第122話
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「……んで?何時になったら説明してくれるんだ?幾ら俺でも、ココは結構寒いんだけど?」
「もうそろそろ到着するハズなので、もう少しだけご辛抱を。
……しかし、この状況で『結構寒い』で済む時点でどうかと思うのですが……?」
魔王と言う重責(背負っている様には見えなかった?ホットケ!)を下ろし、自宅にて束の間の平穏に浸っていた俺は、突如現れたジョシュアさんの手によって自宅の転移魔方陣から複数の転移魔方陣を経由した結果として、吹雪によって視界が真っ白に染まっている旧ノーセンティアに在る迷宮街ラビリント……ではなく、その手前の名前も知らない寂れた村へと到着する。
……だが、予め自身で行動の予定を立てられていたジョシュアさんは自分用の防寒具その他諸々を既に用意していたが、部屋着にプラスしていつものロングコート型の防具を装備しただけであった俺は、到着時から吹き荒ぶ吹雪によって身体を震わせていた。
「……普通は、そんな格好でこんな天気に出歩けば、ものの数分程度で氷像と化すんですけど、良く無事でいられますね?何か魔法でも使っているのですか?」
「……意地と根性。それと、種族特性?」
元々アンデッドで、一応腐っても神様の類いだからね。そうそう凍り漬けになんてなりはせんよ。……寒いけど。
そんな感じで、片や出身地+防寒着完備にてヌクヌクニコニコと、片や意地と根性で耐えながらガタガタ震えて進んで行くと、一軒の酒場へと到着する。
そして、俺を先導していたジョシュアさんが、防寒着の懐から取り出した地図とメモとを確認し、周囲の様子と店名とを見比べて一つ頷くと、入り口の扉を押し開けて中へと入って行く。
それに続いて、俺も肩やら頭やらに降り積もった雪を軒先で振り落としてから店の中へと入って行く。
「らっしゃーい!……って、おいおい、アンタ!そんな格好でここまで来たのか!?良く生きてたな!?」
そう、愛想良く店長と思わしき人獣族のおっさん(声から推測)が声を掛けてくる。
それに対して俺も
「いや、もう死んでるよ」
と半ば冗談で返してやる。
すると
「なんだ、アンタ魔王様ん処の人だったのか?まぁ、このご時世で人族の外見してる奴なら、それ以外無いんだろうけどよ!そこから考えっと『死んでる』ってのも、強ち冗談じゃねぇのかもな!」
と豪快に笑い飛ばしながら、俺の肩をバシバシと叩いてくる。
その後も、聞いてもいないのに語られたおっさんの話によれば、どうやらこのおっさんは以前俺が解放した元奴隷の一人であったらしく、生まれ故郷のこの村へと帰って来れたのは全て魔王様(俺)のお陰であり、魔王軍(正式名称ではないが、俺が率いていた軍の通称として呼ばれている)関係者には感謝してもしきれない為に、来てくれた者にはサービスを惜しまないのだそうな。
「ーーーって訳だからよ!遠慮なんてしないでガンガン呑んでってくれよ!まぁ、アンデッドの連中が飲み食いすんのか知らねぇけどよ!」
そう言い残し、俺の肩を再度バシバシと叩いてから、適当に空いた席に座っておくように促すおっさん。
しかし、ジョシュアさんが『既に連れが入っているハズだから大丈夫だ』と返事をして、着込んでいた防寒着を脱ぎながらそれなりに賑わっている店内を見回して行く。
すると、こちらにも合図を送るかの様に手を振って来るテーブルが在った為に、そちらへと近付いて行く。
すると、その席には何処か見覚えのあるドワーフと逆三角形のエルフと目付きの鋭いエルフ、そして、糸の様に細められた糸目と常に浮かべられている胡散臭い笑みが特徴的な狐の獣人が座っていた。
……まぁ、特に隠さねばならない何かが有るわけではないのでぶっちゃけてしまうが、座っていたのは俺が散々しごいてやった訓練兵の隊長格の四人だったのだけどもね?
「……なぁ、聞いても良いか?」
「はい?何でしょうか?」
席に着く前にジョシュアさんへと声を掛ける。
「……俺って、確か『助けて欲しい事がある』から、こうして呼び出されたんだよな?」
「はい、その通りですが?」
「……じゃあ聞くけどさ?この面子が集まっていてどうにも出来ない、何て泣き言を抜かさせる程、甘い訓練をした覚えは無いし、今の今までお前さん達なら、大概の事はどうにでも出来る、って俺は信じていたんだけど、それは間違いだった、って事で良いのか?」
「……それなのですが……」
ジョシュアさん対して俺が、少々不信感と不快感を顕にして詰め寄ると、ジョシュアさんの方も何やら言いにくそうによりしながら口を開こうとしてくる。
が、そのタイミングで
「フッフッフッ!まぁまぁ、そう言わずに虐めて差し上げないで頂きたい。何せ、貴方を呼ぶように提案したのは他ならぬ私なのですからね?彼は、貴方と同じくかつて『教官』であった私の指示に従っただけなのですから、そう怒らないで下さいな。ねぇ、ジョン殿?」
何時の間にか背後に発生していた気配から声を掛けられると同時に、俺が反応するよりも早く背中に抱き付かれ、何やら柔らかな感触が背中に発生するのと同時に、シルクハットを被った上で仮面を装着している顔が、俺の肩越しに前へと突き出される。
「……メフィスト、もしかしなくてもお前の仕業か?」
「えぇ、もちろん。もしかしなくても私の仕業です。ですが、彼らが困っており、それを解決できるとしたら貴方だけである事も同時に事実ですよ?フフフフフ」
「……お前がいても、か?」
「えぇ、『私がいても』、です」
しばらく俺とメフィストとで視線を合わせていたのだが、嘘は言っていない様子だったので視線をずらすと、ため息を一つ突いてから椅子を引き、席に着く。
「……それで?何がどうなっていて、何で俺の手を借りたいのか、全部説明してもらうからな?」
そう言いきった俺を見て、安堵のため息を溢し、それまでの緊張していた雰囲気を緩める五人と、何が楽しいのかは定かではないが、それまでよりも一層楽しそうな雰囲気を濃くするメフィスト。
そんな両者を見て、やっぱり厄介事の類いだったかなぁ……と、今からでも断れないかな?と検討を始めるのであった。
******
「……つまりはアレか?ダンジョンの在る迷宮街で最近悪質な冒険者が増えてきていて、その対応に苦慮している、と?」
「……えぇ、そうです。陛下のお力により、人族が一掃された為に、高位冒険者が著しく減少し、迷宮街にあるダンジョンに魔物が溜まる様になってしまいました。
それ自体は、我々ユグドラシル側でも軍を出し、頻繁に間引きを行ってはいたのですが、それでも以前の様にはいかず、結果として冒険者ギルドの方に協力を仰ぐ事になりました」
「俺達も、戦闘能力じゃあ負けはしないんですが、ダンジョンの特殊な環境下だと、どうしてもそれ専用のノウハウが蓄積されてる冒険者共の方に軍配が上ってしまいまして、その結果として奴らが調子づく事になりまして……」
「儂らに対して横柄に出てくるのであれば、幾らでも対応の仕方はあったのじゃがのぅ。しかし、あやつらが強くでておるのは一般人に対してで、儂らもそれに対して注意することしか出来ぬのじゃよ」
「あいつらは自分達の流儀にしか従わない連中だからねぇ。僕としては、問答無用で叩きのめしても良いと思っているんだけど、そうすると今度はあいつらに手を引かれても困っちゃうから、どうしようか?と、ねぇ……」
「連中曰く、『自分達よりも深くまで潜れたならば、言うことを聞いてやる』と言っておりますが、現在の規約では軍関係者やそれに準ずる立場の者はギルドに登録出来ません。更に、ダンジョンに潜るには、基本ギルドからの許可が必要ですが、我々は『ギルド組員ではないから許可できない』との返答しか返って来ないのです!」
「……そう言う訳で、私達の様に、過去に登録していて、彼らに協力出来る人材が必要だった、と言う訳なのですよ。理解していただけましたか?ジョン殿?」
「いや、『理解した』か『理解していない』かで言うなら、確りと『理解はした』けどさ?だったら外にいる時に力ずくで捩じ伏せてしまえば良かったんじゃないのか?お前さん達なら、楽勝だろう?」
その俺の言葉を、苦い顔で受け止める五人。
「……えぇ、まぁ、やればほぼ確実に捩じ伏せる事は出来ると思いますが、それを一応とはいえ『国』に仕えている立場の私達がしてしまうと……」
「……まぁ、不味いわ、な……」
それで、既に公人からは退いている俺と、元から束縛される事を嫌って公式な地位には着いていなかったメフィストに白羽の矢が立った、と言う訳か……。
そんな事を考えながら、ジョシュアさん達にチラリと視線を向けてみる。
……まぁ、やっぱりと言うかなんと言うか、自分達でその気になれば処理できる事柄を、俺に押し付ける事に対する罪悪感と、万が一断られた際の事を考えての悲壮感が滲み出る様な表情をしてる。
……そんな顔されちゃぁ、断れんわ、な……。
「……分かった分かった。やってやるからそんな顔するんじゃない!取り敢えず、現地でのサポートと、ココでの飲み代はお前達で持てよ?」
根負けした俺がそう返事をしてやると、あからさまに安堵したような表情を浮かべ、露骨に嬉しそうな雰囲気を醸し出し始める。
そんな、元教え子達に呆れながら俺は、偶々近くに来ていたウェイトレスに注文を着けるのであった。
ちなみにこの後、財布を空にされて泣き崩れる五人組が出るのだが、それが彼らであるのかは、想像にお任せする。
次回から、主人公とメフィストによる迷宮街蹂躙劇(笑)が始まります。お楽しみに
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