オーガってすげぇや!
一先ずオーガの長の家というかノウンの家というか、とりあえず先程までいた家から出た俺らはノウンの案内でオーガの町並みを案内してもらう。が、見れば見るほど現実に近いんですけどここ。つか今気づいたんだけど道舗装されてるし。歩き慣れて忘れてたけどこれアスファルトの感触だし!!あれ?この世界って人間よりオーガの方が文明進んでる?
「凄い町並みですね……王都並なんですけどこれ……」
「そりゃ王都を作ったのは私達オーガだからね。資源さえあればどこでも作れるよ」
ノウン曰く魔王が強制退任を受けて以来人間たちとの交流が増え、建設依頼や配管を始めとした建築仕事や、宮廷お抱えの司書等の求人ならぬ求鬼が来る様になったとか。
「これはあれだな。まおは貧乏で良かったんだな」
「なんか全然褒められてない気がします!!」
「まぁ褒めてないし」
「あうあぁぁぁぁっ」
新たに猫パンチを覚えたのか、両手をぐるぐるして殴りかかるまおの頭を足で抑えつつ周りを見渡す。もう時代錯誤とか環境錯誤とかのレベル超えてるよなこれ。都心の住宅街こんな感じだし。
「何つーか……頭良いんだな」
「何を言う主様。私達オーガはドラゴンに次いでの知能があり、その知識を活かし大学教授とかにもなっている。ほら、そこに大学があるでしょう?」
「うわっすげぇ……つか色んな種族から来てるんだな」
『ちなみに我らスライムでもヒールゼリーと呼ばれる種族が目指す名門だ。ここの白魔法科は優秀な魔法使いを生むからな』
やべぇ、もうオーガを脳筋金策用とか読んじゃいけないんだな。気をつけよう。
一通り町を巡った俺らは、最後にノウンの紹介で泊めてもらう事になる宿へと向かう。
「……あの、凄すぎません?」
「まぁ一応この町でも1番の宿だからね。疲れを癒すと良いよ」
悠然とした門を潜れば広がるのは質素ながら美しい庭園。そして眼前に広がるのは由緒ある木造の民宿だった。
その古風な出で立ちは老舗と言うに相応しく、圧倒的な歴史を感じさせる木の匂いと温泉の香りが立ち込めている。更に、元々体の大きなオーガが作っているという事もあり全てが現代のそれより大きく作られていた為最早威圧的とも取れるほどの素晴らしい建物となっていた。
『わ、我の体でも余裕があるとは……凄まじき建物!』
「そりゃ勿論さ。グレートドラゴンとかも来るんだしね」
コバルトが元気に跳ねてもなお余りある天井高の入り口。用意周到さも此処まで来ると笑うしかなかった。
だが、ここでふと自治区に来る前のコバルトの言葉を思い出す。そういやこいつオーガは何言ってるか分からないみたいな事言ってなかったか?
「そういやコバルト。ここに来る前に言っていたオーガについてとは随分と違うんだが。むしろ話が分かるというか、たまに難しくなるけど然程変には思えないぞ」
『む?それはあれだ。元来此処までモンスターは知能が高くはならない為彼らの言葉は正しくてもちんぷんかんぷんなのだよ』
成る程。オーガやドラゴン以外の種族は圧倒的に知能が足りないらしい。つまり、理解出来ない内容をペラペラと話すオーガの言葉の意味を知らないだけだったという。
「成る程。これから先迷ったらノウンに聞こう」
「最早立場が無くなりそうです……」
まおの言葉に少し考える。戦闘は経験値が入らないからまおは論外。コバルトや時々ノウンに任せる事になる。知識についてはノウンに聞けば良い。
「ノウン、家事とかは出来るか?」
「そりゃ勿論。私に出来ないのは彼氏位よ」
少し照れながら答えるノウン。ちょっと可愛い。だが、家事もノウンが出来るとなると……
「うん、じゃあなまお。達者でな」
「そうくるとおもってましたよぉぉぉぉぉっ!!助けてノウンさん!!」
恐らく仲間が増える度に捨てられかけるであろうまおは遂に俺ではなくノウンに泣きつき始める。何というか、魔王の癖にこの一行では最下層だよなこいつ。この際肩書きも奴隷で良いんじゃないかな。
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「ふぃ〜っ落ち着く……」
数日ぶりにまともな風呂に入る事が出来た俺は、頭にタオルを乗せ全身を湯船に浸からせる。と言うかこの温泉凄すぎる。体格別に湯船が準備されており、1番大きな物になると全長40m以上のお客様とか書いてあったりもした。ちなみに覗いたけど底が見えなかった。多分入ったら死ぬ。絶対死ぬ。
ちなみに一緒に風呂場に来たコバルトは5m〜8m用の湯船に浸かっている。本人曰く全長は3mらしいのだが水やお湯に浸かると5mを軽く越える為スライムは気をつけないといけないらしい。水饅頭は大変なんだな。
「ご主人様!背中を流しに来ました!!」
バスタオルを巻いたまおが突如現れる。あれ、ここ男湯なんですけど。女の子に変えてるまおが来ても大丈夫なのか?
だがその答えは、俺が問いただす前にまおの口から即座に答えられた。
「そのまま進むと止められたので体だけ男にマイナーチェンジしてきました!賢いですか?!」
「そんな努力要らねぇからお前はさっさと死ね!」
壮大なガッカリ感と苛立ちを覚えた俺は、嬉々として駆け込むまおを捕らえ40m以上専用の湯船に投げ込み、風呂から上がる事にした。※危険なので真似しないでね!




