第102話
駄女神回です
◇とある神域
ここは、主人公をあの世界へと送り込み、自身がしなければいけなかった『世界を管理』する仕事を、サボるだけでなく、暫くの間放置していた結果である、『人族の増幅』の尻拭いをさせている、諸悪の根源にして、ある種の邪神・魔神の類いである事がまず間違い無い、かの駄女神が住まう神域である。
そして、その神域は、現在発生している『天変地異の前触れ』に等しいソレに対して激震し、恐れ戦いている状態になっている。
ソレについて、何かしら知っていそうだと思われる駄女神付きの下級神に対し、ただただソレを遠巻きに見ていたモノ達の中から、声をかけ、問い掛けてみた『勇者』が現れる。
「……な、なぁ、あんた。あんた確か、あの『最高神』様のお付きだったよな?何か、原因になりそうな事に、心当たりは有ったりしないか?」
「……ええ、一応は、『それらしき事』に心当たりは無くも無い、ですね。まぁ、直接仰られていた訳では無いので、それが原因で合っているのかは、分からないですけど」
そう答えるのは、今までに何度か、『世話役の下級神』として登場していた苦労人(神?)のお姉さん。
尚、先程出てきた『最高神』と言うのが、かの駄女神の事である。……実は駄女神偉かったのである。
「そうか、一応であれ、心当たりは有るんだな?」
「ええ、本当に、『多分アレ……かなぁ?』って程度のモノですが、一応は」
そうか……、とこぼしつつ、騒ぎの現況であり、これまでの傾向からは、あり得ない行動を取っているソレへと視線を向ける下級神。
その視線の先に有ったのは……
「……既に死んでいる人族の魂を洗浄し、転生。行き先はその他種族。人族全体の出生傾向を調整……完了。これで今後は彼を送り込んだ時程、極端な事にはならないでしょう。ついでに、種族としての強度も下げておきますか。少なくとも、後十世代間では、特異個体の発生は起きないハズですので、あの世界の人族全体が弱体化して行く事になるでしょう。……良い気味です。私と彼の手を煩わせたのですから、この位のペナルティは当然でしょう。むしろ、そのまま滅んでしまっても構わないのですよ?フフフフフフ……。
……さて、後は……」
……そう、その視線の先に存在し、神域全体へと激震と戦慄をばら蒔いていたのは、普段から『絶対』に仕事をせず、それらのほぼ全てをお付きの下級神へと丸投げし、彼女では処理できない案件が有ったとしても完全スルーしてきた事で、自身の権能でも使って天罰や天変地異等を強制的に引き起こし、無理矢理にでも世界の運用プロセスへと空白を作り、そこを踏み台にして裏技的にアクセスする、位の事をしなくては、強制介入すら出来なくなっていた為に、主人公を送り込んでどうにかしようと企んでいた、この世界の『最高神』、通称駄女神が、一抱えも有る球体の前に座り、あちらこちらを触りながら世界のバランスを調整すると言った、所謂『お仕事』をしている姿であった。
……紛れもない、天変地異の前触れであろう。
そう思ってしまう位に、この駄女神が仕事をしていると言う事態が、大変希少で貴重で珍しいのだ。
それこそ、年単位で世界球(駄女神が弄っている球体。世界そのもの)の前に座らないのは当然の如くであり、触るのですら、数十年に一度有れば多い方である、と言えば、理解してもらえるかと思われる。
それ故に、世界球の表面はピカピカ(誰も触らないので指紋がつかない)なのに、球体の上部には埃が積もっていると言った、ある種不思議な状態が出来上がってしまっていたのだが、それも過去の事。現在は文字通りにピカピカに磨き上げられ、表面には埃処か塵一つ付いていない状態となっている。
……おそらくでは有るが、世界球の前に腰掛け、作業をしている駄女神の横に、水の入ったバケツと汚れた雑巾がセットで置いたままになっている事から鑑みると、おそらく作業を始める前に、自らの手で綺麗にしたと思われるのだが、その事実すら、周りの神々へと恐怖を植え付ける事に、一役買ってしまっていた。
そんな、周囲へと違和感をブチ撒けていた駄女神だったが、どうやら行っていた調整が一段落したらしく、手を組んでグィーっと大きく伸びをしてから、首をコキコキと鳴らして立ち上がった。
そして、周囲の神々が自分へと視線を向けていた事に、今漸く気付いたらしく、驚いた様な表情を浮かべるが、そこでお付きの下級神が前に出てきた事もあり、彼女へと声を抑えながら問い掛けてみる事にしたようである。
「……あの、皆が私の事を見ている様に思えたのですが、一体何か有ったのですか?」
……どうやらこの駄女神、本当に理解出来ていない様子である。
半ば呆れながら、珍しく自分から仕事をしていた様子だったので、何か有ったのかと様子を伺っていたのだ、と説明される。
「……と、言う訳でして、何か有ったのですか?は私達のセリフなのですが、本当の処何か有りましたか?」
その説明に、少々気まずそうにしながら、誤魔化す様に笑みを浮かべる駄女神様。
「いや、ね?彼が本腰を据えて、人族への宣戦を布告して、全面戦争を吹っ掛けたでしょう?それのお陰で、こうしてこちらから干渉出来る事が増えましたから、少しでも彼がやり易い様に調整しておこうかなぁ、と」
「……それで?本音は?」
「今回の戦争で、私がお願いした『条件』は満たされるハズだから、その時に一度会いに行こうかと。
……その時に、私もきちんとお仕事してたんです!って言える様にしておきたい、かな~なんて、ね?」
そう、指をクニクニしながら語る駄女神に、お付きの彼女は溜め息を一つ付いてから、仕方がない、とでも言いたげな表情を浮かべながら、会話を続ける。
「……まぁ、さすがにアレだけの尻拭いをさせているのですから、直接礼の一つや二つは言わねば、神としての『品格』を疑われかねませんからね。……只でさえ、彼からは『駄女神』等と呼ばれているのですから、そのくらいはして当然とも言えなくはないですね」
「ちょっ!ソレに関しては、こんなオープンスペースで話さないで下さいよ!」
「それは失礼しました。それで?お仕事はもう終わったのですか?」
全く悪びれた様子もなく、取り敢えず謝ってみた、と言った感じ側アリアリと伝わってくる様な様子の下級神だったが、ここぞとばかりに、普段自分へと押し付けられている仕事の現状を確認してくる。
「ええ、大体は終わりましたよ?後は、あの戦争自体が終息した後の調整と、そこで生まれるリソースを、どう割り振るか、と言った処でしょうか?まぁ、今出来る事は基本的に終わらせてしまいましたから、後はどうにかなるでしょう」
そう言って、久し振りの作業に肩が凝ったのか、グリグリと回して解そうとする駄女神。
それを、乾いた笑顔で眺める下級神だったが、キッチリ終わらせているのであれば、自分が文句を言える立場では無いので、込み上げてくるナニか(殺意・悪意・怒り・嫉妬その他諸々)を圧し殺しながら、でしたらばお茶にでもしましょうか?と問い掛けると、それに笑顔で答える駄女神様。
そのまま下級神の後ろに付いて行こうとしたのだが、その時まだギリギリ視界の中に入っていた世界球に、一瞬では有るが、あまり望ましく無い反応が出ていた様な気がした為、反射的に世界球へと向き直る。
「どうなさいましたか?」
そんな駄女神の行動に、違和感を覚えたのか、先に行きかけていた下級神が問い掛けるが
「……いえ、何もなかった様です。ただの見間違いでしょう」
と返事をして、部屋を後にしようとする。
そう、ただの見間違いのハズなのだ。
あの世界では、他の世界が有ると言う事実は知られていないのだから、最高神である自身が行わない限り、あの反応はあり得ないのだから。
そう、他の世界から、何かが召喚された、等と言う様な反応は。
そう思った駄女神は、これを記憶の彼方へと押しやるのだが、それを後で後悔する事となる。
次回でキャラ紹介を挟んでから、新編へと移行します




