第13話
いよいよ進化します。
※『転移者の特性』を『転生者の特性』に変更しました。
この世界の『進化システム』とでも呼ぶべき存在は困惑していた。
これはある役目に従い変化させるだけの装置であった。
『より強きモノへ』
ただそれだけを指標に稼働する一つの歯車だった。
それに感情など存在せず、ただただ条件に合致するモノへと引き上げるだけだった。
だが、ある時一つの問題が発生した。
それはとあるスケルトンを進化させようとした際の事だ。
それは直感的に覚った
これは進化させると逆に弱くなる、と。
今までそんな事は一度も起きたことは無かった
故に戸惑い、混乱した。
このスケルトンは幾つかの要因が重なった結果、ステータスが高くなりすぎている。
通常の進化方法では、『スケルトン』からの進化先では、逆に弱体化してしまう。
それはシステムとしては到底看過出来ない問題である。
では、ステータスに見合った存在に進化させるか?
しかし、それも不可だ。
進化システムとは、一定の段階を踏まないと高次には至れないように出来ている。
それこそ、人が小・中・高と順に学校を卒業し、その後で大学へと進む流れと同じである。
勿論、ある程度であればスキップも可能ではある。
しかし、今回の問題をそれで解決しようとすると、幼稚園卒園からいきなり大学院へと入学するようなものであり、到底認められるモノではない。
他にも手が無い訳ではないが、どれもこれも一時的にでもステータスの低下は免れない。
よって、このスケルトンには例外的な措置を取る事に決定した。
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【進化が完了しました】
【ヘルプ機能に情報が追加されました】
【ステータスが更新されました】
「んあ?」
突然、頭の中(?)に響いたアナウンスで意識が覚醒する。
どうやら無事に進化を終えたようだ。
とりあえず、現在の姿形を確認する為、部屋にある姿見の前に移動する。
……何でそんなものがあるのかって?
知らん。これもゴブリン共が作ったんじゃないか?
……本当にゴブリンだったんだろうな、アイツら……。
姿見に写ってみるとそこには、全身を紫黒の重厚な板金鎧で覆い、腰から長剣を下げた『騎士』っぽい姿があった。
頭部はフルフェイス型の兜を被っていたが、不思議と視界が遮られる事も無く、周囲を見渡せている。
ついでに中身も見ておくか、とバイザーを上げて確認する。
するとそこには、自身の感覚では少し前にも姿見に写した、少し金属光沢を帯びた骸骨が写っていた。
……はて?もうちょっと派手に変化すると思っていたけど、意外と変わらないもんだこと。
あれか?まだスケルトン系列から脱出出来て無いのか?
解・無事に進化完了、おめでとうございます主様。
うおっ!びっくりした。
いきなり声かけるなよ、まったく。
そう言えば、お前さんもなんか追加されたらしいけど、そこんとこどうよ?
解・これは失礼しました。色々とアクセス出来る情報が増えた様なので、今まで以上の活躍を約束出来ます。
ところで、お加減の方は大丈夫ですか?
あん?……とりあえずは何も無いけど?
むしろ、前より身体が軽いような気もするがね?
……鎧付いたけど。
解・それは重畳でございます。
何でも、進化直後は魂と身体のバランスが合わずに、変調される事もあるようです。
見たところ、スケルトン・ナイト系列に進化なされたようですが、ステータスの確認はなさいましたか?
おっと、まだだった。
んじゃ確認してみるか。
【ステータス・オープン】
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名前・未設定
種族・スケルトン(死霊聖騎士)
レベル・1/300
スキル・剣術、剣術【二刀流】、闇魔法、闇魔法【剣】、魔力操作、クリティカル、骨食、魔石喰い、思考加速、遠斬、死霊術、簡易鑑定New!、光魔法【浄化】New!
ギフト・【ヘルプ機能】、【成長促進】、【?】、【?】
特性New!・スケルトンの特性、死霊聖騎士の特性、転生者の特性、???の特性
残進化可能回数・2
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……なあ、ヘルプさんや?
解・……何でしょうか?
なんか、ステータスが変な事になってないか?
解・……そうですね。
なんぞこれ?
解・……新しく追加された情報によりますと、種族の方は、不測の事態が発生したらしく、『新しい身体への進化』ではなく『もとあった身体に進化予定の身体を上乗せ』した状態らしいです。
特性に関しては、それぞれが持っている性質……の様なもの、らしいです。欄にあるようにスケルトンであれば『スケルトンの特性』、主様の様な転生者であれば『転生者の特性』をそれぞれ獲得するようです。
……ふーん?ところで、この種族にある死霊聖騎士ってどんなのだ?強いのか?
解・……そうですね。人間が定める処の魔物のランクでB+からA-クラスのかなり上位に位置する魔物になります。アンデッドの共通の弱点である光魔法【浄化】に耐性があり、討伐するには個人ではかなり厳しく、通常は複数人数で囲みこんでそのうち半数が生存できたら大戦果、と言った具合です。
ちなみに、ゴブリン・スケルトン共にランクはF。新人冒険者の練習台になります。
お、おう……。
んじゃ、このスキルの鑑定だとかは?
解・スキル『簡易鑑定』は、対象にしたモノの情報を簡単なモノであれば解析出来るスキルです。
光魔法【浄化】は対アンデッド・対汚染等に特化した魔法になります。
……そんなん使ったら俺自身まで浄化されんじゃなかろうな?
最後の特性ってのはどんな感じなんだ?
解・『スケルトンの特性』はアンデッドの基本、状態異常無効化と光魔法【浄化】への-耐性
『死霊聖騎士の特性』は光魔法【浄化】の無効化
『転生者の特性』は、かの神が仰っていた『界渡りを経験した魂は身体能力が高くなる』との発言から推測すると、ステータスの上昇効果ではないかと予想されます。
最後の一つに関しては……すみません、解りません。
まぁ、最後のは仕方あるまい。
多分、俺個人の特性とかそんなとこだろ?
とりあえず外出るべ。
解・その方が良さそうですね。
そんなやり取りの後、外に出る為に玄関へと移動したのだが、肝心の扉が開かない。
すわ敵襲か!と混乱仕掛けた処で、入った時に闇魔法でガチガチに固めた事を思い出した。
……どうやって開けようか?
進化はしました……進化は。
次回、説明回(予定)




