その5
その4に続き、彼女視点です。
「はぁ〜」
あたしは勢いよくため息を吐いた。
「疲れてますね」
「あ〜うん……何で嬉しそうなの?」
「え?」
「あたしが疲れてると嬉しいの?」
イライラをぶつけるように言ってしまった。でも、彼はさらりと受け流すように言う。
「良くわからないけど、普段無理して元気出してんじゃないかって、何となく思うんですよね」
「それで?」
「だから、僕の前だと無理してない感じがして嬉しいのかも」
「そっか」
彼がおもむろに私の手を握る。
「何してんの?」
「気を送ってます」
「あっそ」
「元気でましたか?」
「ん〜きみの方が元気になった気がする」
「た、確かに……」
だよね。嬉しそうだもの……。
「どうかした?」
彼が少しまじめな顔になって、なにやら考えている。
「……好きですよ」
「え?」
何突然言ってるかな? この子は……。
「今日はもう言いません」
「う、うん」
あたしが彼の言葉に戸惑っていると、突然抱きしめられた。そして、優しく頭を撫でられる。体の力が自然と抜けた。うわ〜やばい……。
あ〜ほんと、彼の言動と行動が予想つかない、まあ、良い意味で予想を裏切るのだけど……。
「元気分けてみました」
にっこり笑って彼がそう言うと、あたしから離れようとする。
あたしが咄嗟に言う。
「足りない!」
「え! じゃあもう少しこうしてますか?」
あたしは、返事の代わりに力を抜いて体を預けた。