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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第35話

ギルドや馬鹿から巻き上げた分で、ちょっとした小金持ちに成った俺。

なので、暫くの間はお金の心配をしなくても良くなったのだが、一つ問題が残った為、既に用無しになっているギルドにまだ留まっていた。

ちなみに、ウシュムさんがパーティーに入りたいと言っていた為、既に申請は通してある。……俺が、ウォルフ(哀れな狼)を虐めている時に、隣のブースで手続きしておいたのだそうな。


その問題とは、今晩の塒だ。


外は既に夕闇に包まれているので、おそらくは、殆どの宿は埋まっているだろう。良い宿ならば、尚更空いてはいまい。

かと言って、この時間になってまだ空きが有る様な宿では、あまり良い宿とは言えなさそうだ。


俺は睡眠の必要は無いが、他の面子はそうも行くまい。特に、今日は戦闘も挟んでいる。流石にガルムでも疲労しているハズだ。

それに、シルフィとウカさんは、怪我の影響が抜けきって無い様にも見える。やはり、ちゃんとした寝床が必要だろう。


……どうしたもんかなぁ……。

いっそのこと、虱潰しに探してみるか?


そんなふうに、頭を悩ませていると、何時までも移動しない事を不審に思ったのか、シルフィが問いかけて来る。


「どうしたの?移動しないの?まだギルド(ココ)でやることってあったっけ?」


フム、ここは素直に、先輩に相談しておくか。


「いや、今晩からの宿どうしようか、と思ってね?

この時刻でまだ空いてんのかなぁ?ってね?」


その言葉を受けて、不思議そうに顔を見合せるシルフィとウカさん。

何かに気付いた様子のシルフィが、ウカさんの耳元(頭頂の狐耳)へと囁き、ウカさんもシルフィの耳元へと囁き返す事数回。

何やら結論が出たようで、二人して何度か頷き合ってから、二人共にこちらへと顔を向ける。


「いやー、ゴメンゴメン!途中で話したと思っていたけど、忘れてたっぽいね!完全に、まだやることが有るから残ってると思ってたよ」


「てっきり~、既にシルフィが説明してあるかと~、思ってました~。説明が足りず~、申し訳ありません~。では~、参りましょうか~」


……?『参る』?何処かへ行くのか?何処へ?


二人共に席から立ち上がり、出口へと足を向けながら、残りの俺達(俺+ガルム+ウシュムさん)へと招く様に手を差し出す。


「ほら、早く行こう?私達の家(・・・・)に!大丈夫。そんなに遠くないから!」



……なんですと?





******





「おう、兄ちゃん!有り金と素材、全部置いて行きな!そうすりゃ、命は「フン!」(ゴキャッ)ぐぁぁぁぁっ!!腕が、俺の腕がぁぁ!!」



「そこの嬢ちゃん!そんな、つまらなさそうな男捨てて、俺と遊ば「ソイ!であります!」ぐはぁ!」(バキバキ!!ガラガラ……ゴン!!!)



「ヒャッハー!いい女はレ「えい♪」(パキュン)アフン♂!!」



現在、シルフィのナビゲートにより、彼女達が言う所の『家』へと向かっている。

向かっているのだが、何故か道中こんな感じで襲撃されまくっている。

一応手加減はするようにしているし、言ってあるが、別段『情』からの行動じゃあ無い。

あのクソ野郎みたいに隠蔽出来る訳ではないので、殺さないだけた。

……なんか面倒になって来たから、もう殺っちまうか?

でもまぁ、今漏らした殺気で、一斉に気配が無くなったから、放置するけどね?

ちなみに、先程の被害者とこちら側の組み合わせは

俺とチンピラ

ガルムとチャラ男

ウシュムさんとヒャッハーなモヒカン

……この世界にも、モヒカンってあったんだ……。


ウカさん曰く、普段はここまでじゃあ無いらしいのだが、現実として、先程から襲撃されまくっている。

原因として予想されるのは一つ。

おそらく、俺が持っている現金と、持っていると思われている『竜の素材』だ。


一応ギルドでは、


『森に行ったら、ウシュムさんとドラゴンが戦っていた。ウシュムさんが押され気味だったので、請われて加勢した。その後、ドラゴンを撤退させる事には成功したが、肝心のドラゴン本体は討伐出来た訳ではないので、まだ生きている。角は戦闘の途中で折れたモノを回収した』


と説明しておいたのだが、どう間違って伝わったのかは知らないが、


『高位の竜を討伐して、大金を得た若造がいる。そいつは、竜の素材もそっくりそのまま溜め込んでいる。そいつは、美女を何人も連れているから、身ぐるみ剥いで、調子付いた事を後悔させてやれ』


と、裏側に近い奴等を中心に話が広がっているらしい。

金云々に関しては、割と人目が有る時間帯だったから、仕方ないにしても、後半の素材云々については、どうしてそうなるのか、理解出来んのだが……。


そんなこんなで道を進んでいると、ある建物の前で二人から止まるように指示が出る。

ガルムとウシュムさんは不思議そうにその建物を眺めていたが、俺だけがその建物を目にして硬直していた。

何故ならそれは、この街では、初めて目にする木造(・・)の建築物だったからだ。

しかも、デザインは元の世界のモノであると、残された知識が教えてくれる。

正直、頭の中には『何故?』しか浮かんでこない。

説明を求める為に、シルフィへと振り向くと、そこには、「イタズラ成功!」と言わんばかりに笑みを浮かべた残念エルフがガッツポーズをとっていた。


「どう?驚いた?実はコレ、私達みたいに転生してきた人達が造ったモノらしいんだ。まぁ、その人達も、大分前に亡くなったらしいし、文化的にこの辺じゃあ木造は人気が無かったみたいでね?安かったから、二人で出しあって買っちゃったんだ!まぁ、二人で使うには、少しばかり大きかったけれどね?」


わたくし達獣人族は~、元々森暮らしなので~、木造の方が~、落ち着きます~」


……成る程ね……。

それなら、納得だな。

一瞬、シルフィが自分で建てたのかと思ったが、先人が遺したモノだったか。

しかし、現状では、木造ではちと危なそうだが、大丈夫だろうか?


「……コレがこうなっている理由は分かった。でも大丈夫なのか?状況的に、押し入りや放火位はやってくると思うけど?」


おそらく、十中八九やるだろうな。多分だけど。

塀だって、そんなに高くも、頑丈である様にも見えないし。大丈夫か?

だが、そんな俺の発言を受けて、尚笑顔のままだったシルフィが答えた。


「それに関しては、心配無用よ?この建物全体を被う形で、結界が発生する仕組みになっているから、登録してある人間と、その許可が有る人間しか入れない。それに、塀越しにモノを投げ込むなんて手も、危険物は結界が弾いてくれるから使えない。だから、見た目はそうでも無いけれど、結構セキュリティは厳重だよ?ココ」


フム?ならば、安心か?


「玄関先で~、固まっているのもなんですから~、中に入ってしまいましょうか~」


「では、三名様ご案内(あんな~い)!」


そう言いながら、門の支柱に付けられた板に手を置き、魔力を流す。

すると、その板に


『新たに住人を登録しますか?yes/no』


と表示された。


「んじゃ、パパッと登録しちゃおうか」


成る程、ココでまず登録してから入るのね。





******





門での登録を済ませて中に入り、各自が使う部屋を決め、荷物を置いてから、リビングへと再集合する。


「いやー、しかし、買った時はこの部屋数どうしようかと思ったけど、やっぱりココにしておいて良かったね!」


「元々~、十人からで設計されていた様ですので~、まだまだ空き部屋だらけですけどね~」


そんな訳で、部屋はかなりの数が空いていたので、選び放題だった。

だったのだが、何故か皆、俺が選んだ部屋の近くや隣を選んでいる。

元々住んでいた二人も、わざわざ近くに部屋替して来た。

……コレじゃあ、俺が気を使って、少し離れた部屋を選んだ意味が無いのだけど……。

ちなみに、新しく選んだ部屋だとか、二人が遠出(例の捜索依頼)している間に積もった埃何かは、俺の光魔法【浄化】を魔力特盛で発動させてごり押しで一斉掃除し、何処からか取り出したハタキや箒なんかで、ウシュムさんが仕上げをして、綺麗にしてある。……ウシュムさん、女子力パネェ。


さすがに、もう危険地帯ではないので、全員が武装解除している。俺ですら、一応は、鎧をパージして来ている。もちろん、剣も部屋に置いてきた。

女性陣も部屋着に着替えており、大変寛いでいる様子だ。

……一応、男(ただし骨だけ)が居るのだから、もう少し『慎み』ってモノを持った方が良いのでは?

色々と見えそうデスヨ?

実際に、体勢によってはチラチラとミエテマスヨ?

……こら、ウシュムさん。わざわざ自分でチラ見せしないの……。

まさか、ウシュムさんが、鎧の下にこんなセクシーな衣装を着ているとは、想定外だったぜ……。


『あら、故意的に(・・・・)殿方が好みそうな服装で来たのですが、好みではありませんでしたか?貴方様?』


……そうやって、わざとスキルで内緒話を持ちかけないで下さいな……。

てか、故意的にやらんで下さい!

常時賢者タイムとは言え、オトコノコ的には、結構破壊力が高いですからね?

もう少し大人しめでお願いします、頼むから!



……おっと。ウシュムさんに弄られて、本来の目的を忘れる所だったわい。

気持ちを切り替え発言する。


「はい、皆さん注目!とりあえず、大まかに今後の指針を決めておきたいのだけど、よろしいか?」


そこで、シルフィが手を上げる。


「はい、シルフィ。なんぞ?」


「その指針だけど、どの程度まで決める予定?さすがに、最終目標まで、なんて言われても困るのだけど?」


それは、然り。


「まぁ、そこまでは無いとだけは言っておく。より具体的に言えば、『俺が進化した後暫くの活動指針』ってとこだな。ウシュムさんを仲間に引き込んだ際に、どうやら『屈服させた』判定でも出たらしく、レベルが上限に達してね。進化する前に、した後の事を少し決めておこうかと」


「それは、進化してからでも良いではありませんか?自分はそれで良いと思うであります」


「どうやら、俺の場合、進化を開始してから終わるまで、結構な時間が掛かるらしくてね?とりあえずでも決めておけば、俺が居なくても、ある程度は行動出来るだろう?てな訳で、何か案がある人~?」


今度のウシュムさんの手が上がる。


「貴方様の優先したいモノで良いのではないかと。

とりあえず、で良いので、何を求めておられるのか、お聞きしても?例えば、この街、人間の街まで来た理由、とか」


……そう言えば、ガルムにしか話して無かったか?


「まぁ、ぶっちゃけた話、ココに来た理由は『情報収集兼暇潰し』だからなぁ。となると、情報収集になる……のか?」


「それは~、どの様な情報でしょうか~?」


「最初に考えていたのは、『人類の現状』だったけど、人族は見れば見るほどヘイトが溜まるしなぁ。となると、単純に『戦力の分布』と『他種族の現状』が気になる……かな?あとは、部下として引き込めそうな魔物の捜索位か?」


……うん、現状ではこんなものだろう。

あとは、進化後のレベリング位かな?


「分かりました。では、私が高位冒険者としての権限で、ギルドにそれらしい魔物の情報が入ってないか、確認しておきますね?」


「じゃあ、私達は、亜人諸族の現状でも調べて来るかな?」


「そうですね~。一応は私達は身内ですから~、相手も話し易いハズですからね~」


フム、そんな所かね?

人族の戦力分布なんぞ、そうそう探れるモノでも無いし、仕方ないか。


「……自分は、どうすれば良いでありますか?」


……おっと、こいつを忘れてた。

どうするか……。


「……なら、俺の進化が終わるまで、護衛しておいてもらえるか?多分大丈夫だと思うけど、万が一に備えておいてくれると有難いのだけど?」


「了解であります!」


……単純で助かった……か?


「あとは、各自必要だと思った事をやっておいてくれると助かる。何か入り用だったり、経費として必要だったりする分として、幾らかウシュムさんとウカさんに預けておくから、何かあったら使ってくれ」


持って来ていた財布から、金貨を十枚ずつ預けておく。この二人ならば、意外としっかりしている……ハズだから、多分無駄遣いはしないだろう。……きっと。


「他には無いか?では、解散!お休み~」





******





皆と別れて廊下を進み、自分の部屋として確保した元空き部屋に入る。

後ろで扉が閉まる音を聞きながら、ベッドへ……は向かわず、外しておいた武具へと向かう。

どうせ進化すれば、初回と同じく変化するであろうソレらだが、流石に一月も使っていれば、愛着も涌く。

これで最期ならば、と軽く点検し、傷の有無等を確認する。

特に異常は無い事を確認したので、綺麗に並べて置き直す。


よし!やる(進化する)か!と気合いを入れ直し、ベッドへと向き直る。

すると、そこには



着ていた服を枕元に畳み、裸で布団の中に入っているウシュムさんの姿があった。




「……何してるんですか?」


「旦那様の布団を温めておくのは妻の仕事。つまり、私の仕事ですわ。なので、温めておきましたので、ささ!どうぞ、お入りになって下さいな?」


「……結構です。まだ独身です。てかハウス(部屋に戻りなさい)!!」



……どうにかウシュムさんを追い出し、ベッドに横になる。必要性は無いハズだが、なんとなくやった方が良さそうなので、こうしておく。

そのまま、ステータス画面を呼び出し、レベルが上限に達している事を確認した後、進化回数の欄に触れ、前回と同じアイコンを呼び出す。


【進化を開始します。よろしいですか? yes/no】


既に経験済みなので、そこは迷わずyesに触れる。


【進化を開始します】


そのアナウンスと同時に意識が遠のくが、その朧気な感覚の中で、こんなアナウンスが聞こえた気がする。



【条件を満たしたので、【連鎖進化】が解放されました】



ソレと同時に俺の意識は闇に溶けて行った。

次回の更新は一身上の都合で3/6の予定になります。


次回、主人公の進化先は如何に!

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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