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62話 けも○フレンズ最終話の感想を川崎と語り合う

 深夜、けも○フレンズの最終回を、理系大学生の川崎と一緒に見届けた。


「終わってしまった……我輩は来週からなにを楽しみに生きていけばいいのだ……」


 我輩はこたつに突っ伏した。尻尾も翼もぐったりしている。


「喪失感がすごいですね……最高の最終回だったからこそ……」


 川崎は呆然としていた。


 二人分のみかんとコーヒーが手をつけられないまま放置されていた。チクタクチクタクと柱時計の音が目立つぐらいに静かだ。訂正――管理人室から「かばんち○ん生きてて本当によかった!」と花江殿の声が聞こえた。どうやら見ていたらしい。


 冷えたコーヒーを飲み干すと、なんとなく余韻も冷めてきたので、けも○フレンズの総評を語ることになった。


「一話はびっくりするぐらい期待されていなかったな。一話で切ったという反応が多かったぐらいだ」

「僕は某ニコニコの生放送で見てたんですけど、コメントは荒れてたし、満足度50パーセント前後でしたね。来週は見ないって宣言する人ばっかり。ちなみに僕は教育テレビのノリが好きなので、最初から最後までずっと楽しんで見ていましたよ」

「いつからアクセスが増えたんだ?」

「四話ぐらい……ですかねぇ……。SNSで『すごーい、君は○○が得意なフレンズなんだね!』っていいまわしが流行したのがきっかけでした。ちなみにアニメ本編じゃ使われてないセリフですよ」

「流行が一人歩きしたのか。本当にたーのしー作品だったんだな」

「ほら、かの有名なオープニングの歌詞があるぐらいですし、心に優しいアニメだったんですよ」

「書けない! 歌詞は著作権の縛りが強すぎて名言としてつかわれる有名なオープニングの歌詞が書けない!」

「歯がゆいですね。僕みたいな“のけもの”にされやすいオタクにとっては勇気をわけてもらえる一文なのに」

「あぶなーい!」


 川崎の口をミカンでふさぐと、きょろきょろと周囲を見渡す。権利者団体はきていない。大丈夫だ、ギリギリセーフ。


「ふー……気をつけてくれ川崎。まるで11話でかば○ちゃんが超巨大セルリアンに食べられてしまったときの恐怖と一緒だったではないか」

「11話はヤバかったですね。セルリアンハンターの登場からシリアス展開になって、かば○ちゃんが食べられちゃったときなんて、リアルに『え、嘘でしょ……』って言いましたからね。ネット上も大騒ぎですよ。あらゆる現象や無関係の有名どころに『○○助けて』ってお願いしてたりして」

「実は我輩も『角川助けて』と書いたメールを公式へ送った」

「…………版元に助けを求めるのはさすがにやりすぎじゃないですかね」

「そんなことはない。かば○ちゃんとサ○バルちゃんみたいな、いたいけな子たちを助けるには、やはり版元に直訴が一番だ。しかし……最終話のラストシーンからして次の大陸にもフレンズはいるみたいだが、きっとセルリアンもいるんだろうな。心配だ」


 我輩が頭を抱えて悶々としていたら、川崎がタブレットでテキストメモを展開した。


「暮田さん。二次創作に手を出すのはどうでしょうか。作者は喪失感を埋めるために、ついに人生初の二次創作に手を出したみたいですよ」

「気持ちはわかる。続きがないなら自分で書いてやるのノリだな。だからこそ今になってサザ○さんやドラ○モンみたいな、ずっと続く物語の意義を知ってしまった」

「安心感ですよね。来週の同じ時間になったら、必ず大好きなキャラクターに会えるのって」


 もし毎週けものフレンズが放映されて、何度でもかば○ちゃんとサーバ○ちゃんに会えたら、どれだけ人生が色鮮やかになるだろうか。もう一度でいいから、あの二人の冒険に立ち会いたい。


「そうだ川崎、けものフレンズの二期はあると思うか?」

「これだけ注目作品になって、二期も可能な結末なら、やるでしょう。版元の角川的にもおいしい商売でしょうから」

「しかし大丈夫だろうか。二期になってクオリティが悪くなったりしないだろうか。注目されたがゆえにだ」

「同じ版元なら、艦コレのアニメ版のことですね」

「あれは、ひどかったな……しかし劇場版で持ち直したから、現場と上層部がかみ合わないとダメなんだろうなぁ……」

「もしかしたら、やりたかったことと、資金の量がかみ合わなかったのかもしれませんね。僕たちにやれることは、グッズを買いまくって、けも○フレンズ企画にじゃぶじゃぶとお金を注ぎこむことですよ」

「問題はそこなのだ! どうやら版元はけものフレンズがこんなにヒットすると思っていなかったらしく、まったくグッズがない!」

「ないですねー。ゲームなんて放送前に終了していたし、キャラクターグッズなさすぎて、みんな動物園いっちゃいましたよ」

「動物園……! そういえば、我輩、動物園いってないぞ……!」

「もったいないですよ。本物のサーバルキャット、一度は見ておかないと」


 翌朝。さっそく我輩と川崎は、オタクが押し寄せる某動物園にやってきた。どれぐらいオタクがいるかといえば、購買の食べ物が空っぽになるぐらいだ。動物の獣臭さに加えて、成人男性の獣臭さも漂うため、動物が倍増したような気分になる。どことなく一般の親子連れも引き気味だ。


 そして一番オタクが集まっている檻は、もちろんサーバルキャットだ。我輩と川崎はオタクの波をかきわけて、一番前に出た。


 サーバル○ゃんがいた。


 いや、もちろん動物のサーバルキャットなのだが、アニメのサー○ルちゃんが現実にいるんじゃないかと錯覚するぐらい、キャラクターデザインが秀逸だったのである。大きな耳は垂直に伸びているし、額の模様はMという英字っぽいし、毛皮のパターンは衣服のデザインと一緒だ。


 じーんっと感動していると、今度は動物としての動きに感動した。ぴょんぴょん元気にはねて、尻尾を優雅に動かして、ほんのちょっとだけサーバルステ○プをやってくれたのである。


 すばらしい。なんてファンサービスだ。ありがとう、サーバルキャット。


「動物園へきてよかったな、川崎」

「ええ、最高の体験です」

「贅沢をいえば、かばんちゃんもいればいいのだが」

「いないでしょうね、ヒトのフレンズだったわけですし」

「だったら、ここにいる誰もがかばんちゃんになれるんだろう」


 我輩が、かば○ちゃんとまったく同じタイプのカバンを背負ったら、一緒にサーバルキャットを見ていたオタクたちがブワーっと涙を流した。


「いいこというな、毛深いあんた!」「そうだよ、おれが、かばんちゃんだ」「おれたちがかばんちゃんだ!」


 ここにいる誰もが、かば○ちゃんと同じかばんを背負った。


 みんな、ヒトのフレンズだ。


 わーい、オタク趣味が得意なフレンズなんだね、なのだ。


 こうなったら、やることは一つしかない!


「みんなで、ジャパリパークを探しにいこうではないか!」


 ――――数日後、我輩たちはニュースになった。


『某国の禁猟区へ侵入していた日本人の団体が逮捕されました。彼らによれば「ジャパリパークはこの世界のどこかに絶対あるんだ!」とわけのわからないことを主張しており、現在精神鑑定が行われております』

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