第124話
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俺とメフィストとで連れ立って、『わざと』目立つ様にダンジョンアタック用の物資を買い込み、これでもか!とばかりに大きな荷物を背負ってダンジョンへと二人で向かって行く。
すると、ダンジョンから産出されるアレコレによって成り立っている街だけあって、一定以上のランクの冒険者であれば当然の様に持っているアイテム鞄(時間経過有り、容量制限有り、内容物によって加重される、シルフィの『空間庫』の劣化番。それなりに高価で珍しいが、産出場所がすぐそこに在るためそこそこ流通している)を持っていないと見る否や、次から次へと身ぐるみ剥がさんと襲い掛かって来る。
……いや、まぁ、確かに?こうやって『釣る』つもりでわざわざ荷物なんて背負ってはいたけどさ?ここまで爆釣だとは思わなくてね?
むしろ、この街にこれだけの屑共が集まって固まっていた事にびっくりしているわけなのだけどね?
そんな感じでダンジョンへと向かう道すがらに、素行の悪い冒険者を釣り出した俺達は、その場で殺したりはせずにある程度痛め付けてから路地裏に放り込んだり、そのまま捨て置いたりしながら進んで行く。
まぁ、一思いに殺してしまった方が手っ取り早いのだが、そうしてしまうと今後のダンジョンに対する防衛力だとか、ダンジョン内部からこの街の経済基盤である諸々の品を持ち出してくる人員が減ってしまうので、今はぶちのめすだけで留めてある。
……もっとも、この後で地獄すらも生温く感じ、心の底から産まれてきた事を後悔する事になるだろう体験をしてもらう予定だから、あの時俺に殺されておけば良かった、と思うかも知れないけど。
そんな感じであっちにフラフラ、こっちにフラフラ、時折路地裏を覗いてみたり、気紛れに人混みに混じってみたりと、最短距離を移動した場合の数倍近い時間を掛けて、目につきやすいマナーのなっていない連中を粗方『釣り出す』事に成功した俺達は、一応目的の一つでもあるこの街の最大の目玉でもあるダンジョンへと到着していた。
「……ほぉー、これはまた、立派な入り口だこと……」
「フッフッフッ、確かにこれは、私が住み家にしていたあのダンジョンとは、比べ物にならない程に立派な造りになっておりますな!」
そこで俺達を出迎えたのは、前世での古代神殿だとか、古代遺跡だとかを彷彿とさせる様な造りとなっている、ダンジョンの地表露出部分であった。
「……ダンジョンによって、こんなにも外観って変わるモノなんだな……」
「フッフッフッ、まぁ、それはそうでしょう?あそこは、出来たてを私が改造しただけの、いわば『半人前』や『初心者』と言った表現がされるのが妥当なモノです。
一方でこちらは、人族の手によるモノであれ少なくとも百年規模での管理と成長を経ている代物なのですから、外見からして異なるのがある意味当然と言うモノでしょう?おまけに、私のように、コアに対して直接的に干渉出来てはいない様子ですので、恐らくは最深部では『それなり』に厄介な魔物も熟成されているかも知れませんねぇ」
「……ほぅ、そいつは楽しみだねぇ。最近、歯応えのあったのはじい様位で、他はあんまり強いの居なかったからなぁ。楽しみだなぁ……」
何処ぞの戦闘民族ではないが、元々が魔物だったからその名残なのか、それとも前世からの気質なのかは知らないが、定期的に戦いたい衝動に駆られる事がしばしば有るので、もし歯応えの有る様な相手がいるのなら、定期的に顔出しするのも良いかも知れないなぁ。
そんな事を考えながら、様々な人で賑わう地表部分の入り口を潜り、内部を見回す。
どうやら手前側は冒険者達が情報交換したり、内部にて獲得してきた魔道具の類いを自慢したり、臨時でパーティーメンバーを募集したりする空間になっているらしく、それぞれが好き勝手に張り上げる声によってとても騒がしい空間となっていた。
そして、そんな彼らの隙間を縫う様にチョロチョロの駆け回り、時に物資の不足した冒険者に商品を売り付け、時に引き上げて来た冒険者から産出された魔道具の類いを買い取る等の行為をしている商人の姿を見ていると、どうにもジョシュアさんの言っていた『ダンジョンの魔物が溜まり易くなっていた』と言う言葉に違和感を覚える様な気がする。
普通、商人と言うのは、商機に機敏であるのは当然だが、それと同時にとても臆病な人種だ。
多少の危険であれば、そこに商機さえ有れば留まる事も向かう事もするだろうが、非力な彼らにとっては魔物が溢れるかも知れない、と言う様な状況にあるのなら、機敏に察知してさっさと死地から逃げ出すのが普通なのではないのだろうか?
それなのにこんな風に大勢残っていると言うのは、些か不自然な気がしてくる。
……案外と、冒険者の素行云々は本当だけど、魔物が溜まる云々は俺を引っ張り出す為の嘘だった、って言う事も有り得そうだけど。
まぁ、そうだったら、一通りやり終わった後で、あいつらにはあのブートキャンプが天国に感じられるであろう、最初に企画していた狂行軍を受けてもらうとしようかねぇ……。
当時の俺達ですら多少きつめな内容だったから、生きて帰れると良いねぇ……。
なんて事を考えていると、案の定と言うかなんと言うか、俺の腰にぶら下げている長剣と、男装していてもスタイルが良いと分かるメフィスト目当てに絡んでくる輩が出て来た為に、碌にそちらも見ないままに適当に伸して放置しながら、奥の方にあるダンジョンの入り口へと向かって行く。
すると、その入り口の脇には受付の様なブースが設置されており、そこで人の出入りを記録しているとの話を予め受けていた俺達は、取り敢えずそこで入場の為の手続きをしてしまう事にする。
「……はい、これで、貴殿方の入場が記録されました。それにより、自動で踏破した階層がギルドカードの方に表示される事になりましたので、もし新たにパーティーメンバーを募集される場合は参考にすると良いでしょう。それと、内部では『何があっても』我々ギルドとしては責任は持てませんので、先程の様な大立回りは自重した方が良いですよ?何せ、ダンジョンの中でなら死体すら容易に処分出来るのですから、襲われたとしても無念を晴らしては貰えませんからね?
……もっとも、先程のソレで既に目を付けられてしまった様子ですので、悪いことは言わないので今日はもう帰った方が良いですよ?初日から、未帰還者リストに載りたくはないでしょう?」
そう言いながらチラリと視線をずらすギルドの出張職員。
その視線の先には、あからさまに良からぬ事を企んでいます!とでも大声で宣伝している様な表情をしながら、数人で固まってこちらを睨んでいる破落戸……もとい冒険者の姿があった。
「……まぁ、あの手の手合にはなれているから、多分大丈夫じゃないかな?この手の大型ダンジョンは初めてだから、取り敢えずこれから潜ってみたいのだけど、大丈夫かな?」
「そう言われるのでしたら、こちらには止める権限は有りませんので止めませんし、別にこうして許可を取っている以上は止められませんよ。まぁ、死なない様に頑張って下さいね?
……こんな事になるなら、まだ軍の人達が居てくれた時の方がマシだったからなぁ……」
後半の、思わず溢れたのであろう呟きを背中に受けながら、俺達に集中する『鴨が来た』と言わんばかりの視線を悉く無視して、ダンジョンの入り口へと向かって行くのであった。
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