第25話
裏切りを思い出した上、捜索対象が既にこの世に居ない事が発覚したためか、彼女達は再度沈んでしまっている。
……リアルでorzやってる人間初めて見た。
しかし、太陽は既に傾き、時刻は夕暮れへと差し掛かっている。
こんな、戦場跡みたいなところで夜営しようものなら、血の匂いに誘われてやってくる魔物からの夜襲を防ぎきれないし、そもそも立地や環境が悪いからしたくない。
せめて、元々予定していたあの湖付近ならば色々とやり易いので、出来れば早めに移動したい。
その旨は彼女達に伝え
「で、君らはどうする?」
と問い掛けておく。
彼女達は同じように頭上に?をくっ付けたままこちらを見つめている。
「『どうする』ってどういう事?」
「何か~選択肢が~あるのですか~?」
フム、そうだな……。
「まぁ、あえて選択肢を提示するのならば、以下の二つから選んでくれ。
一つ、君たちだけで夜営する。
この場合は、君たちにとっての不確定要素である俺達は居なくなるが、残り少ない時間で安全な場所を確保する必要があるし、夜営の準備や夜間の警戒まで二人でやらなければならない。」
早い話が『俺らは行くからお好きにどうぞ?』だ。
ガルムからのお願いも、既に命『は』助けた以上、一応は叶えた事にはなるからな。
……ただ、出来るのならば、こちらは選んで欲しくは無いけれど……。
あえて俺が提示した現実に表情が再度暗くなる二人。
……まったく、話は最後まで聞くものだ、と教わらなかったのかねぇ?
「二つ目は、これから移動する俺達に付いてくる。
メリットとしては、場所は既に検討が付いているし、準備にしても手が多いから時間もかからん。後、湖の近くだから水浴びも出来る。
デメリットとしては、俺がいる事だな。
さぁ、どっちか選んでくれ。時間はあまり無いぞ?」
今度は別の意味での?を頭にくっ付ける二人。
視線で相談してからこちらに返事を返して来る。
「それはつまり?」
「ご一緒しても~よろしいのでしょうか~?」
フム、当然と言えば当然か。
追加で軽く説得しておくかね。
「まぁ、助けた手前、ここで『はい、さいなら』ってのも後味悪いしね。
それに、現状で君ら二人で夜営は無理っしょ?
傷やら体力やら物資的に。
それに、こちらとしても、色々と聞きたい事とかあったりするから、ここは互いにギブアンドテイクで行きません?」
こちらも打算込みであると告げると、どこか安心した様子で
「「では、お世話になります(~)」」
と返答してきた。
うむ、素直でよろしい。
******
所変わって現在例の湖畔。
俺は現在、夜営用に張られたテントの前に作った竈にて絶賛お料理中。
材料はアレだ。
鑑定で『非常に美味』と出た例のブツ。
あの岩蜥蜴のお肉だ。
……何で調理出来る状態で手元に有るのか?
そこは、ほら。彼女のチートもといギフトの力。
あの後、皆で移動する事になったから
『荷物を纏めてね?』
と指示してみた所
『じゃあアレも持っていこう』
と言ってふらふら近づき、まるごと収納して持ってきてしまったのだ。
そう、皆さんお察しの通り、彼女のチートの内の一つは『空間庫』だ。
しかも収納物に対する時間停止からソート機能を搭載、更に極めつけとして、魔力を消費することで対象の収納物を解体・分別・浄化まで全部やってくれる優れものなのだとか。
条件として、直接触っている物でないと収納出来ないし、生物も収納出来ないらしい。
……ずりぃぞ駄女神!俺もコレ欲しかった!!
ちなみに、彼女達が岩蜥蜴の前に蹴散らした魔物共は、邪魔にならないように片っ端から放り込んでおいたため、あそこには無かったそうな。道理で血の匂いだけで死体が無いからガルムが不思議そうな顔をしていた訳だ。
そんな訳で空間庫内部で解体して貰った蜥蜴肉を現在調理しているんです。
……女性陣でなくて俺がしている理由?
そんなの、出来るのが現状俺しか居ないからとしか言い様が無い。むしろ俺が聞きたい。
女性なら料理位作れるように、などと言うつもりは毛先程も有りはしないが、流石に全滅は無いと思う。
一人位は作れとけよ……。
むしろ、冒険者組は今までどうしてたんだよ……。
あれか?基本、携帯食料とかか?体に悪いぞ?
残念エロフの一部(何処とは言わない)が残念なのは、それが原因なんじゃないか?
そんなことを考えながら肉を焼く。
二人共、血を流したり、激しい運動の後なので、やはりがっつり肉が良かろう。
エルフ族も別段草食って訳ではなく、肉もしっかり食べられるらしいので大丈夫だろう。
そんな訳で三人分の料理を仕上げて行く。もちろん肉だけでなくシルフィに出させた野菜(使わないのに何故かあった。……解せぬ。)で作ったサラダも用意してある。
過半数が肉食系(狼と狐)だが、まぁ問題有るまい。
ちなみに、何故三人分なのかと言うと、移動中に俺が魔物だと言う事は話してしまっているからだ。むっちゃ驚いていたけどね。
もちろん他人に話せない様に【契約】の一つ『誓約』で、《勝手に他人に漏らさなければ、こちらも危害は加えない》と縛ってあるので大丈夫だろう。
それに、『人類衰退~』だとか『魔王~』だとかは伝えず、『転生の時に記憶を消され、気がついたら魔物になっていた。元は多分人間だったから街に行ってみたい。ガルムは瀕死の所を助けたらなつかれた。魔物だけど自分に服従しているから勝手に危害は加えない、ハズ。アレ(ギルド章)は森を探索している時に見つけた死体から回収した。』と説明しておいたので、多分大丈夫。……多分だけどね?
ちなみに、転生者云々に関しては、彼女が既にウカさんにカミングアウトしていたので、案外すんなり受け入れられた。予想外と言えば予想外だが、嬉しい誤算と言うやつだ。
出来上がった料理を器に盛っている(出シルフィの空間庫。使わぬのに何故ある。……解せぬ。)と、水浴びで汗と汚れを落としていた女性陣が戻って来た。
……いや、うん。眼球は無いけど眼福眼福。
お風呂上がりでは無いから、肌が火照った艶っぽさは無いが、上がったばかりのしっとりした感じとか髪の艶だとかは大変色っぽいです。……まぁ、肉体が無いから常時賢者モードなのだけど。
更に言えば、皆、後は飯食って寝るだけなので、大変ラフな格好をされている。
まだ森のただ中なので、半袖半ズボンの馬鹿は一人いるけど、基本的にそこまで肌を出す格好はしていない。が、防具やらローブやらは外して普通の服に着替えているので、見た目は普通に『女性』って感じだ。(ちなみに、夜間の見張りは寝なくても大丈夫な俺とガルムで担当予定)大変見目麗しい。眼福眼福。
普段残念エルフなシルフィも悪くないが、一番凄いのは、断然ウカさんだろう。
彼女が水浴びに行く際、防具を外していたのだが
『ふ~、ようやく外せました~。コレ着けていると結構苦しいんですよね~。楽チンです~。』
と言いながら胸当てを外したのだが、そこには
偉大なる山脈が鎮座されていた。
いや、あの時は思わず拝みそうになったね。
胸当てをしていた段階でも平均よりも大きそうだとは分かっていたが、まさかここまで立派なお胸様だとは思わなかったぜ。
確かに、アレだけしっかり固定していれば苦しかろう。
いつぞやの神官も大きかったが、ウカさんの方が美しい気がする。まぁ、アレは敵だったし、どうでも良いのだけど。
ちなみに、身長は
シルフィ←ウカさん←ガルム
の順だが、俺の目測では
ウカさん←ガルム←シルフィ
の順になる。
……何のランキングかって?
あえて黙秘させてもらうが、言い方を変えるならば
ウカさん←グランドキャニオン
ガルム←渓谷付きの山
シルフィ←丘以上山未満
となる。
どこがとも、何がともあえては言わない。何処がとは。
そんなアホな事を考えながら配膳し、いざ食事、と言ったタイミングでシルフィとウカさんが口を開いた。
「あのさ、ジョンさん。この後についてなんだけど……。」
「ここまで~お世話になっておいて~、こんなこと言うのは~図々しいとは思うのですが~。」
「「私達と一緒に(~)冒険者してはくれませんか(~)!」」
……こちらとしては願ってもない話だが、ちと急過ぎないか?
その事を伝えてみたが、彼女達から帰ってきた返答を纏めるとこんな感じになる。
女だけのパーティーだと舐められ、貶され今回(例の戦闘)のようなことになりかねないし、過去にも何度かやられている。だが、容易に男を入れてしまうと、今度は貞操の危機になりかねない。その点、俺ならば全面的に信用出来る(骨しか無い)ので、街に行って冒険者として登録するのであれば、是非とも自分たちとパーティー登録して欲しい。もちろんガルムも一緒に。
との事らしい。……結構苦労してらっしゃるんですね、お二人共。
返事はどうしたのかって?
もちろん、即答でYesと答えたよ。
まぁ、道中でギルドだとか街の事だとか国の事だとかの色々を教えて貰うのを条件につけたけど、ね?(黒い笑顔)
シルフィ と ウカさん が 仲間 に 加わった!
次回、ようやく街に到着します。




