第18話
魔物のランクや冒険者のランク等についてはもう少し後で詳しく説明します。
ご了承を。
剣に付いていた血糊を振り払ってから納刀し、自分で造り出した惨状に目をやる。
……うん、やり過ぎたね……。
今になって思い返すと、どうにもはっちゃけ過ぎたと思う。
何なんだよ『糞ムシ』って……。
いや、確かに奴等の所業を考えれば当然なのだけど、挑発するためとは言えわざわざ口に出す必要性は無かったかなぁ……。
まぁ、そんなに強くなかったし大丈夫か。
何事にも切り替えは重要だ、と考えるのは止めて振り替える。
無論、そこには重傷で地面に座り込むガルムの姿があった。
……まぁ、信じられないモノを見たと言わんばかりに、目を見開き、口を半開きにした状態で固まっているのだけど。
そんなに驚く程かねぇ?
なんて考えながら、ガルムの目の前で手を振って再起動を促す。が、動かない。再起動に失敗したようだ。
視覚で駄目ならば聴覚で、と今度は声を掛ける。
「おーい。もしもーし?聞こえてますかー?」
……返事が無い。まるで屍のようだ。
このまま自然に復帰するまで放置しても良いのだが、そのまま瀕死になられても困る。何とか再起動してもらわないと非常に困る。
……仕方ない。
この手だけは使いたくなかったが使わざる得ないか……。
正確に言えば、こんな相手の同意や許可無く使って良い手では無いのだが、今は緊急事態故に仕方ない。うん。仕方ないよね。(自己弁護終了)
一応、最後に一言掛けておくとしようか。
「おーい。起きろー。起きないとモフるぞ~?いいんだな~?」
返事が無い。
……返事が無いって事は、別にやっても良いって事だよな?
何せ『否』って返事が無いのだから!(暴論である)
まぁ、やる前に傷だけでも塞いでしまった方が良いのだけどね。
てな訳で傷の治療を先にやっつけてしまうことにする。
とりあえず、傷がどんな状態か知りたいのだが、本来教えてくれる存在が思考停止しているので、教えてくれそうな『簡易鑑定』を使ってみる。
……しかし、『簡易鑑定』の段階で結構色々知れるのに、通常の『鑑定』だったりするとどこまで見えるのだろうか?ちょっと気になる。
「まぁ、良いや。とりあえず、『鑑定』っと」
呪われた刀傷
回復阻害の効果が付与されている。このままの状態では、傷が治らない。光魔法で解除可能。
……oh。これまたえげつない効果だ事。
あの野郎共、死んでもまだ迷惑かけ続けるとは、いい度胸してやがんじゃねぇか……。
これ、下手しなくても死にかねんぞ……?
もはや呪いの類いじゃねぇか……。
まぁ、俺は浄化を使えるからあんまり関係無いけどね。
「んじゃ、パパっと治療しちゃいますかね。
まずは浄化で解呪っと。」
光魔法【浄化】を彼女に使い、全身の傷の解呪と同時に消毒も済ませてしまう。
これで解呪されているはずだが、一応確認の為もう一回鑑定しておくか。
消毒された刀傷
消毒され清潔になった刀傷。治療可
フム。どうやら大丈夫そうだな。
ならば、次の段階に進むとするか。
(えーっと?(用途は回復、対象は傷、覆って塞いで血肉に変われ)っと)
闇魔法による回復術式によって生成された、紫黒色をしたゼリー状のナニカを傷に被せる。
すると自動的に傷の形状にフィットするように形を変化し、表面は瘡蓋状に固まって完全に傷を塞いでしまった。
効果としては『傷の保護』と『回復の促進』である。闇魔法では水魔法のように、直接傷を回復させる手段が無いので、こうやって回復を助けるようにするしかない。
傷を塞いだ所から順番に、奴等の持ち物にあった包帯を巻いて行く。
ちなみに、あの名状し難いゼリーは傷の回復と共に体内に吸収されるので、包帯で固定しても大丈夫なのである。
流石に、傷を消毒したり塞いだりした際の刺激やら痛みやらで再起動したらしく、こちらに意識を向けてくるガルム嬢。
どうやら、こちらが傷の手当てをしている事は理解しているらしく、大人しく協力してくれた。
『助命の上、傷の手当てまでしていただき、大変感謝しているであります。』
「ん。まぁ、こちらも下心有りで助けたから言いっこなしって事で。」
『それでも助けてもらった事には変わり無いのであります。』
フム。結構律儀な正確のようだね。
……では、アレお願いしちゃおうかなぁ……。
良し、お願いしちゃおう!
「んじゃ、助けたお礼として、ちょっとモフらせてもらっても良いよね?
と言うより、君自身からOK貰っている(嘘)から良いよね?って訳で頂きまーす!」
『ぇ?っちょ!まっ!ら、らめ~!!』
どうなったかは、ご想像にお任せしますが、最終的には
『うう、もうお嫁に行けないであります~……。』
なんて言いながら、俺に身体をスリスリしてくるようになりました。
うん。満足!
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思う存分彼女をモフった後、問い掛ける。
「何でまたこんな所であんな様に?
消耗してなければ、あんな奴等にあそこまで追い詰められる程弱くは無いはずだろう?」
『まぁ、別に聞かれて困る事では無いのでありますけども。
この森に来たのは、自分の村の『成年の儀』の課題の一つである、『格上の相手と戦って勝つ』を達成するためであります。』
「ふーん。んで、格上に挑んで消耗していた所に、あいつらが連戦仕掛けて来た、と?」
『概ねそんな感じであります。』
「ちなみに課題の方は?」
『……逃げられてしまったであります……。』
「そいつは御愁傷様。ちなみに他はどんな課題があるんだ?」
『他には一つしか無いであります。
それは『信頼できる相棒を見つける事』であります。』
「へぇ。まぁ、事情はだいたい分かった。
ところで、ちゃんと塒は見つけてあるのか?
その傷じゃああまり無茶は出来ないぞ?」
『……まだであります。』
フム。じゃあ誘うだけ誘ってみるか。
「なら、俺が確保してある所に来るか?」
『……良いのでありますか?』
「助けた以上、放ってもおけないしね。
まぁ、少々距離があるんで移動しないといけないが、歩けるかね?」
『……まだ、ちょっと無理そうであります。』
「……となると運ぶ必要があるか……。
何か大きさを変えられるようなスキルとか、魔法とか無いか?」
ぶっちゃけた話、なかったら自分の身の丈以上の体高を誇る巨体狼を抱えて移動することになる。
出来れば勘弁願いたい。
『一応、有るであります。
少々お待ちを……。』
良し!ついてる!
何て思っていると、突然ガルム嬢の身体が煙に包まれた。
何事か、と見つめていたが、煙が晴れるとそこには
身長160程で、均整の取れたプロポーション、白い半袖短パンの軍服を着て、蒼い髪と瞳を持ち、小さな軍帽を被り、その両サイドから獣耳を、ズボンの腰の所から尻尾を出して、身体中に包帯を巻いている16~17の少女が座り込んで居た。
「ふう。久しぶりに『人化』スキルを使ったであります。」
と呟き、こちらに視線を向け、笑みを浮かべながらこう言った。
「では、すみませぬがよろしくお願いするでありますよ?主殿?」
………………はい ?
ようやくヒロイン(?)登場?




