第2話
「貴方には魔王へと至り、人類を衰退させていただきます」
いや、さっきもう聞いたよ
あれか?大事なことだから二回言いましたってやつか?
「まぁそんなところです
ところで、今現在の時点で何か質問はありますか?」
質問ねぇ…。
一つ気になった事が有るんだが良いか?
「ええ、どうぞ。
それより、『お願い』には驚かないのですか?
まぁ貴方ならそんな気もしますけど」
十分驚いているけどね、魔神様?
さっき『魔王へと至り~』って言っていたけど、あれか?俺の知識にある『魔王』と同じで大丈夫なのか?
「魔神様て…。
貴方が言っている『魔王』がどんなものかは知りませんが、この場における『魔王』の定義は【魔物・魔族を統べるモノ、又はそれらの王】として使っています。よろしいですか?」
ん、了解。
それと、『至り』って表現使っているってことは最初は魔王に成るだけの条件的なモノを充たしていない状態で転生させるんだろ?
何でまた?
「そうですね、何と説明したモノか悩みますが…。
魔物は基本獣です。
故に自分より強い個体に従い群を作ります。
そして、それらの群の長から、稀に高い知性を持つ強力な個体が台頭する事があります。
それが、【魔物の王】型魔王と呼ばれます。
貴方に目指していただくのはこちらになります」
ガチで弱肉強食かい…。
だとすると、最初から強い魔物として転生させてくれた方が良いんじゃないか?
『至る』って言っている以上、最初は結構弱めのヤツからスタートなんだろう?
それこそ『魔物最強』位に強力にしてさ?
「そうしたいのはやまやまなのですが、それをしてしまうと、最終的に弱くなってしまうのであまりよろしく無いのです」
はい?どゆこと?
「実は転生させるにも制限がありまして。
まぁ簡単に言えば『最初は弱いけど、最終的にはかなり強く成れる…かも?』のタイプ(変動型)か、『最初から結構強いよ!でもこれ以上強くなれないよ?』ってタイプ(固定型)の二者択一からしか選べないんです」
MA・JI・DE?なら前者しかあり得ないじゃないですか…。
そう言えば、魔物の方は聞いたけど、魔族の方はどうなってるの?
「魔族の方も強者優遇ですね。
魔王を決めるのも、先代に戦いを挑んで勝てばその人が新魔王になります」
何その脳筋種族…
まぁ『魔王』については解った。
じゃあもう1つ。
何でまた人類衰退なんてさせようとしてんの?
わざわざ、別世界の奴使ってまで?
天罰でも使えばそれでお仕舞いなんじゃ?
「それには、順番に答えさせてもらいます。
まず一つ目の人類衰退についてですが、これは単純に彼等が増え過ぎたからですね。」
はい?
「人類はその生息圏を拡げ過ぎました。
超が付く程に強力な魔物の生息地や山・海等の使用出来ない土地を除いた殆どを掌握し、産めや殖やせやのお祭り騒ぎで今も増え続けています」
いや、それは別に構わないのでは…?
「先ほどの『使用出来ない土地』を除いた全土の人類が占拠している割合が約8割で、それらの資源を食い荒らしているとしてもですか?
因みに残りの2割に関しては、
魔族領で1割・エルフ等の亜人諸族の国で1割
となっております」
oh…どの世界でも人間のやることって変わらないのね…
ん?増え過ぎたから減らしたいってなら、国とかに干渉して戦争状態に持ち込めば勝手に減るのでは?
「それは二つ目の答えにもなりますが、人類圏は統一王国が樹立していて弄くれず、魔族にはそもそも干渉出来ないので、貴方の様に魔物として送り込んで調節するしか無い訳です
それに、下手に戦争状態にしてしまうと、資源の食い荒らしが加速してしまうかもしれませんしね」
お、送り込んでって…
因みに別世界の奴(この場は俺だけど)を使う理由は?
「実は、魂は世界間の移動を経験するとそれそのものが強靭になり、宿った身体等の期待値等が跳ね上がる傾向に有ります。
更に保有している知識や性質等を加味すると、別世界の方にお願いするのが最も成功する確率が高いと判断したためです」
……それって『拉致』ってんじゃ…
「はて?聞こえませんね?
最後の『天罰』に関してなんですが、かなり調整が難しくて、《人間だけを対象にする》って事が出来ないんです」
へー。因みに無理やり使うとどうなんの?
「全生物に対して一定の割合を消滅or天変地異」
oh…それはアカンわ…。
「納得していただけましたか?」
一応ね?
ところで、話は変わるけど俺は『何』に転生させられるのかね?
出来れば教えてもらえない?
「そこは、幾つか選択肢を差し上げるので、そこから選んでいただいて結構ですよ?」
ほうほう?因みにその選択肢とは?
「変動型ですと今から挙げる三つから選んでいただく事になります。
一つ目、スライム
不定形の魔物
物理無効の柔軟な身体と各種耐性を約束された種族であり、最大の売りは倒して吸収した相手の『スキル』を獲得できる所です
二つ目、グレイハウンド
狼型の魔物
素早い動きと鋭い牙、高いコミュニケーション能力由来の指揮能力等が特徴。
頑張りによっては『上位種族』のブラックハウンドやシルバーウルフ、『最上位種族』のフェンリル等にも至れる可能性を持つ種族です
最後の三つ目、スケルトン
骨で形造られた人形の魔物
剣術を使える上『闇魔法』への適性も高く、胸部に存在する【魔核】を破壊されなければ死なない不死の種族。
可能性は限りなく低いですが、『最上位種族』のエルダー・リッチやリッチ・ロードは、あの世界において最強の一角を占める存在でもあります」
それらから選択か…。
………
……
…
よし、ではスケルトンで!
「よろしいのですか?」
うん。
だってほら、それらの中だったらスケルトンが一番汎用性が高そうだし、将来の期待値も高そうだしね。
「分かりました
では、転生種族をスケルトンに固定
貴方の魂に転生後、必要となるであろう情報と共に『ギフト』をインストールします」
?いったい何ををヲをヲををををヲをヲをヲ……!
い、いきなり!じっ、情報が、ががががががガがガガガガガガ!
「では、転生を開始します
貴方こそ、私の望みを叶えてくれる事を祈っています
では、お気をつけて」
なっ、ちょっ、まっ、吸い込まれっ!
アッーーー!!
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地に描いた魔方陣を使って彼の魂を送り出した一柱の神。ほぅ、と一息つきながらもその顏を愁いに曇らせる。
やらねばならぬ事とは言えど、自ら死地へと送り込んでいる現状に対して何も思わずにはいられないのは当然である。
「どうか、彼の者こそが我が望みを叶えん事を…。」
と祈りを捧げ、神はその場を後にした