表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

その1

「僕は好きですよ」


 彼女が珍しく、自分の事を卑下するような言葉を言ったので、つい言う予定の無かった言葉が僕の口から漏れた。

「なに?同情?」

「一応、本気ですけど」

「いちおう?」

「すみませんね。こういう気持ちは初めてなもので」

「それってあたしが初恋って事」

「そうですが」

「ふ〜ん。初恋って実らないものだよね」

「そんな事も言いますね……」

 これはふられたって事かな? 

 自分でも良くわからないが、特にショックを受けなかった。

「え〜自分の事卑下する言葉は言わない方が良いですよ」

「なんで?」

「言葉には力が有るので、本当の事になりますから」

「でも、あたしは自分の事嫌い」

 彼女の目を見て僕が言う。

「僕が生まれてきてから、たぶん何百人か会った女の人で、初めて好きになった人なんですよ。もう少し自信持って下さい」

「……」

「……」

 彼女が目をそらしつつぼそりと言う。

「そっか」

「そうです」

「あのさ、あたしのどこが良いわけ?」

「……わ、わからないです」

「あっそ」

「本気ですよ」

 彼女が急に近づいてくる。僕の目の前に顔が……ち、近い。

 僕が戸惑っていると、胸にそっと手を置かれた。

 ふっと笑って彼女が言う。

「大丈夫?」

 大丈夫なはずがない、この人は何をしているんだ!? 

 顔が熱い、確実に顔が赤くなっている事だろう。

 そして、彼女が何かを堪えるよう僕から離れると……。

「っくく、あはは」

 なぜか爆笑された。

「……」

 笑い終えると彼女が言った。

「あ〜笑った、笑った」

「酷いですね」

「ん〜と、お礼になんか一つだけお願い聞いてあげる」

「お礼? 別に何もしてないですけど」

「いいから、何か無いの!!」

「じゃあ、手を繋いで下さい」

「は?」

「ダメですかね?」

「そんなんで良いの」

「良いです」

 彼女が手を差し出す。僕はそっと手を繋いだ。

「その嬉しそうな笑顔は反則」

「え?」

「なんか趣味が変わりそう」

「……」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ