ステータス…ぷぷっ…希少価値…ぷぷぷっ
翌朝。
昨日俺に胸を貶されヤケ酒に走った挙句色々見えそうで見えない状態のキュリアを何とか退かし、イビキでジャイ◯ンリサイタルを始めているまおを蹴飛ばしつつ外を見つめる。
「やっと諦めて帰ったか……」
何事も無い風景に俺はホッと胸を撫で下ろす。と言うのも、昨日の件で休憩所の周囲はキリングソードの集団が待ち伏せしており、日が変わるまで辺り一面剣山と言う絶望的な状況になっていた。
お陰で休憩所の管理人には泣きつかれ、他の客は狂気乱舞、果てには俺ら以外の客全てが空に向かって拝み続ける変な宗教が開かれる始末となっていた。後で謝ろう。
「さてと……残りあと少しだ。さっさと登りきってゆっくりとしたいぜ」
背伸びしつつ部屋へと戻る。何だかこの瞬間がここ最近の至福の時間となり始めている。
と言うかそもそもネトゲプレイヤーの俺がいる早寝早起きとか何という改心。まるで優等生じゃないか。
それに比べうちのパーティは朝食を作り始めたノウンとまおのイビキが体を揺らすせいで起きてしまったコバルト以外ぐうたらじゃないか。ここはあれだな。一度こいつらにも規則正しい生活を叩き込まないといけないな。
「おい、キュリア。はよ起きろよ。いつまでぐうたらしてんだよ!!」
「……かな……で……?ぎゅぅ……」
「ぬぁぁぁぁぁっ!!!ち、ちがぁぁぁぁうっ!!」
一度顔を起こしたキュリアはあろう事か目の前であぐらをかいて説教する俺の膝に頭を置き、そのまま腰を抱きしめるという新膝枕を披露し始める。いや、これどんな回答だよ!
「起きなさい!俺が困ってるよ?!?!」
「んふふ……わたしはこまってなぁい……」
そりゃそうだ。これで困ってたら最早困るの定義が分からない。仕方ない。ここは一旦まおを起こす事にしよう。
「おいまお。起きろ。お前置いてくぞ?」
「ずがー……わーれはーまおー……ぼーつらくおーう……」
「だからそのリズムと曲調でイビキと寝言混ぜるの止めろ!!」
「かなで……うるさい……しー……?」
「いや、お前も起きろや」
二人の頭を叩きたい気持ちを必死に堪えつつ、俺は何とか起こせる様に策を巡らせる。
と言ってもまおの方は簡単である。キュリアさえ起こせれば奴は物理的に起こす事が可能である。キュリア……
「……おい、キュリア。お前胸無くなってるぞ」
「……うそっ?!え、えぇ……っ?!ど、どうしよ奏?!私女の子なの……に……?」
「おはよう。とりあえずその貧相な胸しまえよ(笑)」
「ぶっ殺す」
寝起きの機嫌の悪さ+コンプレックスを突かれた怒り+上半身を見た割に反応の薄い俺への怒りが爆発し、極限まで目を吊り上げたキュリアが怒りの鉄槌を下さんと拳を振り上げる。
それを今かと待ち構えていた俺はその隣でイビキをかき続けるまおを捕まえ、振り下ろされる拳に合わせて昨日刺されたまおのお尻を向け……
「ヒギャァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」
かつて無い断末魔が休憩所を襲った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ごめんなさい」
「知らないわよ。馬鹿!!」
「お、おし……おしり……っひっく……」
寝坊助二人を何とか起こした俺は、現在超不機嫌なキュリアからはまともに口を聞いてもらえない状態となり、まおがあぐらをかいた俺の膝の上で泣きじゃくっているという何ともおかしな状況となっていた。
「まぁ今回のは一概に主様のせいじゃ無いと思うけどねぇ。起きないキュリアも悪いわ」
「それはそうかもだけど、2日連続胸ネタで弄られるとかムカつくわよ」
「あっても邪魔なだけよ?要る?」
「無かったら扱い酷いからね?!」
「いや、一部の人間には無い方が良いというのもいてだな……」
「何よそのコアな層には受けますよ的な言い方!どう思うコバルト!」
『いや、そもそも我らには胸とかの概念は無い故何とも言えぬが……』
確かにスライムに胸があったら大変である。と頭の中でツッコミつつ俺は準備を済ませ、泣きじゃくるまおにカンチョーの構えを見せて脅しつつ立ち上がる。
「さ、無駄話はここまでにして先行こうぜ。まおのケツがどーとかキュリアがまな板ロリコン専用とかどうでも良いからよ」
「奏本当一回死ぬ?幾ら寛容で可愛らしい私でも我慢がー」
こめかみに青筋を立てながらキュリアが俺の肩に手を置いたのと同じタイミングで、俺らは思わず足を止めてしまう。
「……なぁ。その怒りぶつける先知ってるんだが」
「生憎その提案はパス。と言うか私も悪かったからお願い。そのまま見捨てないでね???」
「これは……やばいわね」
『うむ……まずいな……』
「お、お尻の古傷が痛みます……」
目前に現れたのは、昨晩見たキリングソードよりも更に体長が大きな生物。足元に散らばる無残な剣先の群れを啄み、満足そうに捕食しているそれは、伝説の生物にして火山の王者。不死の怪鳥ことフェニックスの他に無かった。




