いざ冒険の旅へ!
巨大スライムことコバルトを仲間にした俺は次なる目的地を目指す。
「この辺で敵が弱くて経験値を稼げそうな所はどこだ」
『それならばワイルドウルフの森だろう。奴らは群れずに行動している為応援もない』
「成る程。流石頼りになる」
「ぐぎぎ……」
説明が丁寧な上、ひんやりとした体に乗せて行動してくれるコバルトはかなり便利だった。何故か隣でのしかかっては打ち上げられている馬鹿な魔王が居るけど。何してんのこいつ。
『だが奴らは警戒心が強い。中々姿を見せてはくれんぞ』
「流石野生のわんわんお。一筋縄ではいかないか……」
何か良いものは無いかと周りを見渡す。だが、餌となるものは無くあるのは無能な魔王と回復薬のみ。せめて肉でもあれば……
「……なぁおい。まお。あんた豚になれるか?」
「豚?なれますが何故……?」
俺はガッツポーズをしてまおを見つめた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あの……本気ですか?ご主人様、助けてくれますよね?」
ワイルドウルフの森に着いた俺らは森のど真ん中にまおを置き、木陰にそっと隠れる。ちなみにコバルトは必死になって草むらの高さまで潰した。
不安そうな表情でこちらをみるまおに俺は手信号を送る。献身的な魔王に送る応援は一つしかない。
(いいやつ……だったよ!)
「えっ……頑張ったら、恋人にする?」
(違う違う。成仏してくれ!)
「今夜我を頂きます?なんて情熱的な……」
「次そんな世迷いごとを言ったら締める」
『我が主、どうか落ち着きたまえ……』
目の前で体をくねらせているまおに殺意を抱きながらも、これ以上の囮はない為必死に堪える。すると、その思いが通じたのかまおがドヤ顔で叫び始めた。
「ふっ……我が転身魔法に恐れ慄くがいい!!いくぞ……豚!」
盛大にカッコつけながらも最後の言葉に思わず吹き出しそうになる。分かっていたが全然カッコ良くねぇ……
それに対し壮大な感じで展開された魔法はまおの姿をだんだんと変えていき、丸々と太ったフォルムに短い足……そしてー
「ブヒヒwwwサーセンwww」
「豚違いだボケェッ!!!!」
何故か太ったおじさんに姿を変えたまおに思わず俺は近くの木材を投げつけた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「中々来ないなぁ」
まともな豚になってから数時間。一切動きのない状態に俺は苛立ち始める。
『狩りは忍耐ですぞ』
一方、渋い声で慰めてくるコバルトはその体をソファの様に変え俺の事を座らせている。なんとも便利な体である。
「まぁな。だがここまでくると豚としても魅力がないんだな。まおは」
「ブヒッ?!」
『仕方がなかろう。魔王とて才能は選べぬ』
「ブヒヒッ!!」
俺らの言葉に恐らく必死に抗議しているのだろう。だが豚の言葉は分からん。
「まぁそのまま来なかったら丸焼きにして食べようか」
『名案だが中身は魔王だぞ』
「やっぱパスだな」
「食用としても見捨てられた?!」
通じてない事を悟ったのか顔だけまおに戻した豚魔王は得意技の泣きじゃくりを始める。すると、何故かその声に反応したワイルドウルフが唸り声を上げ始める。
「おっ」
『来たな』
「うう……えっ」
思わず周囲を見渡すまお。気付けば本来群を成さないワイルドウルフが集団でまおを狙って唸る。その様子に恐怖したまおは、豚の体にまおの顔のまま必死に走りだしー
『ガゥルルッ!!!!』
「キャァァァァァッこないでぇぇぇぇっ」
豚と狼の鬼ごっこが始まった。