第100話
『気配察知』スキルや『意志疎通』スキルを駆使して、近間の所から手当たり次第に奴隷にされていた亜人種の人々を解放していると、城へと向かって行ったジョシュアさん達に着けておいたメフィストから、連絡が入る。
『ジョン殿~?こちら『道化師』、応答を願いますよ~?』
……多分暇だからなのか、半分ふざけながら通信を入れてくるメフィスト。ちなみに、『道化師』ってのは、一応メフィストのコードネーム的なアレである。
「ハイハイ、こちら『魔王』。現在、絶賛奴隷解放中なぅ。そっちはどんな感じだ?」
我ながら適当に返事をしつつ、新たに発見した、亜人種と思わしき反応の有った建物へと押し入り、内部の人族を皆殺しにして行く。
……何?前回と言い、今回と言い、人族に厳しすぎないか?
フム?……確かに、今回の作戦では、基本手当たり次第な上、女子供だろうとお構い無しって感じだし、割りと初期の段階で門の封鎖もしてあるから、逃げ出す事すら困難であると考えても良いだろう。
もちろん、戦って勝利する、って手が有りはするけれど、ぶっちゃけた話、急造のユグドラシル軍だけならばともかく、俺達が魔改造した訓練組もいる以上、一人二人には勝てても、最後まで勝ち残って、こちらを全滅させて生き残るって事は、まず無理だろうな。
そう言う面では、確かに厳しいかもしれないね。
でも、それは別段、俺が指示してやらせている訳では無い。
あくまでそれらは、同胞である亜人種達の扱いを、直接目の当たりにした事によって知った彼ら(ユグドラシル軍+訓練組)が、自主的に行っている事なのである。
基本的に、やっていた事をやり返されているのだから、ある意味因果応報な結果と言えるだろう。
散々やるだけやっておいて、いざ自分達がやり返される番になった時に、相手に手加減してもらうのが当然だ、とは、思わない方が良いって事さね。
一応、この辺りはユグドラシルの領地になる予定なのだから、そこら辺の片付けは、自分達でやってもらうのが、一番良いだろう、って考えに基づいての丸投げなのである。
俺達が、その辺りの事を全部やっちまうと、感情面での折り合いだとかが付かなくなる可能性も高いからね。
……まぁ、俺自身が、あんまり人族好きくないってのも、有るかもしれんけど。
まぁ、何しろ、私は悪逆非道の『魔王』様ですからね。やりたい様にやらせてもらうまでさね。
そんな風に思考を遊ばせていると、メフィストから通信の催促(?)が入ってくる。
『……ジョン殿~?もしも~し?聞いてますか~?』
「悪い、聞いてなかった。で?何だっけ?」
解・……ジョシュア様との件では、あれほど気を使っておられたのに、同じ様な状態であるハズのメフィスト様には、何故こうまで適当なのですか……?
『いやはや、全くその通りですな、ヘルプ殿!最近の私の扱いが何となく雑な件について、もっと詳しく語り合いませんか?』
……おぅこら、メフィスト。
お前さん、何かしら用事が有ったんじゃあ無いのかね?そっちは良いのか?
ってか、お前さん達、何ナチュラルに会話してんのかね?どうやって、意志疎通してんの?
……いや、こいつら(異界の悪魔と神からの贈り物)ならば、割りとどうにでもしそうだから、気にするだけ無駄ってモノかね。
それと、扱いの違いについて言及するのであれば、メフィストの方が付き合いが長いし、親しいだろう?『親しさ』だとか『付き合いの長さ』だとかから来る気安さに関して言うならば、流石にメフィストよりは丁寧な対応をする事になるだろうに。
解・……それで、本音の所は?
いや、こいつなら、再度説明させても、別に良いかなぁ~?って。
『……さすがの私でも、いい加減グレますよ?』
おっと、今の会話、聞かれてたっぽいな。
そのお陰か、あいつらでの会話が始まってしまい、俺は暇をもて余す事になってしまう。……もちろん、その間も、そこらの建物を襲撃して、亜人種達を解放して行く。
そんな訳で、やれ最近扱いが雑だの、出番が少ないだの、影が薄い気がするだの二人(?)で会話していた(何故か俺には聞こえて?伝わって?いた)のだが、結構長々と話し合っていたので、少々強引に割り込んででも、さっさと吐かせるとするかね。
『……確かに、私はこんな格好をしていますが、あくまでも『紳士』ですのに、ジョン殿は事有る毎に変態変態と「はい、そこまで」何ですか、急に!今良い所なのですが?』
メフィストの抗議に便乗したのか、ヘルプも
解・そうです、今良い所ではないですか!
とか言っている。
……お前さん達、そんなに仲良かったっけか?
もしそうであったのなら、もう少し話させておいても良いかな?とは思ったが、それを許可してしまうと、まだまだ二人の間で延々と話が続きそうだったので、半ば無理やりでは有るが、通信の用件を聞き出してしまう事にした。
「『何ですか』じゃあ無いっちゅうに。何ぞ用事が有ったから、通信してきたんじゃ無いのかね?で?何か有ったのか?」
『まぁ、有ったと言えば有りましたね。ジョシュア殿達と一緒に城へと到着したのですけど、何故か番兵の姿も無く、入り口も開け放たれており、おそらく緊急時に巻き上げられる事になっていたであろう跳ね上げ橋は降りっぱなしになっておりましてね。現在、罠等の可能性を鑑みて、どうしようかの会議中です』
「……なあ」
『はい?』
「……確かに、聞いてなかった俺も悪かったけどさ?その手の重大事項は、何よりも早く伝達するべきモノじゃあ無いのかね?」
『……まぁ、そう言えばそうですが、私達が鍛え上げた彼らが、そう簡単に死ぬとは思えませんし、彼らを即死させる程に強力な罠が有るのならば、流石に外からでも分かるハズですからねぇ。いざとなれば、私も付いていますし、多分大丈夫でしょう?』
まぁ、それはそうなのだけれど、それでも心配では有るじゃんよ?
……どうしたもんかねぇ……。
俺達が行って確かめる(そのまま通ってみる。どうせ死なない)ってのが、一番確実かつ安全な手なのだろうけど、それだとあまり意味がないし、わざわざ鍛えた訓練組を、俺が信頼していないって事に取られかねないからなぁ。
そんな風に曲解する様な、心根のネジ曲がった連中では無いって事は、嫌でも分かっているけれど、さすがに不和の種をばら蒔きながら行動する趣味は無いので、その手は取れないし取らない。
……なら、どうしょうかねぇ……?と思考のループに入りかけたのだが、そこでヘルプさんが最適な助け船を出してくれた。
解・……確か、城の内部に、ハサン様が潜入なされていたのでは?まだ内部におられるかは分かりませんが、門に関しての罠が有ったかどうかを聞いてみるのは、如何でしょうか?
正に天恵!
思わず
「それだ!」
と口走り、周りで行動を共にしていた婚約者ズ(with血化粧を添えて)に変なものを見る様な目で見られてしまったが、軽く事情を説明してから、ハサンへと『意志疎通』スキルの通話を繋ぐ。
「こちら『魔王』より『暗殺者』へ。ちょっと聞きたい事が有るんだけど、大丈夫かね?」
ちなみに、この『暗殺者』ってのが、ハサンのコードネーム的なアレである。なお、他にもジャックの『槍兵』(槍が得意)と、ジェラルドの『騎兵』(ワイバーンに乗っている)が有るので、後四体分揃えようか考え中であるのは、ここだけの話。
『こちら『暗殺者』、感度良好です。して主様、聞きたい事とは、何でしょうか?』
うん、相変わらず、思念での会話では、性別がよく分からない声(?)になって聞こえるな、こいつ。
スキルの関係(『百面相』スキル)で、声質処か、場合によっては性別すら変化するせいなのか、『意志疎通』スキルで会話する際は、ハサンの場合、どちら(男と女)の状態でも、変わらずに無機質的な感じのする声として感じるのだ。
まぁ、それはさて置いておくとして、現在のジョシュアさん達の状態と、それについて何か知っていないか?と聞いてみた所、意外な答えが返って来た。
『ああ、それでした大丈夫ですよ?ソレ、やったの自分ですので。罠の類いは仕掛けておりませんし、そのまま入ってきて頂いて大丈夫です』
はい、現在の混乱の原因はこいつでした。
詳しく聞いてみた所、何でも、まだ城内にいたタイミングで騒ぎが起きてしまい(囮に馬鹿が引っ掛かってしまった為早まった)、外へと出て行く機会を逸してしまったのだそうな。
一応、俺達の方針は伝えて有ったので、極力手は出さない方向でハサンも考えていたのだそうなのだが、流石に門をガチガチに固められてしまうと、無駄に長引いてしまいそうだったらしく、取り敢えずそこだけ無力化しておいたのだそうな。
……取り敢えず、その手の重大事項は、キチンと連絡しようね?でも、お手柄では有ったから、良くできました!とハサンを労いつつ、メフィストへと情報を流して、あくまでも『事故』である事を強調して伝えさせておく。それと、ハサンらしき人物と遭遇したら、攻撃したら駄目だよ?とも釘を刺しておくかね。……何せ、ほぼ完全な工作員なのに、訓練組五人を合わせたよりも、多分強いからな、あいつ。
そんなこんなで、突入までに入らない手間が架かりはしたが、突入後は、割合と上手く事が進んだらしく、俺達が一通り廻って解放し終えた辺りで、ノーセンティアの領主を、無事に捕獲したとの連絡が入ってきたのだ。
ソレにより、この戦争におけるユグドラシル側の勝利が確定する事となったのである。




