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Uninhabited island life  作者: 櫻井 潤
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プロローグ

「ヨシッ!Hitだ!!」

橋脚の横のポイントに狙い通りのキャストを決め、予想通りにシーバスをルアーに喰い付かせる事に成功した詩音は今年初になる獲物との格闘を開始した。

「まさか一投目からアタリがあるとはなぁ。っとヤベぇネット用意しないと・・・」

程良く河口に近いこのポイントでは以外に大きなサイズが釣れる事もあり、ランディングネットは必需品だ。

エラ洗い(水面上にジャンプして針を外す)を警戒しながら格闘する事10分、無事にランディングネットに収まった獲物を見て詩音は喜びを露わにする。

「初物が70cm超とは今年はアタリ年かな?」

メジャーを取り出し70cmを超えてる事を再度確認し、改めてスマートフォンのシャッターを切る。

「これならリョウも文句言えないはずだ」

メールにて幼なじみのリョウに自慢気に本日の釣果を報告し、新しい獲物を探して次のポイントへと移動を開始する。

「ったく。たかが買い物付き合わなかった位であんなに怒らなくてもいいよなぁ?」

約束を破り釣りに来てしまった以上は相応の釣果がないとリョウに合わせる顔が無い処だったがそれも先程の1匹で無事にクリア出来たという安堵感もあり、次のポイントへ移動する詩音の足取りは軽かった。

「さて、と、次はあの辺りだな」

次のポイントに狙いを定め、キャストを再開した処だった。聞き覚えのあるメロディが流れ出すと同時に深いため息をつく。

「今日はもう2、3本いけると思ったのになぁ」

ロッドを下し、ポケットから取り出した液晶画面の名前に今日の釣りの終わりを確信した。

『ちょっとぉ!アタシとの約束すっぽかした挙句にそんなもんの写真送って来るってどういうつもり?』

案の定、約束をすっぽかした事に大層ご立腹のご様子だ。

『そんなこと言ったって、今日の大潮逃したらまた半月先まで潮の良い日ないんだからさぁ』

と苦しい言い訳をしてみる。

『アンタ、潮がどうのこうの言ってたけどそれって前もって解る話だよね?ならなんで今日の買い物付き合う事にOKしたの?』

やばい。藪蛇だった。いや、蛇どころじゃないなと思っていると更に追い打ちが来た。

『約束破った罰ね。明日の昼と夜はアンタのおごりだから。精々覚悟してなさいね』

何も言い返す間も無くブツリと切られる電話によってバイト代が健啖家の幼なじみによって残さず消化される事が確定した瞬間だった。

宮部詩音。首都圏とは名ばかりの地方都市に住む15歳の高校1年生。趣味の釣りを充実させるためにと高校入学と同時に始めたバイトは今や幼なじみのリョウの胃袋に費やされ、未だにルアーの一つも買うことができずにいる。

「はぁ。どうせ又昼飯パスタに夕飯焼肉コースだろ?なんだかんだ毎月たかられてる気がするなぁ」

高校生のバイト代なんてたかが知れている。毎月の事だがバイト代の半分以上を占めるエンゲル係数は詩音にしても悩みの種だ。

「にしても何でイチイチ俺が買い物に付き合わなきゃならないんだろ?アイツも顔広いだろうに」

幼なじみの佐伯涼は交友関係が広い。同じ高校に進学したが半年経った今でも俺がクラスメイトの顔と名前の一致が出来ていないのに比べ、アイツは学校内で知らぬ者は居ない様な存在になっていた。

「校則を入学してすぐの1年が変えるとか。アイツは昔から色々チートだからなぁ」

まぁ今時の校則としてはあり得ない(肩につく長さの髪は縛る云々)レベルの校則だったが入学早々に上級生を巻き込んでの署名運動を展開し、それを変えた事実は揺るがない。

「しかしバイタリティ溢れすぎる幼なじみってのもどうよ?俺は平和な学生生活を満喫したいだけなのに毎度巻き込まれるのもどうかと思うよなぁ?」

幼稚園、小学校、中学校と常に俺を大なり小なりのトラブル?に巻き込み続けたリョウに対し未だに隷属関係の様な状態な自分を恨みながらロッドをケースにしまい、帰途につく。

「顔はいいんだけどなぁ。胸が残念だからなぁアイツ」

本人に聞かれたら烈火の様に怒り狂い、それこそバイト代の全てを食費に変換しても許されないだろうとは思うが、たまには恨み言の一つも許されるだろうと一人納得しながらペダルを漕ぐ。

途中自販機でお気に入りの炭酸飲料を買い、それを飲みながら明日の予定を組み立てなおす。

「完っペキに予定狂ったなぁ。明日は一日釣り出来ると思ったのになぁ」

ランチタイムから動く=11時過ぎには行動開始かと計算し、メールにてリョウに時間の確認をする。

送信から10秒も経たずに届く折り返しのメールを見て自分の考えの甘さを痛感した。

『9時には迎え来てね』

「は?9時?午前9時?って朝だよね?って何か?朝から晩まで付き合わせるつもりかコンチクショウ!」

仕方ない。こんな事なら今日付き合っておけばと思ってみたが後の祭り。一応念の為に何処に向かうのかを確認する為折り返しのメールを作成する。

『えっと、朝の9時だよな?そんな朝から何処行くのさ?俺バイトの休みも重なるの明日だけなんだよ?

も少し俺にも休日を満喫させてくれるような予定にしてくれない?』

こうなりゃダメ元だ。なんとか俺の予定もぶち込もう。欲しかったルアーの新作も出てるはずだ。店一軒位付き合わせても文句は言うまい。と願掛けしながら送信をクリック

又も10秒足らずで返信。これは何か?行動が見透かされてる?

『今日行けなかった服見に行くよ!あと映画ね!もちろん詩音のおごりで』

やはりか… ある程度予想してたとはいえやっぱ俺のおごりか。ならせめて俺の都合もぶち込もうと

一言だけ折り返しのメールを打ち、スマホをポケットに突っ込んでペダルを漕ぎなおした。


自宅に着き、玄関でタックルBOXの整理をしているとお袋が一言

「アンタ涼ちゃんとの約束すっぽかして釣り行ってたの?馬鹿だねぇw」

うへ?なんで知ってるんだこの人エスパーか?と思っていた処に追い打ちが

「さっきまで涼ちゃんとお茶してたからね。全部聞いてるよアタシ。明日は精々覚悟して行きなさいなw」とうすら笑いでのたまう母親… あんたもグルかソウデスカ。

家族ぐるみで10年以上付き合ってると我が家もアイツの家も俺のプライベートは筒抜けだな。

つい1時間程前までは意気揚々と釣りしてたのにこの落差はないだろうと思いながら部屋に戻りベッドに倒れ込む俺。

「ああ、そういえば返事は来てないから俺の予定もOKなのかな?」

先程帰宅前に送信したメールには返事が来ていない事にちょっとした期待を抱きながら起き上がり、

PCを開いてお気に入りのメーカーの新作ルアーをチェックし、懐具合がちと気になるが大丈夫だろうと

まだ手にしてないルアーの画像を眺めながら明日の予定に釣具店を追加した。


まぁ後日談だがこのルアーでまさか命を繋ぐ事になるとは思いもよらなかったのだが・・・










初投稿になります。文章にお見苦しい点も多々あるとは思いますが生易しい目で見てやって下さい。

基本、更新出来るときは随時更新して行きたいと思います。

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