表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて魔王へと至る最弱魔物《スケルトン》  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/139

第103話


◇人類圏統一国家サンテレル


その日の大会議場は、重苦しい沈黙に包まれていた。

何時も通りであれば、自分の利益のためであれ、他人の安寧のためであれ、とにかく何かしらの議論や怒号が飛び交い、少なくない議題を消化するために、司会進行の係りの者は、額に汗を流しながら半ば叫ぶ形になりつつも、必死に声を枯らして進めているのだが、その日は、いや、『ここ一週間』程は、少なくとも、声を張り上げる必要性が感じられない程度には、この大会議場は静まり返ってしまっているのだ。


そんな静寂を無理矢理にでも破ろうとするかの様に、半ばやけくそとも取れる様に声を張り上げながら、今回の……いや、今回『も』ここ一週間変わらない議題を、議会へと提出する。



「……では、現在の敵勢力、いえ、『魔王国連合軍』からの被害報告からお願いします」



そう、この議会で連日議題として上がっている事はただ一つ。

約一月程前に建国を宣言し、それと同時に宣戦を布告してきた魔王国を盟主とした、仮称『魔王国連合』から受けた被害についてだ。


「クソッ!!そんなもの、分かりきっているだろうが!!」


そう怒鳴りながら、円形になる様に整えられ、会議場へと据え付けられている机をドンッ!!と殴り付けつつ、椅子を蹴り倒して立ち上がった男が吠える。


「あの化け物共が宣戦を布告し、そして戦端が開かれてから、こちらにどれだけの被害が出ているのかは、わざわざ説明されなくても分かっている事だろう!!そして、それが日一日毎に、どれだけ広がっているのかも!!」


そして、そこで一旦口を閉じ、そのままセリフを終えてしまいたい、と顔に書いた様な表情をしたまま、絞り出す様に、こう続けた。


「……そして、我々が、あやつらに、一切の痛痒(つうよう)を与える事すら出来てはいない事も……」


そう言い切ってから、力尽きた様に椅子へと崩れ落ちてしまうが、それも無理は無いのかも知れない。


現状として、彼らがここまで沈み込んでいる理由を説明するには、この会議場で一月前に起きた事を説明する事が、一番の近道となるだろう。




******




それは、丁度一月前の、とある議題が一応の決着を見せ、次なる議題へと移行しようとしていた時だった。

その時の司会進行が


「では、次なる議題ですが……」


と、予め決められていた順番に従い、議題を取り上げようとしていたのだが、それに割り込む様なタイミングで、唐突にそいつは現れたのだ。




「フフフッ、では、次は私からで宜しいでしょうか?」




そんな声が唐突に、それまで騒がしかった会議場へと響き渡り、誰も居なかったハズの中心部に、突然燕尾服を纏い、仮面を被った男が現れたのだ。


「貴様!何者だ!」


そう誰何(すいか)の声を上げながらも、ほぼ反射的な行動にて、不振人物の排除へと動きをみせ、そのまま躍りかかる衛兵達。

この議会に集まる者達は、いずれもサンテレルの運用には欠かせない人物である事もあり、そのために警備の衛兵達には、生え抜きの精鋭のみが就くことを許されている。

故に、その場に居た者達は、出席者であれ衛兵達であれ、突然現れた不振人物が取り押さえられて、事が終息するであろうと想像していた。

だが、実際には、そうは行かず、彼ら衛兵達を迎えたのも、不振人物を捕らえた事による賛美の笑顔や報酬ではなく、捕らえる対象であったハズの不振人物による嘲笑と


「……やれやれ、期待外れでしたな、これでは」


と言った、心底からの残念そうな声だけだった。


もっとも、攻撃自体を認識する間もなく、気付く前に一撃で致命傷を受けた彼ら衛兵達が、それを聞き取れたかどうかは、定かでは無いが。


そんな彼ら衛兵達や、頼りの衛兵達を一撃で殺られて呆然としていた出席者達に対して、先程以上の妨害が入らない事を確認するかの様に見回し、静まり返った様子に満足した様に頷くと、最初に現れた場所に立ったまま一礼し、己の身分と目的を語り出した。


「さて、皆様。不粋な(つわもの)モドキ(・・・)がようやく退場しましたので、この辺りで自己紹介をば一つ。

私はメフィストフェレス。かの魔王陛下にお仕えする悪魔にして、この度魔王国の側近に就任させて頂いた者です。以後お見知りおきを。

そして、本題なのですが、我主たる『魔王』ジョン・ドウ陛下より、二つ程皆様へお知らせしなければならない事を伝えられております」


そして、そのメフィストフェレスと名乗った悪魔は、ここ一年程の間に、幾度か議題に上がり、討伐軍を差し向けていたのだが、その度に国境付近に発生しているらしいアンデッドによって阻まれ、未だに成し遂げる事が出来ずに居た、東の地を統一国から簒奪した魔王の名を出し、その魔王が東部領域を己が領地として建国を宣言したこと、その宣言を、南部の獣人共の国と北部の亜人共の国が共に支持する方針である事、そして、それらの国が同盟を結び、統一国へと宣戦を布告する事を宣言したのだ。


「……さて、『お使い』も終わりました事ですので、私はこれにて。次にお会いする時は、戦場にて。では」


「ま、待て!」


そう、言いたい事だけを一方的に言い終わったその悪魔は、静止の声を無視すると、そのままフッ、っと消えてしまった。

まるで、最初からそこに居なかったかの様に。




******




そして、メフィストフェレスを名乗る悪魔が消えてから、その言葉が事実であるのかを調査するために、四方に人員が放たれ、そして、南部・北部の両方が既に陥落し、それぞれの領地とされていた事。

その影に、どうやら魔王が関わっていた事。

三方向から、既に進軍が進んでいる事。

そして、それらの軍が通った後には、ただの一人も生き残りが居ない、皆殺し状態になっている事も。


それらを受けた議会は派兵を決断。即座に100000単位での軍勢を三つ組織し、軍内部でも指折りの実力者達を指揮官として任命した上で、それぞれ西を除いた三方へと派遣したのだ。


侵攻してきている三つの軍は、多くても40000程度であり、魔王本人が率いていると思わしき軍勢はおそらく30000を切る程度しか居ない、と斥候達の調査によって判明しており、それのお陰で、圧倒的に数の差があり、そして、1000人単位で『英雄』と呼ばれる域に到達しているSランク冒険者や、それに匹敵するだけの強者達を投入していた事もあり、彼ら『討伐軍』は、確実に残忍な侵略者達を返り討ちにし、必ず魔王や、それに賛同して動いた蛮族の王達の首を引っ提げて凱旋してくる、と、そう誰もが思っていた。



だが、現実は、人族にとって優しくは無かったのだ。



『討伐軍の壊滅』


その知らせが首都へと連続して届き始めたのが、現在から数えて、丁度一週間前の事であった。

そして、それと同時にもたらされた情報は、彼らを絶望の淵へと叩き込むのに、十分過ぎる程の威力を持っていたのだ。


敵へと撃ち込む魔法……相殺され効果が無い


敵への直接攻撃……並の武器では、武器が砕ける


英雄達の直接戦闘……敵幹部級に歯が立たず


戦闘結果……敵・損耗はほぼ0、討伐軍・生存者は伝令を含めて、三軍共に数名


それらの結果を受けた上、毎日の様に追加で伝えられる被害報告によって、議会は現在、このように沈黙へと包まれていると言う訳なのである。


「……降伏し、自治を認めて貰うことは、不可能だろうか?」


そう、一人が発言すると、それに対して、


「侵略者に対して媚びを売り、下手に出よと言うのか!」


と即座に反論が出てくるが、それを冷ややかな眼差しで見つめる発言者。


「……では、お聞きするが、それ以外にどうする事が出来る、と?」


「そんなもの、徹底的に戦って勝てば「出来ますか?」……何?」


「ですから、『勝てるのか?』と言っているのですよ、私は」


何を!と反射で反論しようとする者を手で制しながら、比較的現実が見えていると思われる彼は、そのまま続ける。


「確かに、私達には、まだ戦う力は残っています。予備兼防衛戦力として残されている100000の兵力と、世間には秘匿されている、一般的に言われているSSSランク冒険者達を上回るだけの力を持った、言わばEXランクの者達を使えば、確かに『戦う』だけは、出来るでしょう。

……しかし、あの報告にあった通りの戦力を、全ての軍勢が備えていると仮定してみれば、私には到底勝ち目が有るようには見えない。で、あれば、ここはこちらの傷が、これ以上深くなる前に降伏し、力を蓄える方向へと舵を切るべきでは無いでしょうか?流石の魔王も、降伏してくる相手、しかも我々高貴な血族の者であれば、わざわざ手を掛ける事は無いと思われますが、如何でしょうか?」


そう言い切って議会をグルリと見回すと、反対を唱える顔は見受けられず、決を取れば、その案は可決されることになり、降伏の使者が出される事になった。


しかし、彼等は一つ勘違いしていた事に気付いて居なかったのだ。


そう、彼等は、魔王が『土地を欲して攻めてきている』と思い込んでいたのだが、そうなのであれば、討伐軍や途中の街にて、文字通りの『皆殺し』をする意味がない事に気付けていなかったのだ。


そして、彼等は、白旗を上げて交渉に向かったハズの使者が、アンデッドにされて戻って来た事で、かの魔王の目的を知ることになる。


『人族を根絶やしにする』


ただそれだけを目的に行動する魔王に対して、降伏は無意味であると悟らされた統一国は、この段階に至ってようやく、王祖たる英雄、建国の覇王が残し『最後の最後、国が滅ぶ瀬戸際まで使うことを禁ずる』と遺言でも言い残したと伝わる、禁断の遺産を使うことを決定したのだった。

統一国の見解で魔人国について出てこなかった理由ですが、完全に魔王国の一分であると勘違いしていた為です。メフィストが伝え忘れた訳では有りません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めてみました クラス丸ごと異世界転移~無人島から始まる異世界冒険譚~ 宜しければ、こちらもお願いしますm(__)m
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ