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やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


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第27話

今回も人によっては不快に感じる表現が使用されている可能性があります。ご注意下さい。

はぁ、とため息つきながら、いつもの様に血糊を払って納刀し、シルフィとウカさんの方を見る。

色々と聞きたい事は有るが、とりあえずはこの場をどうにかしないとマズイ。


「……色々と言いたい事は有るけど、とりあえずシルフィ!」


「っ!は、はい!!」


こちらが強めの口調かつ名指しで呼びつけたからか、反射的に『気をつけ』の姿勢で返事をしてくる彼女(シルフィ)


「まずは、このクソ野郎の首と身体、それと腕を収納しろ。」


「え?いや、でも、このままにしておいた方が……。」


「ご託は良いからとっとと仕舞え(やれ)!!」


「イッ、イエッ、サー!!!」


おそらく、初めて俺から怒号が飛んだからか、それともワキワキしている右手を見たからか、ミリタリーな乗りで『気をつけ』の姿勢から『敬礼』をかまして死体へと近づいて行く。

それらに触れて『空間庫(アイテムボックス)』に収納し、こちらに振り向く。


「収納、終わりました、サー!」


「よろしい。では、そのクソ野郎の名前ないし身元が分かるものを分別して提出せよ!」


「サー、イエッ、サー!……ありました!身分証明書です。どうぞ!!」


「うむ。ご苦労だった、シルフィ二等兵!」


「ありがとうございます、サー!」


……なんだか変なテンションになって来ているが、手に入った身分証明書(この街の物ではない)を、途中で出てきてガルムに拘束されている兎系獣人族のピーターさん(受付のおっちゃん)とウカさんに見せる。


「……で、さっきまで色々とやらかしてくれていたクソ野郎の身分証明書がコレなんですが、お二人はコイツが誰か(・・)もしくは何か(・・)分かりますか?」


「……すみません~。私は~見覚えが無いです~。」


「……ああ、誰かと思えばコイツか……。」


おや?コレは何か知ってそうだな……。


「ほう?この阿呆とは顔見知りで?てかこの街の住人?」


「いや、ただの流れの商人だ。『中央』に本店を構えているとか言っていたが本当かは知らん。入街して早々、俺に(・・)『亜人の奴隷を扱っている商館はどこだ』と聞いて来やがったから覚えていただけさね。

そんなモノありゃしねえよ、と返事してやったら喚き出したんで、衛兵に摘まみ出されてたが、まだこの街に居やがったんだな。」


成る程……。

ならば、コイツが消えても(・・・・)あまり問題(・・)無いな(・・・)……。


地面に残っていた血痕を浄化魔法で消してしまってから、ピーターのおっちゃんに話かける。


「なぁおっちゃん。『貴方(あんた)が黙っていてくれれば、俺達は貴方に危害は加えない』。彼女達のためにも、この事は秘密(ナイショ)にしておいてもらえないかねぇ?」


要するに『黙ってようね?』と言う脅迫(お願い)だ。駄目ならば仕方ない、ピーターのおっちゃんにはパイになってもらうしかあるまい。


「……なんの事だ?

今日俺は、お前たちが通った後は『まだ誰も見ていないし、何かあったとも聞いていない』。ここにいるのだって、偶々(たまたま)休憩に来ただけなんだが?」


うん、しっかりと意味が通じていた様で何よりだ。

正直ほっとしたよ……。


しかし、そんな平穏(?)はおっちゃんの俺にしか聞こえない様に呟かれた言葉であっさりと破られる。


「……正直、俺もあのクソ野郎の事はムカついていた、だから今回はスカッとした。だから教えておくが、あの二人と一緒にいる限り、似たような事は必ず起きる。それも何度でもだ。この『統一王国圏』にいる限り、だ。ここの様に獣人族でも一応は受け入れる様な所ばかりじゃあ無い。基本『人族至上主義』なのには変わり無いのだからな。故に奴隷にしようと狙ってくる馬鹿共も多い。もちろん、あいつらも簡単に捕まる様なタマじゃあ無い。当然な?でも、今回みたいなのはマズい。俺達獣人族は魔法に対する抵抗力が低い。あのクソ野郎みたいに、魔法でどうこうしようとしてこられると対処がし辛い。だから、どうかあいつらを護ってやってくれないか?顔見知りが奴隷落ちなんて見たくないんだよ……。」


……ある種の衝撃の事実を知らされたが、要するに『狙われるから護ってあげてね?』って事だろう?

なら問題あるまい。

だって彼女達は『仲間』だもの。……俺からだけの一方的な判定では有るけど。

そんな思いを込めて一つ頷いてやると、明らかに表情を緩めるピーターのおっちゃん。

……まぁ、ガルムに拘束されっぱなしなので、締まらない事この上無いけど。


口止めの完了したピーターのおっちゃんを解放し、現場の証拠隠滅も完了させたので、移動する……前に、しておかなくてはならない事が有るので、二人に声をかける。



「シルフィ~、ウカさ~ん。ちょーっと来てもらって良いかな~?大事なお話し(・・・)が有るんだけど~?」



そう言って手招きしている俺に、嫌な予感を感じながらも近づいて来る二人。

ある程度まで近づいて来たタイミングで二人との距離を一息に詰め、右手にウカさんの頭と左手にシルフィの頭をそれぞれ掴み、両者にアイアンクロー(お仕置き)を執行する。



「「アアァアァアァアァアーー!!!」」



頭部を襲う激痛に悶絶する二人。


「……何か釈明がある人~?」


右手を勢い良く上げて、発言の許可を申請するシルフィ。

左手は頭の拘束がどうにか弛まないかと、必死に掴んでいる。


「シルフィ、何かな~?あんまり下らない事だと、お兄さんもーっと握る力強くしちゃうぞ~?」


そう言いながら、まともに話せる程度に拘束を弛めてやる。


「そ、その……私達亜人諸族だとか、ウカさんみたいな獣人族が、差別的な扱いを受けているだとか、奴隷にするのがある程度黙認されているだとかを黙っていたのは悪かったと思ってます!!

だ、だから。だから、アイアンクロー(コレ)やめてーー!!」


「ふーん?で?何でそれらを予め言っておかなかったのかな~?」


まぁ、なんとなく予想はできるけどね?


「そ、それは……。」


……ちょっと苛めちゃうか。



「……そっか~。そんなに信用されて無かったか(・・・・・・・・・・)~。こっちとしては、それなりに信用してたからあの秘密(正体諸々)も喋ったし、行動だって一緒にしてたのにな~。仲間(・・)だとも思っていたのにな~!そっか~。仲間だと思っていたのは」



と、ここで一回話すのを止めて、少し貯めを作り、視線を下げて、とても悲しそうな声色でこう続けた。



「……俺だけ(・・)だった、みたい、だね……。」



さぁ、どう出る!

ワクワクしながら返答を待っていると、とても言い辛そうにしながらも、反射的に言葉を返してくる。


「そんな事は!!」


「……でも、事実としてはそうなっているけど?」


「……だって……」


「だって?」


そこで、とても言い辛そうにこう続けた。





「だって、そんなデメリット提示したら、ジョンさん達だけで行っちゃうんじゃないかって……そう、思ったから……二人で相談して、言わない様にしようって……決めたんだ……。」





はい!予想通りの返答、頂きました!!

……本当、予想のまんまの返答だな。


シルフィの頭を握り込んでいた左手を放し、デコピン一発かましてから、頭を抱えているシルフィの頭頂に乗せる。


「アホだのう、お主ら。その程度で見切りを付ける訳無かろうが。」


「で、でも……。」


「それに、そもそもデメリット云々を言うのであれば、お前さんらの方が大きかろうに?」


彼女はポカンとした顔で首を傾げる。

……コイツ、本気で忘れてないか?

耳許に顔を近付けて小声で伝える。


「……そもそも、俺とガルムは魔物だ。しかもそこそこ強力な、な。そんなブツを街に入れてるお前さんらの方が危ない橋渡ってるだろうが?」


顔を離して続ける。


「……それに、俺達『仲間』だろう?なら、『助け合う』のが当然だろう?……まぁ、事前に言っておいて欲しかったけどね?」


そこまで言うと彼女の表情が、それまでの申し訳なさそうなソレから笑顔に変わり


「……うん!!」


と返して来たのであった。

まぁ、これで余計な蟠りは発生しないだろう、と一安心していたが、そう言えばウカさんを右手でアイアンクロー(拘束)していた事を思い出した。


……やべぇ、反応が薄かったから、すっかり忘れていた……。

直ぐ様解放し、急いでウカさんの方に視線を送る。

するとそこには


目を潤ませ

頬を赤く染め

自身の腕で身体を抱きしめ

腰をくねらせ

ふわふわの尻尾をピンと立て

艶っぽい雰囲気を周囲にぶちまいているウカさんの姿があった。

うっすらと開かれた口元からも


「ああ……もっと、もっと~。」


と、喘ぎ声とも取れるような内容が漏れだしている。

そんなウカさんの艶姿から急いで視線をシルフィに向け、『意志疎通』スキルで会話を開始した。


『おい!ウカさん(コレ)どうなってんだ?

もしかして、ウカさんってMっ気が強い人(コレ系)だったりするのか?』


『いや、むしろS寄りだったはずなんだけど……。昔から、しつこく言い寄って来る男なんかは、容赦なく蹴り潰して(・・・・・)いたから……。』


ヒエッ……。


『じゃあ、何でこんな状況になってんだ?』


『……多分だけど、初めて男性?に、圧倒的な力の差を見せられ、見返りも無く救われ、そんな相手から告白紛いの発言を貰い、最後には躾られた(・・・・)ってんで、新しい扉開いちゃったんじゃないっすかね?』


……マジかぁ。

確かに、今も腰元にしなだれかかってスリスリしているけども、これは完全に予想外ですよ?

ガルムまで、対抗意識からか、反対側にしがみついて来たし。

ソレを見て、シルフィは顔を赤くしながらキャーキャー言っている。


……まぁ、変な雰囲気になるよりはまし、かなぁ。

次回、ギルド関連についてのアレコレが出る……予定です

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新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
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