよう』
『了解であります!』
フェンリル側で遠吠えが上がり、待機していたフェンリル達が動き出す。
一番大きな一頭と、小さめな個体数頭を残し、両翼へと広がって行く。
俺も前へと出て行き、さもこれから魔法を使います!と宣言する勢いで、魔力を高めて行く。
こちらの魔力の『溜め』が終わった段階で、展開したフェンリル達が、両サイドから囲い込む様に近付いてくる。
(用途は殲滅・形状は槍・弾けて降り注ぎ敵を穿て、と)
我ながら「馬鹿じゃないの!」って位に魔力を込めているので、俺の後ろに配置された人族連合軍(適当に命名)にもしかしたら、と期待するような色が見え出す。
多分、俺がまずどちらかに手元のコレを放り込み、自分達は俺がもう一発射つまで時間稼ぎすれば良い、とか思ってんだろうな……。
そして、俺は連合軍の横手に広がろうとするフェンリルに向かって、用意した魔法を
放たずに、間抜け面さらしている人族連合軍の頭上に、その、魔法で出来た黒い玉を放り投げた。
その玉は、俺の手元にあった時は、精々10cm程度だったが、間抜け共の頭上数mで、3m程に膨張し、弾けて大量の槍を上空からばら蒔いた。
闇属性上級魔法『ダークネス・レイン』。
それにより発生し、広範囲に降り注ぐそれは、着弾と同時に爆裂し、更に被害を増やして行く。
中級魔法の『ダーク・ランス』を大量にぶちまけた様な感じの魔法だが、正直ちとやり過ぎたかも知れん。
何せこの一発で、連合軍の殆どが戦死、残りも大概が何処かしかを負傷しており、無事だった者は殆どいない。
周りに展開しているフェンリル達も、何処かひきつった顔をしている様に見える。
やべぇ、選択をミスったか?と思いながらも、『イストの街占領作戦』はこうして大成功?となった。
******
門の前で連合軍を撃滅したのが功をそうしたのか、反対側の門を開けてやったら、我先にと逃げて行く人族住民。
人族が居なくなり、ガランとした雰囲気のする街の中央広場に、残った人間は全員集まってもらった。
もちろん、「私が魔王です!」と言わんばかりの行動を取った俺の呼び掛けでは、誰も集まらないのは分かっていたので、獣人族系の人にはガルム達フェンリルに、亜人諸族系の人にはウカさんやシルフィ、あとギルマスにそれぞれ説得や、奴隷化されていた人の探索をお願いして、連れて来てもらったのだ。
もちろん、奴隷にされていた人達には、広場に到着した順に、俺が光魔法で隷約を解除し、怪我をしていた人達には治療を施しておいた。
そのお陰か、俺を見る視線からは、そこまで敵意のたぐいは感じられない。むしろ好意的な視線が多い気がする。何でだろう?
皆の視線を浴びながら、急遽拵えた台の上に登り、発言する。
「えー、皆さん初めましての方が殆どでしょうが、この度この街を占領しました、魔王のジョン・ドウです。
皆さんには、これから二つの選択肢が有ります。
一つは、これまで通り、この街で生活する事。こちらの場合は、奴隷化させられていた方等には、こちらから職場等を斡旋させてもらいます。
二つ目は、皆さんの故郷まで帰られて結構です。こちらの場合でも、仕度金として、ある程度の金額をお渡しした後、複数名で固まって移動していただきます。もちろん、護衛としてフェンリルを着けますので安心していただいて大丈夫ですよ?
何か質問の有る方はいらっしゃいますか?」
それに反応して、恐る恐る一つの手が上がる。
「はい、そこの獣人族の方、どうぞ?」
「えーっと、その。人族を追い出して下さった事は大変感謝しています。それに、奴隷にされていた友人を助けて下さった事も。……でも、何で私達獣人族や亜人諸族の方々を助けて下さったのですか?何か理由が有るなら、お聞き、したい、と、思ったの……ですが……」
……成る程、それは確かに聞きたくも成るわな。
「……理由ですか?そうですね。『貴方達を助ける理由』は特には有りません」
そう言うと、先程質問してきた獣人族は顔を強ばらせた。
「……勘違いしないで欲しいのですが、俺は別段貴方達が哀れだったから、救ってやった、なんて言うつもりは欠片も有りません。俺に有るのは、『人族を攻撃する理由』です。つまり、貴方達を助けたのは、その『ついで』です。ですが、もし、そのついでにでも助けられた事に恩義を感じているのなら、俺のやることに手を貸してもらえると有難いです。
これで納得出来ましたか?」
その獣人族は、かなりスッキリした顔をしていた。
この後帰還を希望する人が居ないか聞いてみたのだが、結局誰も希望を出す人は居なかった。
更に言えば、部下としての働き手を募集してみた所、かなりの申し込みが有り、かなり驚いた。
まぁ、それは、元ギルマスとして人を纏めていた経験の有る彼女に投げておいたけど。
そんな中、豚貴族の見張りを交代したメフィストがこちらへと歩いて来た。
「また派手にやらかした様ですな?流石魔王様」
「うるへー!んで?何か有ったのか?」
「イエイエ、特には何も。ただ、何故にここの住民だった人族を殺さずに逃したのですかな?」
そう、実のところ、俺達は、この街に居た人族の人口からすれば、大した数は殺していない。
精々、のこのこ経験値になりに来た連合軍(笑)と、ここの元領主、後は軍事施設の上位陣だけだ。まだまだ、数千処では済まない数の、人族が生き残っていた。
それを俺は殺さずに逃がした訳だが、それに対する疑問って所か。
「かの女神からの指令を鑑みれば、殺してしまった方が良かったのでは?」
まぁ、実際に脱出の際何割りかは死んでいるしな。
しかし、メフィスト。こいつはまだまだ甘いな。
「何、殺すだけが力を弱める術じゃあ無いさ」
「と言うと?」
そう返してきたメフィストに、俺は黒い笑みを向けながらこう答えた。
「メフィスト、お前さんは、『飢民』って知ってるか?」
時には、人が居ないより、居過ぎる方が厄介って事も有るんだぜ?
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フェンリルに襲撃され、魔王によって軍を壊滅させられた、元イストの街の住人達。
そんな彼等彼女等だったが、着の身着のままで逃げ出してきたので、当然の如く旅支度処か、食料の類いも持ち合わせが多い訳ではない。
何より、あの恐ろしい魔王の近くに居ては、いつ殺されるか分からない。
そんな訳で移動を開始した彼等だったが、近辺で、自分達の様な大集団を受け入れ可能な所なんて、隣街のエスタの街位しかない。
それでも、このまま死ぬよりは、と移動を開始する彼等。
しかし、その道中は困難を極める。
街の防衛の為に、殆どの冒険者は防衛戦に参加し、帰って来なかった。その為、途中で幾度となく魔物に襲われ、少なくない被害者を出すことになった。
また、全ての人が、食料を持ち出せた訳でもなく、水や食料の奪い合いも発生した。
それでも、三日三晩歩き通して、エスタの街の外壁が見えた時には、消耗していたにも関わらず、歓声が上がり、全員に生気が戻った。
もっとも、それは自分達と同じ様な状態で、ドラゴンに蹂躙される街を見つめている、エスタの街の住人達を見るまでだったが。
その時、全員の脳裏にあることが過る。
自分達全員を収用出来る、最も近い場所。
それは、首都イストリアしかない、と。




