建前的には怒っておこう
見世物の集団から離れた俺らは小太りのクレイアンドロイドに懇願に近い説得を行い一向に戻ってきたまおを引き連れ街を散策する。
時刻は既に昼を回っていた事もあり昼食をとりつつ散策しようと思ったのだが、思いの外物価が高い。1人5銀貨かかるとかぼったくりすぎないか?!初日泊まった宿屋の5倍だぞ。
一応金は残ってはいる。20銀貨と少しの銅貨だが、もしこれを失う形になると今後生活が出来なくなる。
「くそ……何とかして金を稼ぐ方法を考えなければ」
「あら、財布は個別で管理なのね。80金貨程ノウンが持っていたからそれで旅しているのかと思ってたわ」
「へぁっ?!本当かそれ?!」
「ええ、普通に私は稼ぎあるし。貯金から軽く引き出しておいたのよ」
しれっと話すノウンに俺は目の色を変えて近づく。腹が減ってるからしょうがないよね?
「ああもうっ!!主様近い!鬱陶しいから纏わり付かないで!!」
「そんな……いや、諦めんぞ!!」
耳まで真っ赤にしたノウンはあの手この手で纏わりつく俺を千切っては投げ千切っては投げ……最終的には根負けしたノウンが叫んだ。
「ああああっ分かったから!!主様とコバルト位は面倒見てあげるからっ!だからもうそんなに抱きつかないでよ馬鹿……っ」
「ありがたやぁぁぁぁっ!!」
「あ、あれ?我は……」
「……主様とコバルトは私が面倒見るから皆安泰よね」
「ちょっと、あの、我の事見えてますよね?!まさか我の姿が馬鹿にしか見えないというネタじゃないですよね?!」
「まぁ確かに頭がいいようには見えないわね」
「そういうことじゃ無いけどキュリアさんありがとう!見えてるのはわかりましたよ!」
帰ってきて早々格差を受けるまお。お前絶対捕まっていた時の方がマシな扱い受けていたんじゃないのかと思いつつ俺らはこの中では1番安いファーストフード店で昼食を購入。中で食べるとチャージ料がかかるとか言われ近くの広場で食事を取ることにした。
「おや、其方の御仁達はオーガのお友達かい?」
食事を終え背伸びをした瞬間、急に声をかけられる。そのまま振り返るとそこには杖をついたお爺さんがいた。
「友達ってか家族だ。それがどうかしたか?」
「ほぅ……家族……家族なぁ……っ」
俺の言葉に頷きながら此方へと歩み寄る。そして顔の前で微笑んだ老人はそのまま杖から刀を抜き出しー
「仕込み杖?!ちょっ、えっ……」
「危な……」
「ギャァァァァァァァァァッ?!?!」
横一閃。俺は切りつけられた。……かに思えた。
「死んだと思ったかい?馬鹿め、仕込み杖からの仕込み刀からのマジックじゃ」
「ギャァァァァァァァァァ……あ?」
「ゴーレムの長。新顔相手にそれはやめて下さいと」
「ギャハハッ!!この驚きが生き甲斐なんじゃよ」
「ふっふざけんなよクソジジイ!!!」
俺の魂の叫びが木霊する中呆れたノウンは杖の先から偽物の刀身とその先に花を咲かせている老人ーゴーレムの長を殴った。
そして見事騙された俺は心配の表情から必死に笑いを堪える表情へと瞬時に転身したキュリアと未だに口をポカンと開けているまおに理不尽な蹴りを浴びせ咳払いをする。
「んで、ゴーレムの長が何の用だよ」
「ん?何の用と言われてものう。暇潰しに散歩していたら旧知の敵娘が男を連れて歩いていたでな。どんな男か気になっての」
「おいこの爺さんまじでロクでもない爺さんじゃねぇか」
「ま、まぁ昔からゴーレムの長は悪戯好きで有名だし……というか代々悪戯好きよね?」
「なんだかのう。悪戯せずには居れんのよの」
「そういうのはフェアリーでしてくれ……」
どうしようもないゴーレムの長に頭を抱えるも、探していた人物に出会う事が出来た俺らは早速長の家へと向かう。
「ところで爺さんよ。家は何処にあるんだ?」
「ん?そんなものある訳無かろう」
「へっ?まさか魔王と同じ……」
「阿呆ぬかせ。奴のような肥溜めと一緒にするでない。奴はホームレスだが儂はホームフリーじゃ」
「ホームフリー……?何それ」
「つまりはこの街のどの建物でもどこの敷地でも寝泊まり可能なのじゃよ」
「ナッナンダッテー?!」
ニヤリと笑うゴーレムの長に言葉を失う。というか何処でも寝泊まり可能とか顔パス状態かよ。てかそれなら見つかる訳がない。
「今はそこに泊まっておる。ついてくるがよい」
先程までのクソジジイさは一変。目をキリッとさせて指をさした場所は……
『し、使用人喫茶にゃんにゃん……』
「うむ」
「うむじゃねぇよエロジジイ!!!」
見えそうで見えない服のメイドが描かれたメイド喫茶だった。




