第101話
俺達と共に、ノーセンティアへと逆侵攻を掛けたユグドラシルが勝利し、あの戦争が一応の終結を見せて、少ししてから旧イストリアへと帰還し、そして、それから一月程が経過しようとしていた。
あの後の流れとしては、まず捕虜として捕らえていたノーセンティア領主を、ユグドラシルの女王として、ティタルニア本人が、直々に公開処刑を行い、ソレと同時に、俺達の協力が有った為に今回の戦争を制せた事、まだ人族の戦力が残っている、中間の街(ユグドラシルと首都の間は、まだ陥落していなかった)等を順次攻略して行く事、そして、それらを必ず成し遂げ、自分達の手で北部全域を掌握すると宣言を出し、奴隷に落とされていた人々を救済する事を、皆に誓ったのだ。
……まぁ、捕虜にして処刑云々以外は、俺からの指示でやらせた事が大半だったけど、あまり気にしない方向で行くとしておくか、うん。
その後、正式に俺達とユグドラシルとの同盟が結ばれる事となり、ティタルニアにも、アニマリアを助ける際にレオン(アニマリアの国王)と結んだのと同じ条件で【契約】をしてもらった。これで、いつぞやみたいな騙し討ちも防止出来る(チクりと言ってやったら、冷や汗を滝のように流していた)し、こちら側は既に条件(ユグドラシルを救う)を最低限満たしているから、ティタルニアの方も、確実に履行するしか無くなっている。……何故か、あまり嫌そうにはしていなかったけど。……何故だろう?
そして、それと同時に、アニマリアや魔人国を巻き込む形で通商条約も締結され、それから一月近く経った現在では、三国間+α(まだ俺達の所は『国』では無いからね)での物流が出来上がりつつある。
それぞれ、魔人国からは、海に面している立地を利用して塩や海産物、更に、基本的には『魔境』の類いとして認識されているらしい『死の森』由来の様々な素材を。
アニマリアからは南国特有の果実や米(量産化に成功、それを聞いてシルフィがまた変な踊りを踊っていた)と言った特産品や、胡椒を始めとする各種香辛料を。
ユグドラシルは、北部でしか生息していない動植物の素材や、三国内では最大規模であると確認されているダンジョン(ユグドラシルで魔物が発生しにくい原因……かも?)から産出される魔石や魔道具(ダンジョン内で稀に採れる)。それに加えて、通商に必要な『転移魔方陣』の設置を担当。
そして、俺達は、俺が元の世界の知識を元に作り出したアレコレ(電化製品やそれに準ずる便利グッズの様な魔道具、実戦的な魔道具、元の世界の調味料、等々)を主に販売すると同時に、今だに国力の回復や、兵力の拡大が出来ていないユグドラシルへの兵力提供(アンデット部隊による国境警備や練兵教官等)、アニマリアへの技術提供(新たな料理法の伝授含む)等を行っている。
……魔人国?
彼処は、ホラ、そこまで切羽詰まって無いし、最初期の段階で、既にガッツリ助けてあるし、王様とも友達だから、ね?
……他の二国は、トップが義理の家族だろう?だとかな突っ込みは無しで。
他にも、俺達と同盟を結んだ国達が、本格的に人族の貨幣から、俺達が作った魔王貨幣に切り替える事を決定したり、ギムリ達への報酬として『米酒』を渡してみたら、ユグドラシルでも生産してみたい!との要望が出て、それに向けての品種の選定が行われたり、ノーセンティアの領主が処刑されるちょっと前に、謎の執事っぽい爺さん(対応したメフィスト曰く「そこそこ強かった」らしい)が救出目的で強襲して来た(しっかり返り討ちにされたらしい)り、と色々有ったが、流石に一月近く経てば、そこそこ落ち着きも取り戻しているらしく、最近はあまりその手の騒動は耳にしていない。
……まぁ、俺的には、そろそろレオンとティタルニアには、【契約】における『対価』を支払って貰いたいかなぁ、何て考えている事も有るから、そろそろ聞くだけ聞いてみるとするかね。
「あー、テステス、こちら『魔王』こちら『魔王』。レオンさんや、聞こえますか?どーぞー?」
唐突では有るが、本人より『何時でも連絡してくれて構わない』との言質を頂いているので、直接通信を繋いでしまう。
『ん?おお!ジョン殿か!久しいな!娘とは、上手くやっておるか?アレは我に似てがさつだからな、キチンと出来ておるのか不安での?』
「たったの一月で『久しぶり』になるのかね?一応、レオーネはしっかりやってくれていると思うよ?俺的には。もう少しで、俺達クラス……はまだだけど、一応将軍格位とならば、段々勝てる様にも成って来たらしいしね。それに、以外と家事全般に対するスキルの高い、『高女子力』の持ち主だからね?それと、一緒にいて楽しい。
ホラ、ちゃんと役立ってくれている。むしろ、居なくなられると結構困るかな?」
『ハハッ、それならば何よりよ!それで?わざわざこうして通信してきたのであれば、何かしらの用事が有ったのではないのか?』
「まぁ、そうなんだけどね?んじゃ、本題に入るけど、例の『約束』そろそろ履行してもらおうかなぁ、と思っているんだけど、行けそう?それとも、まだ時間が掛かるかね?」
『フム?確かに、頃合いやも知れんな。一応は、我の所は準備だけは出来ておるぞ?後は細かい所を詰めるだけで済みそうじゃし、兵力自体は数も質も諸ともに向上しておるからの。こちらの方面は、多分どうにかなるじゃろう』
「フム、了解。後はアスタロトとティタルニアだけか。……確か、少し前にアスタロトから『準備完了』の連絡が有ったハズだから、実質的には、後ユグドラシルだけかね?」
『で、あろうが、彼処はまだ国力が回復しきっておらなんだからな、流石にまだ時間が掛かるのではないだろうか?』
「あー、やっぱりそう思う?……まぁ、一応聞くだけ聞いてみる方が良いかね?」
『その方がよろしかろうな』
では、と最後に挨拶してから、レオンとの通信を切り、今度はティタルニアへと『意志疎通』を繋いで話しかける。
「ヘロ~?ちょーっとお話したいんだけど、今大丈夫かね?」
『キャア!な、何事ですか!いきなり、ジョン殿の声が頭の中に!』
しかし、まだ『意志疎通』での会話に慣れていなかったのか、多少パニクっている模様だ。
「……コレコレ、落ち着きなされ、ティタルニアさんや。そう慌てては、まともに話すことも出来やしませんぞ?」
『……失礼、取り乱しました。して、ジョン殿。妾に通信とは、中々に珍しい事でありますが、如何な用件でしょうか?』
「まぁ、用件って程に大層な用事じゃあ無いけどね?例の『約束』今どんな感じ?まだまだ掛かりそう?それとも、もう行ける?」
『おお、その件でしたか。そうであれば『直ぐにでも』……と言いたい所ですが、流石にまだ時間が掛かると思われますね』
「フム……、今って、兵力とかどんな感じだったっけ?」
『おおよそでは有りますが、ノーセンティアを落とした事で解放された同胞達が、軍に入ることを希望してくれた上に、その後の掃討で解放出来た者達や、軍の活躍を知って志願してきた者達を合わせて兵数は約20000と言った処ですね。……ですが、その内で、ジョン殿的な基準で『使い物になる』兵で言いますと、あの訓練を乗り越えた彼ら500と、彼らが今鍛えている2500を含めて、約3000と言った処でしょうか?』
あちゃー、まだその程度かぁ……。
……ダメ元で、聞いてみるかね?
「……もうちょっと、どうにかなりませんか?」
『妾もそう思って聞いてみたのですが、今鍛えている者達ですらギリギリなので、流石に今すぐは無理。多少質が落ちてでも数を揃えるだけで良いならば、後一月有れば、多分5000位は増やせなくはない、と』
「……まぁ、ジョシュアさんがそう言うのならば、確実にそうなんだろう。仕方がないから、後一月は様子を見るか。でも、一応準備だけは進めておいてよ?でないと、契約違反になりかねないからね?」
『そこは万事抜かり無く。妾とて、奴ら人族に、もう一泡吹かせてやりたい事には変わりがないですのでのう。物資の類いの貯蓄は十分に備えて有りますよ?
……まぁ、肝心の戦力が今一では、有るのですがね……』
「まぁ、そこのところは最悪、こっちから増援出すから、取り敢えずやれるだけやって見て頂戴な。では、通信終了」
……さて、後一月、か……。
これで、漸く俺も『契約』を終えることが出来る、かな?
この三者間での会談が終わってから一月の後、大陸中央部に位置する『人類圏統一国』に対して、二つの通知が叩き付けられる事となる。
一つは、最近人族に対して著しい被害を与えていた『魔王』ジョン・ドウによる『魔王国』の建国と、『獣人国』ならびに『亜人国』、『魔人国』がそれを承認する事。そして、それら四国間で同盟が締結されていること。
そして、二つ目は、その『魔王国』をトップに据えた同盟国全てが、『人類圏統一国』に対して、宣戦を布告する、と言ったモノであった。
これにより、人族対魔王の戦いは、一つの節目を迎える事となる。
取り敢えず、ユグドラシル編はここまで。
駄女神回とキャラ紹介を挟んでから、人族決戦編へと移行する予定です




