第20話
【主従契約が結ばれました】
頭の中に突然そんなインフォメーションが流れた。
「「…………………………ん?」」
いきなりよく解らん情報が流れて来たのでリアルに変な声が出たが、どうやらそれは俺だけではなかったようだ。
「……なぁガルムさんや?」
「……何でありますか?主殿?」
「……ついさっき、俺の頭の中に変なインフォが流れたんだけど、気のせいかな?」
「……奇遇ですね主殿。
実は自分も恐らく同じようなタイミングで変な情報が頭に流れて来たのであります。」
「……やっぱそっちも?」
「……ええ、恐らく。」
「「………………【ステータス・オープン】!」」
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名前・未設定
種族・スケルトン(死霊聖騎士)
レベル・215/300
スキル・剣術、剣術【二刀流】、闇魔法、闇魔法【剣】、魔力操作、クリティカル、骨食、魔石喰い、思考加速、遠斬、死霊術、光魔法【浄化】、簡易鑑定、気配察知、意思疎通
特性・スケルトンの特性、死霊聖騎士の特性、転生者の特性、???の特性
ギフト・【ヘルプ機能】、【成長促進】、【契約】New!、【?】
契約・主従契約=ガルム
残進化可能回数・2
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わーすごい、れべるちょうあがってる。
……軽く現実逃避してみたけど、受け入れざるを得ないか……。
とりあえず、この【契約】とやらを鑑定してみるか……。
【契約】
両者の同意の上で結ばれるモノ。
契約形体によって効果が異なる。
基本能力として
・契約相手の位置や状態が分かる
・契約相手と獲得経験値を共有できる
等がある。
……フム?
効果だけを見れば、そこまで悪いモノでは無い……のか?
多分だけど『両者の同意』の部分に関しては、直前のやり取りがそう認識された、って事なのかな?
……ただ、最大の俺的な問題点としては、これが『主従契約』って事か……。
アレか?
最初に彼女が『下僕』云々言い出したからか?
でも俺は『仲間』になって欲しかったんだけどなぁ…。
解・主様、主様。
ん?何ぞ?
解・契約形体でお悩みの様ですが、あくまでも『当て嵌めるならばソレ』と言うだけで、別段ガルム様が主様の発言に絶対服従と言う訳では無いですよ?
ある程度は優先的になる筈ですが。
……まぁ、無理やり縛ってる訳では無いなら良いや。
ちなみに、他はどんなのが有るのね?
解・主なモノとしては、完全に相手を縛る『隷属』、『隷属』よりは自由がありますが『主従』よりは支配力が強い『従属』、お互いが条件を決め合い、その遵守を誓い合う『誓約』等があります。
へぇ、結構色々あるんだねぇ。
そう言えば、やけに彼女が静かだけど、どうしたのだろうか?
彼女が居た筈の場所へと目を向ける。
嫌がっていたり、ショックを受けていたりして無いと良いのだけど、等と思っていたのだがそれは裏切られる事となった。
何故なら彼女は
ステータス画面があると思わしき空間を見つめながら
尻尾を見たこともないような勢いで振り回し
顔に手を当て、身体をくねらせ
顔面を真っ赤に染め上げながら
目を潤ませつつ、極上の笑みを浮かべていたのだから。
……ッハ!危ない危ない。
一瞬意識が飛んでいた。
なんだか良い意味で凄まじいモノを見た気がする。
よし!ではもう一度
……なんだ、ただの天使か。
なんだろうあの生き物、超可愛いんだけど!
いやいや、正体はわかっているんだけどね?
うちのガルムさんですよね?
でもあんなに可愛かったっけ?
しかも、超嬉しそうなんだけど、何かあったっけ?
いつまでも見ていられるが、彼女の傷の具合だとか、現状の説明の必要性だとかを鑑みた場合、そろそろ声をかけておいた方が良いと判断し、大変名残惜しいが実行する事にした。
「おーい、ガルムさんやーい。
何か妙に嬉しそうだけど、良い事でもあったのかい?」
「あ、主殿!
自分、主殿の従僕になった様であります!
ステータスに現れると言う事は、正式に契約されたって事なのであります!それが嬉しいのであります~!」
?どう言う事??
何で?何でそれで嬉しいの???
解・恐らく、後者は『テイム』スキルと勘違いしているのではないかと考えられます。
共有的にフェンリルクラスをテイム出来る存在はいないので、それが成功して喜んでいるのではないかと考えられます。
前者に関しては、先程から従属を志願していましたし、フェンリルの特徴として『己の認めた者に忠誠を誓う』と言うのがある様なので、本能的に嬉しいのではないでしょうか?
ふーん?
まぁ、それで本人が満足してるなら、それで良いのだけど、変な方向に……
「これで自分は主殿の下僕!つまりアンナコトやソンナコトまで自分に……ハァハァ!」
……いっちゃってない?
解・……否定出来ません。
「そう言えば主殿!
主殿のお名前は何なのでありますか?
自分まだ聞いて無いでありますし、ステータスにも『???の従僕』って出てるだけなのであります。
ぶっちゃけ、本当に主殿の従僕になれているのかちょっと不安なのであります。出来れば、教えて頂きたいのであります。」
……そう言えば未だに名無しのままだったっけ、俺。
しかし、名前かぁ……。
無いモノは仕方ない、から自分で付けるべ。
この世界の人間って名字は持ってるんだっけ?
解・基本的には持ってます。
名前・姓の順です。
貴族は、加えてミドルネームを持っています。
フム?なら、そうだね……。
…………
……
あ、一個思い付いた!
この世界の人間には分かる筈も無いジョークだけど、状況的にはピッタリだからコレで行こう!
「ジョン・ドウ」
「え?」
「誰か分からない死体、それが俺の名前だよ。これで大丈夫か?」
「……はい。大丈夫であります。
ありがとうございます、主殿!」
「ん。なら、そろそろ中入るか。
早めに治した方が良いだろう?」
「了解であります!
そう言えば、主殿は今後いかが成されるお積もりでありますか?自分は主殿について行く所存でありますが、具体的に展望が有るのならば、聞いておきたいのでありますが。」
「まぁ、一応ね?
もう少しレベルを上げたら、人間の街に行ってみようと思っているのだけど、構わないかい?」
「情報収集でありますか?では、自分もお供するであります!
それに、自分もあと少しでレベル上限なので、とりあえず上げておきたいのであります。もしかしたら、進化出来るかもしれないのでありますし。」
……今、何か俺とは決定的に違うような発言が聞こえた気がするが、まずは彼女の傷を治す事が最優先だ。
そんな訳で彼女を再び抱え上げて、砦の中に入って行く。
次なる目的地は人類の最前線の一つ、辺境・イストの街
【名前がジョン・ドウに設定されました】




