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6話 グレーターデーモン増殖バグ

あくまでトレボーの逆さ読みというtipsから着想を得ただけであって悪意はありません。問題があるようなら、この話だけ削除します。

 本日は大学生である川崎の部屋で、ウィザ○ドリィ1をプレイすることになった。


「ずいぶん年代モノの魔法だな。動くのか川崎?」


 我輩はファミコンの実機とやらを、おそるおそる触った。


 赤と白の外装がいそうは今にも壊れてしまいそうなほど経年劣化けいねんれっかしていた。


「問題なく動きますよ暮田さん、古くなっても任天○製品ですからね」


 川崎は、鼻息を荒くしながらファミコンの本体を撫で回した。


「それほど頑丈なのか。なら任天○が武具を作ったら名店になりそうだな」

「わけのわからない例えですが、とにかくプレイしましょう」


 川崎がファミコンの電源をいれたら本当に動いた。


「なんて耐久力たいきゅうりょくだ。やはり○天堂は武器も作っているのではないか? カシナートのつるぎとか」

「あれ!? 暮田さんウ○ザードリィやったことあるんですか!?」

「いや、ないが」

「でもカシナートのつるぎ、知ってるんですよね?」

「うむ。大昔に〈ふーどぷろせっさぁ〉という技があってな、周囲の建造ごと巻きこんでモンスターを倒そうとするから、ダンジョンを修復しなければならないのだ。といっても今はモンスターが悪者ではなくなった時代なので、失われた技だがな」

「だいたいあってますね。ちなみにこちらが資料です」


 川崎は攻略本とかいう書物を開いた。ずらりと武器のリストが載っていた。驚くべきことに、どれもが魔界にある古い武器であった。


「なんで川崎は、我輩の世界の古い武器カタログを所有しているのだ?」

「ぶ、武器カタログ……ですか?」

「それと、なんで我輩の飲み仲間のワードナーが武器カタログに写っているのだ?」

「ワードナーと知り合いなんですか!? このゲーム……ワードナーがラスボスなんですけど」

「なぜ!? ワードナーは義侠心ぎきょうしんこそあるが悪さなどしないぞ!」

「じゃ、じゃあためしにターボファイルからラスト付近のデータ読みこみましょうか」


 押入れからターボファイルなる四角形の箱が出てきて、それをファミコンに繋ぐと『シナリオが、かなり進んだ状態になった』らしい。我輩もニンテンドーD○をたしなむようになってから、ゲームという名の魔法の専門用語も、そこそこ意味はわかるようになってきたが、それでもターボファイルの存在意義は把握できなかった。


 川崎いわく、ワードナーにすぐ会うための措置らしい。


 とにかく、もう少々ダンジョンの通路を進んで時間をかけないとワードーナーは出てこないというから、我輩は固唾を呑んでファミコンと繋がった画面を見ていた。


 すると画面が変化して、突然モンスターに遭遇そうぐうした。


 そのモンスターを見るなり、我輩は思わず画面をつかんだ。


「ち、父上! こんなせまい箱の中でなにをやっているのですか!」


 画面には『グレーターデーモン(1)』と表示されているのだが、彼の姿は我輩の父上にうり二つであった。


「落ち着いて暮田さんテレビ壊れちゃいますから!」


 川崎が我輩の腕にしがみついた。


「いいやきっと父上は悪い魔法で閉じこめられたに違いない! よーしテレビを破壊して救出しよう!」

「だからこれゲームですってば! 先日のドラクエのときも同じ流れやりましたよね!?」


 そういえばドラク○に姪っ子のレッサーデーモンが出ていたが、あれはあくまでゲームの世界の話といわれたような。


「つまりこれは現実で起きている出来事ではないのだな?」

「なにをいまさら……」


 川崎の頬がげっそりコケてしまった。いや悪かった真面目な川崎よ。だが身内のことになれば慌てるのが人情というものだろう。見逃してくれ。


 我輩が少々冷静さを取り戻したところで、仕切りなおしとなった。


「すまなかったな川崎。つい父上が出演したものだと思って取り乱してしまった」

「とにかく、今のレベルだとワードナーに会っても返り討ちですから、グレーターデーモン増殖ぞうしょくバグでレベル上げますよ」

「今の状況からして、父上らしき彼が増殖するのか?」

「ちゃんと説明すると、仲間を呼ばせるんです。そして最初の一体目を沈黙ちんもくさせたら、呼んだ仲間まで沈黙のままだからバグってついてます」


 マハマンとかいう魔法を唱えたら、なぜか父上が沈黙状態になって魔法を唱えられなくなった。


「待ってくれ川崎。我々の一族の沈黙耐性は高いのにどうやって沈黙させたのだ?」

「やっぱ暮田さんウ○ザードリィマニアでしょう」

「いや、初めてだが」

「嘘ばっかり。ごぞんじの通り、普通の沈黙魔法だと無効化むこうかされるので、マハマンっていうレベルを犠牲ぎせいにして願い事を叶える魔法で沈黙させるんです」

「なるほど、ドラク○のパルプンテみたいなものか」

「暮田さん本当は濃いゲーマーですよね」


 とにかく戦闘を進めていくと、なんと父上らしき彼は仲間を呼んで『グレーターデーモン(2)』に増えた。


 もしや……兄上を呼んだのだろうか。


 先日は運動会にケルベロスをつれてきてくれた律儀な兄上だが、ああ見えて一族最強だ。たとえ沈黙していようとも、親子タッグで冒険者たちをやっつけてしまえばいい。


 だが川崎がコントローラーを操作すると、なんと裸のニンジャが兄上のクビを一撃ではねてしまった!


「そんなバカな! 一族最強の兄上が死んでしまったではないか! しかも裸の無礼なやつに!」

「だからゲームですってば!」

「む、むぅ……」


 我輩がゲームという言葉に負けて引き下がると、生き残っていた父上が再び仲間を呼んだ。またグレーターデーモンの数が増えた。


 もしや……母上を呼んだのだろうか。


 しかし母上は優しいけど弱いから、戦闘向きではない。


「川崎。手心を加えてやってくれ。母上は戦闘タイプではない」

「だからゲームですってば」


 ぱぁんっとニンジャが母上のクビを一撃ではねてしまった!


「川崎! お前には血も涙もないのか!」

「暮田さんこそいくらウ○ザードリィマニアだからってゲームに入れこみすぎですよ!」


 興奮した川崎が操作ミスしたら、ついに父上の首まで一撃ではねられてしまった……。


 我輩は畳に崩れ落ちて、しくしくと泣いた。


「せめて我輩を呼んでくれれば、皆を死なせずに冒険者たちを全滅させられたのに…………ええいこうなったらウィザードリ○の開発者を問い詰めてやる! 川崎、開発者はどこにいるのだ!」

「アメリカ人ですね。名前はロバ●ト・ウッドヘ●ド」

「ふふ……ふふふ、そういうことか。すべての謎は解けたぞ川崎。本人に問い詰めるぞ」

「え、本人ってアメリカですか?」

「どうせ我輩が全力で飛べばすぐだ」


 我輩は川崎を抱えると、びゅ――――んっと全速力で飛んで音の壁を越えると、あっという間にアメリカに到着した。


 妙にゴツゴツした無機質な街だな。だがやつの隠れている場所は魔力の残滓でわかっているぞ。


 アメリカの、とあるオフィスの壁を蹴り壊して侵入すると、ロバ●トは腰を抜かして我輩を指差した。


「あぁ! グレーターデーモンの次男さん! なんで地球に!?」

「そういうお前はなにがロバ●トだ。トレボーという本名を逆さにしただけではないか」


 これには川崎がけらけら笑った。


「やっぱり暮田さんウィザ○ドリィマニアですよね、シナリオ1でワードナー討伐を依頼する王様のトレボーが、ロバートの逆さ読みだって知ってるんですから」

「そうではないのだ川崎。トレボーは我輩の世界におけるヒューマン族のバカな王子で、国庫に影響を与えるほどの無駄遣いをしたから、怒ったワードナーが次元転送魔法で異世界に吹っ飛ばしたのだ」

「それ、シナリオ5小説盤の設定がまざってるんじゃ……? ゲートキーパーがワードナーだったっていう」

「たしかに我輩の世界に実在するワードナーの役割はゲートキーパーだ。だから先日も兄上がケルベロスをこちらの世界へ転送できた」


 するとロバ●トことトレボーは、へこへこ謝った。


「故郷に帰れなくなった鬱憤をゲームシナリオで晴らしたんです。かんべんしてください」

「どうせグレーターデーモン増殖バグも、わざと仕こんだんだろう。近所の犬をいじめた罪で父上に懲らしめられたことがあるから」

「おおせのとおりでございます。しかしこの通り反省してまっとうに生きているのでお許しください」

「ふーむ、なら我輩がかっこよく活躍するゲームを作ったら許してやろう」

「今すぐ作ります!」


 ――こうして、我輩が主人公のゲームが発売された。


 なお売り上げは…………。


 あぁ、久々にワードナーと一緒に朝まで飲み明かしたい気分だ…………。

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