マンドラゴラはうるさい。
ー暫くして。
道中特に面白い事が起きないまま平和的に道を進む俺たち一行はマンドラゴラの生息すると言われる高さ。8合目と9合目の境に着いた。
「なんかサクサクと進んだわね。モンスターが沸くわけでも無く」
「まおが居ないからだったりして。魔王って確か誘惑の魔法が常時展開されてる筈だし」
「まさか。それなら何故俺たちは誘惑されてないんだ」
「……欠陥品ね」
と、まおの悪口を零しつつも俺たちは山の外周に沿って進み始める。こんな所まで整地されているとは驚きだった。
そのままサクサクと進む事約1時間。この山には珍しい程の緑が広がる場所へと到着した。
「この一帯は耐熱草やマグマウッドの原生林の生地だから溶岩の影響がないらしいの」
「へぇ……それでこんなに美しい草原が広がってるのか……」
「そうね。ここは観光名所の1つらしいし……死に場所に選びたい名所の1位になる程よ」
「なんだよその物騒なランキング?!編集した奴馬鹿だろ?!」
「まぁまおがまだ魔王して居た時の勇者候補が作ったのだけれど……」
「魔王がアレで迷走してしまったのか?!気持ちは分からなくもないけど」
だとすると本当に罪深い魔王である。自身の怠惰のみで勇者を狂わせる程のダメっぷり……いや、ある意味では魔王の作戦勝ちかこれ?
「とにかく、早い所探そうぜ。この辺りにリザマギアがいるんだろ?」
「ああ、だがここはリザマギア以外にも……「おっ早速それらしい葉っぱがあるじゃん。引き抜くか」ちょ、待っー」
丁度足元に生えている大きめな草を引き抜く。何、引いた瞬間絶命とかじゃない限り大丈夫だろう……。
『Fa○k'nbabyー!!!』
「ギャー?!?!うるせぇぇぇぇっ!!!」
「そ、それは『デスボイス』って言われるマンドラゴラの一種よ!!!と、とにかくうるさいから早く埋めて……!!」
『WRYYYYYYYY!!!俺様がこの世d』
騒ぐデスボイスを何とか土に埋め周囲を固める。やっべぇ耳がキーンてしてる……。
「主様、この辺はリザマギア以外にも複数のマンドラゴラがいるので気をつけて……戦闘以外の害は無いけどデスボイスみたいにうるさいの多いから……」
「わ、分かった。気をつけるよ……」
「リザマギアは結構わかりやすいのよ。こんな感じの見た目してる草が……」
「あ、いや、それは……」
自信満々にキャリアがマンドラゴラを引き抜く。すると、先程とは違い寡黙なマンドラゴラが現れた。
「……静かだな」
『石』
「そ、そうね……当たりかしら?」
『石』
「いや、これはリザマギアでは無く……」
『石』
「ちょ、何なのよこいつさっきから石って相槌入れて……てかあれ、どんどん重くなってる?!」
『石』
「そ、それは『ストーンヘンジ』って呼ばれるマンドラゴラで……静かなんだけど声に反応して「石」って返す度に重さが累乗していく危険なモンスターよ……」
『石』
「何だそのギャグ?!と、とりあえず手を離せキャリア!!!」
『石』
「わ、分かった……って指が上手く動かないんだけど?!」
『石』
「言い忘れたけどストーンヘンジの草には神経麻痺を起こす毒があって……『キュア』!!!」
ノウンが状態回復魔法を唱えた瞬間キャリアは何とか手を離す。すると、ストーンヘンジは爆音を立てて地面に埋まり、周りに土をかける手間もなく地中へと潜っていった。
「これは厄介な場所にきたものね……」
「いや、私の言う特徴のマンドラゴラを引けば大丈夫だから、ね?」
「これなんかどうだ?!」
『元気ですかー?!?!ダーッ!!!』
「いてぇぇぇぇ?!いきなり殴りやがったこいつ!!!ぶっ殺す!!!」
「や、やめて主様?!それは『ボンバイエ』って種類で悪意は無いのよ?!……てか私の話を聞いて?!」
「えーいっ」
『YO!お前らノッてるか?!ここは火山であってるか?!このフィールドは俺様の物、このフィーリングはお前らの物!YEAH〜』
「それは『グラスホッパー』!!!」
……何と言うか、何種類いるんだよこの草原。めちゃくちゃうるさいんですけど。流石マンドラゴラ。
「くっそ……またデスボイスひいた……うるせぇ……」
「ノウン〜助けて〜!!!両手にストーンヘンジなの〜!!!」
『石』『石』
「ちょ、だから話を聞きなさいって!!!『キュア』!!!」
「てか今更ながらなんでノウンがキュアを使えるんだ?回復魔法じゃ……」
「キュアは水魔法よ。水の力で浄化してるだけ。……じゃなくて。とりあえずリザマギアの特徴教えるから一旦掘り起こすのやめて?!」
「なっ……早く言えよそれ……」
「さっきから言ってるのに発掘に夢中だったのは誰よ……はぁ」
呆れながらもノウンは俺とキャリアにリザマギアの特徴を教え始めた。
「リザマギアはその貴重さ故に草の見た目が毒々しい色をしているの。何と言うか……とにかく派手なの。触ったら危険な感じがする見た目してるのよ。それを探して頂戴」
「オッケー。危険な感じだな。……ってもそんな見た目の物あるか……?」
ノウンの言葉を半信半疑と言う感じの俺はとりあえず周囲を見渡し始める。この一帯はある程度引き抜いたけど……そんなもの……ん?
「なぁ、ノウン」
「何、主様」
「まさかこれじゃ無いよな」
「……」
俺とノウンが呆れながら見つめる先にはー
「『引き抜くな危険』……これ立てかけてある看板じゃ無いの?!」
「だ、だよな……幾ら何でもコレじゃ……」
「……引き抜くわよ」
「ちょっ、マジ?!」
疑いつつもノウンは看板に手をかけ勢いよく引き抜く。見た目と反して軽々と持ち上がったその先にはー
『アッーーーーーーーー♂』
黒く光るボディといい声で叫ぶマンドラゴラの姿があった。




