2体目の仲間!その名もノウン!!
丁寧にもてなされた俺らは、オーガの集落というか町の町長にあたるオーガの長の家に居るらしく、年老いたオーガ夫妻と案内したオーガ、それに分厚い本を読みながら席に座った若いオーガを正面に座っている。はっきり言って今すぐ殺されそうで怖い。
「さて、愚かな魔王とそれを従える賢しい人間、そしてスライムの王よ。何の為にここに来たのだ」
「えっと、簡単に言えば力を貸して欲しい。俺はモンスターブリーダーだからな。あんた達の誰でもいいから来てくれないか?」
素直に言った俺の言葉を探る様に目を見つめてきた。そしてそれが嘘偽り無い言葉だと理解したオーガの長は、それでも首を横に振った。
「今の世の中弁論で解決できる事があるならばその方が良い。確かに我々は力も強く図体も大きい。しかし、リスクプレミアムを想定するならば双方が納得し無駄な争いにはならない弁舌の方がよっぽど得だ」
「や、やべぇ。俺より頭良いぞオーガ」
饒舌に話すオーガの長にはゲームで出てくる様な筋肉バカのイメージは一切持てず、完全に理論派として確立している賢い一族となっていた。だが、俺はここで諦めるわけにはいかない。立派な家を建てる為にもオーガは必ず仲間にしたい。
「話はそれだけなら今日は一泊していくが良い。この周辺は人間の足では辛いだろう」
「いや、待て。俺にはまだ頼みがある。俺があんた達の力を借りたい理由がな」
「ほう?果たしてどの様な理由だ」
「家だ」
短く、簡潔に言い放った俺にオーガ一同はポカンと口を開ける。その反応を待っていた。
「俺はな、とある理由でこの地に飛ばされ、家も無ければ家族もいない状態だ。そんな中でなれたモンスターブリーダー。種族が違えど共に生活できる家族が欲しい。その為に家族が住める家を、俺は建てたいんだ。そしてその為にはあんた達の力が要る。お願いだ。俺の家族になってくれる奴は居ないか?」
「……嘘は、言ってないようだな……」
真剣な顔でオーガの長はこちらを見つめ、何とも言えない様子でお茶を啜る。すると、本を読んでいたオーガがそっと本を閉じてこちらを見た。
「貴方面白いね。いいわよ。私がついて行くわ」
「ノウン?!何を言っておるのだ!」
人間の顔に近く、そして端正な顔立ちをしたオーガは興味津々に口を開いた。その声を聞く限り女の子らしいが、はっきり言ってそこら辺の冒険者(男)より体はゴツく、それでいて顔が美人というアンバランスさに頭が痛くなる。
「実際の冒険なんて中々機会無いし。百聞は一見に如かず。でしょ?おじいちゃん」
「し、しかし……いや、確かに言う通りだ。この年になれば外の世界を知る事も大事。このままこの地に止まれば井の中の蛙となるだけだ」
「そ、それじゃあ?!」
「うむ。ノウンをよろしく頼むぞ、人間」
作戦が功を奏しオーガを仲間に加える事が出来た俺は早速契約の儀を唱える。
「『我、竹倉奏の名の下に契約を交わさん』!」
「ん、よろしくお願いします主様」
立ち上がり一礼をしたオーガの娘ノウンは、俺の頭を軽く握り潰せそうな程大きな手をこちらに差し出す。対し俺は手を握り潰されないかヒヤヒヤしながら握手を交わす。流石頭のいいオーガ。力配分を弁えていた。
「ま、人間の家位はいつでも作るよ。その代わり戦闘なんて野暮な事しないけど」
「えっ」
「いや、だって無駄じゃない?そんな事して何になるの」
「いや、レベルを上げてドラゴンとかを家族にしたいなって……」
「いやいや、無理でしょ。ドラゴンなんてレベル120あるのよ?主様のレベルと90以上差があるのよ?無理無理!」
嘘だろおい。戦力にならないオーガなのか。……だがまぁいい。そのうち戦闘させる様に気を向かせるだけだ……!!
かくして、オーガを仲間にした俺は先程のオーガの長の言葉に甘えて一泊する事にした。
「あれ、今回我喋ってない!!」
「そのまま一緒黙ってろ!!!」