前途多難な急ぎ道
なんとかまおのお陰で飲み水を確保する事ができた俺らは水浸しになった部屋について謝りつつも休憩所を出て再び火山道を歩き始めた。
「今日は頑張れば6合目まで行けそうね。飲み水の余裕もあるし」
「まぁな。と言うかやはり暑い。まお、なんとかできないか?」
「お任せあれ!我にかかれば……クールウインド!!」
「おおっ、これは涼しい!!!」
まおが魔法を唱えると俺らの周囲にひんやりとした風が吹き始めた。まさに魔法版クーラーとも言うべき冷風を受けつつ楽々先へと進んでいくと、二手に分かれた道が現れた。
「どれどれ……片方は遠回りだけど安全で、もう片方は危険だけど早い……か。まさにテンプレ通りの分かれ道だな」
「どちらを選ぶ?私的には安全をオススメしたいけど……」
思わず立ち止まり考える俺。しかし、考えてみるとこの山自体が危険であり仲間の存在もある意味危ない。と言うかこいつらと一緒なのが危ない。と言う事で選択は1つしかなかった。
「早い道を選ぶぞ。どの道危険なんだ。変わらないさ」
「えええ……こんな時だけ男らしいのは何故……」
「それはな、早く降りたいからだ」
「……はぁ」
いまいち締まらない様子のキュリアを差し置き、堂々とした態度で俺は短くて危ない方へと向かい出す。
「こういうのはな、短い方を選ぶ横着者を嵌める……と見せかけて安全策を選んだチキンハートを嵌める罠もあるんだよ」
「何その初見殺し」
「初めて見た時は衝撃だったぜ……」
俺は昔ネトゲで体験した思い出を振り返る。あれはそう、ネトゲ界でも有名なボッチプレイヤーとして名が通り始めた頃。同じギルドの面子が別ゲーに浮気するって話を偶然聞いて興味が湧いて始めたあの日だ。
初っ端の選択肢でチュートリアルを兼ねて長い道を選んだ所そこまで操作説明される訳でもなくドロップも装備も初期。更に回復アイテムも無しの状態で5レベルも差がある相手と戦い経験値は不味いわ死にかけるわで大変だった事がある。ちなみに短い道を選ぶと協力なNPCが仲間になりチュートリアルをする上経験値もドロップも美味いという話を後から聞いて俺は即座にキャラデリをした。
「まぁ任せな?俺の勘は良く当たるんだからよ」
「そんな事言って泣き見ても知らないわよ?」
溜め息を吐きながらもどこか頼ってくれているパーティメンバーに、内心喜びを覚えつつ一歩、また一歩と先へ進む。
「ほらな?俺の言う通りだろ?」
道を半分進んだ所で俺は一息吐きつつ後ろを振り返る。
道は先程よりか険しいがそこまで辛いものではなくむしろ当たりくじを引いたのではないかと思う位に平和だった。
「そうね……この辺りに出そうなモンスター一体も見かけないわ……」
「それでも警戒に越した事はないわ。何が起こるかわから……キャッ?!」
ノウンの言葉を遮る形で地面が揺れる。おそらく火山が活発なせいもあり小さな揺れが起こるのだろう。
「この道に入ってから若干揺れが多いな。噴火するのかな」
「そうね……だとするとこの道はマグマの通り道になる可能性が高いわ。モンスターの少なさ、この道の荒れ具合。普通にヤバイわ」
「つまりこれが危険の正体か……まぁいい。先に抜けてしまうか!」
先の見えた危険ならば怖くはない。という事でより一層足を速める事に専念を始めた俺らだが、道の途中で更なる違和感を感じた。
「なんだろ。この胸騒ぎ。何か起きそうな気がする」
「ちょっとやめなさいよそんな縁起でもない」
「大丈夫ですよ。もし不安なら私が先に行って見てきます」
「あっ、フラグが立った。本格的にヤバそう」
長年ネットの中で冒険してきたから分かる勘が何かを告げている。この先えげつないイベントが起こる。ここは引き返してー
「ギャァァァァァァァァァッ!!!」
「なっ……どうしたまお?!」
「あ……ああ……なんでこんな所に……」
真っ青な顔でこちらを見つめるまお。その様子に並ならぬ物を感じた俺らはすぐ様駆け寄り、そしてこの道を選んだ事を後悔した。
「これ……避けれるイベントなら避けたいが……」
「そんな生易しい相手なら良いけど……」
「まぁ、私が知ってる限りじゃ……無理ね……」
「デスヨネー……はぁ……」
真正面を見つめるまおの視線の先には鋭利な岩肌……ではなく、その1つ1つが剣の如く斬れ味が良い表皮を持つ超巨大モンスターの群れ。
ギガント種の荒くれ者にして希少種のキリングソードの集落だった。




