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俺、異世界に行ったら結婚するんだ。  作者: 雨音緋色
異世界に行っちゃいました‼︎
3/34

生活資金と職をゲット。ついでに魔王もゲット。

 その後、色々試しても必死にしがみつく魔王を結局振り払う事が出来ず、仕方がないので共に街へと向かった。


「で、あんた金あるのか?」


「一応今月の生活費くらいはある」


「おっしゃありがとう奢りな?」


 驚愕の表情をみせた魔王は涙目で首を振り財布を守る。しかし、転移したばかりの俺に泊まる金など当然ない訳でー


「ぐすっ……酷い……理不尽だよぉ……」


「流石魔王。いい金出すじゃん」


 上手く口車に乗せられた魔王は財布を差し出し、有り金全てを手渡す羽目になった。


 徐々に近づく街並みを見つめながらふと、俺は思った。こいつ魔王の姿のまま入るとヤバいんじゃないかと。


「おい、あんた」


「魔王ちゃんじゃないとやーだっ」


「オッケー。ちょっとプリースト連れてくる」


「ごめんなさい本当ごめんなさい!」


「宜しい。あんた人間に化けれるか?」


「出来るけどなんでだ?」


「いや、そのまま入ると色々マズイだろ。俺じゃ無くてもプリースト呼ぶぞ」


「確かに。頭良い!見るがいい、我が今まで見てきた人間だ。ちゃんと常識を守るぞ!!」


 気合を入れた魔王は魔力を高めその姿を人間に変貌させる。しなやかな足。でるところは出て女性らしさを醸し出すフォルム。そしてー


「なんで顔はおっさんなんだよ!お前の常識おかしいだろ!!」


「ぶへぁっ?!殴んなくても良いじゃないの!!」


「その顔で寄るな!キモい!やめろ、夢に出てくるからマジでやめろ!!」


 思い切り足蹴にして泣き付く魔王を引き剥がす。結果、顔を血だらけにした魔王は傷を癒しながら少女の顔つきとなり、なんとか難を逃れる。


 街に着くと、門番らしき騎士が名前を聞いてきた。


「俺は奏。とある理由で冒険者を始めたばかりだ。そしてこいつは」


「畏れろ!慄け!!我こそはこの世を支配していたまおーふぎゃっ?!」


「ごめんなさいうちの馬鹿が本当にごめんなさい!!まおです。こいつはまおです!」


 名乗れと言われ本当に名乗りそうになった魔王の鳩尾に渾身の右ストレートを入れた俺は、門番がドン引きする中魔王改めまおを引きずりながら街に入る。

 初めて訪れた異世界の街並みはどちらかといえば中世的な建造物が多く、いかにも異世界らしさがあった。だが、現実とは明らかに違う物がある。それこそ、冒険者ギルドだった。


 どこの異世界にも共通してある冒険者ギルドは、言うなれば手に職をつけていない異世界ニートのハローワーク。その名があるだけで心躍る冒険ができるというものである。

 早速冒険者ギルドの扉を開き受付にいる初老のおじいさんに声をかけた。


「冒険者になりたいのですが!」


「はい、どうぞ。次の方〜」


「いやいやいや、簡単すぎないか?!ここは何か訓練的なものとか適性診断みたいなのあるでしょ!!」


「って言われてもなぁ……貧乏魔王が居なくなってたまに凶悪なモンスターが暴れる程度だしなぁ……」


「ぷっ……確かに、貧乏魔王は笑えますね」


 口元を押さえながら笑う俺の言葉を理解したのか、奥でまおが地団駄を踏み怒りを表しているが無視をしつつ話を進める。


「とは言え初めてなるものだからどの職が合ってるのか調べて欲しいのだが」


「しょうがないの……リナさん、こちらの冒険者を案内してくれ」


 初老のおじいさんが声を張り女性を呼ぶ。キタコレ。冒険者ギルドの看板娘だ‼︎と期待で胸を膨らましているとー


「なんやね、ご飯なら明日にしませんかい」


 出てきたのは最早干からびかけているおばあさんだった。あまりの展開に絶望しつつおばあさんに招かれ、奥の部屋に入る。


「それじゃあ調べるとするかの……JADシステム起動。職業診断に移ります……」


「ちょちょ、いきなり機械チックになったのは何故?!」


「データスキャン……竹倉奏……17……男……診断結果……運動C、知識C、技量C、魅力C+、幸運F-……ペンタグラム作成……検索……照合完了しました。竹倉奏の適正職は、モンスターブリーダーです」


「す、スゲェ突っ込みたいけどモンスターブリーダーか。確かに今の所モンスターに100%好かれてるし良いかもしれない!!」


「ちなみに、適正2位は魔王です」


「ふざけんな!!転移して討伐されるなんてごめんだ!俺はモンスターブリーダーになる!そうしよう、ありがとなおばあさん!!」


「こら宗介。ご飯の時は座りなさい!」


「違うわ!じゃあな!!」


 部屋を後にし先程のおじいさんの所へ向かう。そしてモンスターブリーダーに必要な物を調べ始めた。


「モンスターブリーダーは従える種族によっては自らの技量を示す必要がある。だが、それさえこなせば最高の冒険者となれる。必要なのはめげない気持ちだけだ」


「そっか、ありがとな。行くぞ、まお!」


「は、はいっ!」


 まおを引き連れギルドを後にする俺は、次にまおから巻き上げた金を使い宿屋を探す。


「こいつと同じ部屋で良いから泊まれる部屋はあるか?」


「あるけど……汚すなよ?銀貨1枚、食事付きだ」


「大丈夫。こいつは天井に吊るすから。これで良いか?」


 怯えるまおの首根っこを掴みながら用意された部屋へと向かう。そして一つしかないベッドに体を投げ出した俺は、漸く解放され隅っこで怯えるまおに声をかける。


「……で、何でそんなに怯えてるんだ?」


「いや、もしそなたがプリーストだと我は消されてしまうから怖くて怖くて……」


 怯えるまおに悪戯心が躍った俺は悪い笑みを浮かべながらまおに近づく。


「いや、まさか嘘だよね?本当にプリーストじゃないよね?!」


「さっきは背後から魔法を打たれかけたしなぁ……どうしようかなぁ……」


「本当ごめんなさいっ許してください!何でもします!!靴舐めろと言われたら舐めます!」


「冗談だ。つか本当に舐めるな気持ちが悪い!!」


 少女の顔で泣きながら懇願し靴を人外レベルに伸びた舌で舐め始めるまおにドン引きしながら、俺はギルドで言われた職を教えた。すると、まおはニヤリと微笑み手を打った。


「ちなみにモンスターブリーダーはな、悪魔も契約できるのだよ。そこでこの最強の魔王と組めばー」


「やっぱドラゴンとか良いよなぁ。後は神鳥とか。自分のモンスターと空を飛びたい」


「わ、我も翼あるし飛べるぞ!ほらっ見て見て!」


「後は知性あるモンスターってのがいいな。相棒として頼りになる」


「3以上の自然数nについてXのn乗+Yのn乗=Zのn乗となる0でない……」


「あ、後ウルフみたいなもふもふいいな。冬場とか暖かいし忠誠心高そう」


「わ、我も暖かいぞ!!ほら、人肌!それに忠誠の証として靴を舐めー」


「やめんか!気色悪いわ!!つか何でそんなに俺に拘るんだよ!」


 必死にアピールするまおを蹴り飛ばす。だが、珍しく涙を堪えこちらに向いたまおは、真剣な眼差しで口を開く。


「渡したお金返してくれないと生きてけないからです」


「おっしゃ金返したら居なくなるんだな?」


「やっぱ返さないでえええっ!ぼっちはヤダァァァァァ!!」


 結局泣き出したまおを縛り、寄りつかないようにしておいた俺はベッドに転がるや否や仮眠を取り始めた。

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