次の仲間はこの種族だ!
ワイルドウルフの森を出た俺らは今からでは街を目指す事が困難な上更に肥大化したコバルトの事もあるので人生初の夜営を試みる。勿論昔宿泊学習等で山に泊まった事はあるのだが、その時は宿泊施設があった為本格的な夜営は初めてだった。
「夜営に関しては任せてください。ここ数年我は夜営で過ごしていましたからね」
「まて、あんた城を追い出されたり部下売ったの最近の話じゃ無かったのかよ?!」
『魔王閣下が失脚してから既に3年は経っておる。お陰で未だにこの世はデフレ状態だぞ』
聞きたくもない経済事情に耳を塞ぎつつ寝床を探す。すると、自称夜営のプロことまおがやれやれとばかりに首を振った。
「違うんですよご主人様。真の夜営はこんな平地ではしないのですよ。良いです?まず安全を確保するには地上ではなくこう言った木々の間に寝床を作るんですよ」
「なぁコバルト。お前の上で寝て良いか?」
『構わぬ。その方が我が主の身を守れて我も安心だからな』
無論無視をした俺はコバルトの上に乗せてもらい体を横にする。現実よりは涼しいとは言え夏並に暑い夜。ひんやりしたコバルトの体はちょうど良かった。
「そのうち俺らの家とか建てるか。コバルトやそのうち仲間にするドラゴン達用の部屋がいるだろ」
「あの、我の部屋は…まさか、ご主人様と合い「犬小屋な」……」
愕然としたまおは泣き付くにも3m以上上にいる俺に届く訳もなく、悲しみを帯びながら再び木に登った。
「家を建てるならオーガとかゴーレムとか巨大な二足歩行種だよな」
『うむ。だが彼らは知能が低い故扱うのは至難の技と聞くぞ』
「まじか。だがそこを何とかするのがブリーダーだよな。とりあえず必要レベルは足りてるんだ。明日にでも向かうか」
俺の言葉に深く頷いた?コバルト。明日の目的が決まった俺は現実ではあり得ない早寝を試みる。すると、今日1日余程疲れていたのか直ぐに睡眠を取れた俺は、朝日が昇るまですっかりと熟睡していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝。テンポの良い跳ねる音で目を覚ました俺は、いつの間にか隣で涎を垂らしながら寝ているまおの頭をコバルトの中に押し込みつつ起き上がる。すると、そんな2人を乗せたまま早起きをしていたコバルトはオーガ自治区を目指し進んでいた。
『おはよう我が主。よく寝ていた様だな』
「ああおはよう。朝早いんだな、コバルトは」
『何、この時間に木の実を採取しなければ他のスライムは襲われるのでな。しっかりその習慣が身についているのだよ』
渋い声で笑いながら話すコバルトがやけにカッコよく見えた俺は、隣でもがき苦しむまおを見て溜め息をついた。
「コバルトの方が魔王適正あるな……」
『スライムがこの世を統治するのか。それは面白いが人間を傷付けるのは好かんよ』
何このスライム。めちゃくちゃカッコ良いんだけど。それこそ勇者の一行として活躍したスライム並の貫禄あるんですけど。
スライムに尊敬の眼差しを送るという過去どんなRPGでも類を見ない状況に混乱していると、隣でもがいていたまおが漸く抜け出したらしく、息を荒げて周りを見渡した。
「何だ、生きてたのか」
「ちょくちょく暗殺を試みないで下さい!我でも怒りますよ?」
「別にいいぞ。それで俺が死ねばお前は無一文のホームレスぼっちに逆戻りだ」
「おはようございますご主人様!今朝も良い天気ですね!本日もご主人様の為に死に物狂いで奉仕させていただきます!!」
朝から違う意味でチョロいまおを操りつつ、コバルト移動で進む事3時間。
オーガ自治区の入り口である、渓谷へとたどり着いた。
「この先オーガ自治区になります。彼らは怪力を持っており、訳のわからない事を言うと有名ですので話し合いでの取り込みは不可だと思って下さい」
「ああ。勿論そのつもりだ。いくぞ」
一歩踏み出し、オーガ自治区に入った瞬間。大きな足音と共に1体のオーガが現れた。
「来たか!先ずはこいつと腕試しか……!!」
「落ち着け人間。見た所モンスターブリーダーとしては日は浅いものの愚かな魔王を連れているのを見る限りこちらに勝ち目は無い。その様なハイリスクローリターンな行動を取るなんて非効率的だ。こっちへ来い。私達の集落に案内するから、足元に気をつけながらついてきてくれ。」
「えっ、あ、おう……」
流暢な言葉を話すオーガに開いた口が塞がらない俺は、罠の可能性を考えつつもオーガの後をついて行く。
「この先に私達の集落がある。目的の内容は大方予想がつく。私達の村で取れた茶葉から作ったお茶をだすからそれを交わしつつ要求を聞こうではないか」
「あ、はい。よろしくお願いします」
あの、知能高くないですか?
少なくともブンブン丸なイメージのオーガとは一切違ってむしろ良いところの大学生並に思考能力が高くて俺の頭混乱してるのですが。
そのまま村へと到着した俺らは、コバルトよりも大きな門を抜けオーガの集落……にしてはまともすぎる純和風な町並みを抜け、一際大きな屋敷へと向かった。