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勇者の剣。またの名を運命の赤い糸。

作者: 水芭蕉

 水晶岩に刺さった剣を抜いたものが勇者である。

 古代の歴史書にはそう記されており、確かに数百、千年以上にわたって魔王が現れると、勇者と呼ばれる者たちは世界各地の聖跡の一つに突如現れる水晶岩に刺さった剣を抜き、魔王討伐へと向かっている。


 魔王が現れたことを知る術は、魔獣の増加、天候不良、聖跡に現れる岩のように大きな水晶とそこに刺さった聖剣。

 これが揃うことで、世界中のだれもが、魔王の誕生を知るのだ。

 そして逆に、魔獣の減少、沈静化、天候回復、聖跡から水晶岩が消えることで、魔王討伐の成功を知る。


 また、いくつもの歴史書の記述によると、剣を抜き、勇者と呼ばれた彼ら、彼女らは、すべからく魔王討伐から戻ることはなかったらしい。


 魔獣が減り、天候が回復し、聖跡から水晶岩が消えても、旅立った勇者は戻ることがなかった。



 旅立った勇者も、仲間たちも戻らない。

 それは誰もが知っている事実だった。

 そして、当代の勇者に選ばれた29歳の彼女もまた絶望のままに旅をしていた。






「このままバックレてもいーんじゃないかと思うわけ」


 当代の勇者であるユウナはそびえたつ魔王城の門扉を前に呟く。

 ちなみに旅の仲間たちはとうの昔に離脱した。

 ユウナを気絶させ、魔王城の前へ捨てて行ったのだ。

 勇気づけてくれた魔法使い、なんとか生きて戻る手段を考えよう!とか爽やかに笑っていた騎士はあろうことかユウナを眠らせたまま魔王城へ運び、城門の前へ捨てて行ったのだ。

 この外道が!と叫んだところでおそらく彼らはもう新天地へ高飛びしている最中。羨ましいことに、縛る枷もない彼らは、名を変えて新しい人生を歩むのだろう。のたうち回ってクタバレ!と呪ったところで、誰もユウナを責めはしないはずだ。


 枷さえなければ、とユウナは右手に縛り付けられている聖剣を憎々しげに見る。

 放り捨てても、土に埋めても、焼いても、海へ投げ捨てても、聖剣はユウナが寝て起きると必ず右手にあらわれた。

 何度も、何度も、何度も。

 聖剣これがある限り、ユウナはどんな姿をしていても、勇者だと身バレしてしまう。

 捨てれば翌日には手元へ戻り、宿屋などに置いて出かけても数時間後にはいつの間にか足元に置いてあったり荷物に紛れていたり。

 しかも聖剣は常に微弱に輝いていて、布を巻いても箱に入れても、その発光が僅かに漏れてしまう。

 どれだけ隠しても、老若男女、誰が見てもユウナが聖剣を持っているのだとすぐに知られてしまう。

 おかげで宿屋に泊ると必ず最後の晩餐のごとき豪華な食事と部屋が用意してもらえる。これだけは不幸中の幸いだったとも思える。いや何だか体が旅の前よりも重くなった気がするから、やっぱり不幸かもしれない。


 それでも魔王の城の門前という自殺願望者のメッカに意識不明で捨て置かれたユウナが魔獣や魔物に襲われずにいたのは聖剣の加護が彼女を守っていたわけだ。

 いいのか悪いのか、ユウナ達は魔王討伐の旅に出てから一度も魔獣や魔物にエンカウントしたことがなかった。

 どうやら聖剣の微弱な輝きには魔を寄せ付けない不思議な加護があるようで、どんなダンジョンであっても、敵に出くわさずにここまできてしまったのだ。

 ユウナが魔王城の目の前何て世界最高のデンジャーゾーンで意識なく横たわっていても、かすり傷ひとつなかったのは、彼女をここに置いていった彼らが聖剣を右手に縛り付けて行った優しさのおかげだろう。ありがたくもないが。


 この聖剣のおかげで各地にあるダンジョン内の宝箱は制覇できたのだが。

 そういえば、とユウナは斜めにかけているカバンを開く。


「 マ ジ か ! 」


 いくつものダンジョンで手に入れたユウナの生涯年収以上の宝物は、一つの赤い宝石が付いた指輪を除いて全てが失われていた。

 まったくもって下種の極みだが、新天地で生きていくのに色々と物入りなのだろう。カバンの底で見つけた「すまない」と一言だけ書かれていたメモを可能な限り引き裂いて、地面にたたきつけて、何度も踏みつける。

 それでも気が収まらなくて、右手の聖剣で地面を滅多ざしにし続けたところで、息が切れた。


「こ…ころす…なにが…なんでも…!」


 カバンに残された指輪は、なぜかユウナにしか触れることができなかったから残されたのだろう。


 息が整ったところで、眼前にそびえる魔王城の門扉を見上げる。何度見ても絶望しか感じない。

 この門をくぐったら、自分は死ぬのだ。

 さながら地獄の門だ。行きはよいよい帰りは辛い。いや、帰りはないのか。


「…いくかー」


 どうせもうこの世界にユウナの居場所はない。

 どこへいっても勇者だと知れてしまえば、生きていけない。

 もしかしたらひっそりと山の中で暮らす手立てもあるかもしれないが、そこまで生きることに執着する気もなかった。

 


 ユウナは29歳だ。

 気が付けば未婚のまま、29歳になっていた。

 女性の平均初婚年齢が22歳のこの世界で、29歳は立派なき遅れだ。

 最近ではお見合いの話しも来なくなったし、弟が結婚するから家を出て行ってほしいと申し訳なさそうに父親に言われてもいた。未婚の姉が自宅にいると若い嫁の肩身が狭く、外聞が悪いそうだ。

 これが1年ほど前なら気軽に家を出ることができた。もともと薬草学者として研究機関に勤めていたから、自分一人だけなら生きていけるだけの生活能力はあった。

 けれど魔王が誕生してからの天候不安で薬草が育たなくなって研究するための薬草の仕入値が高騰したことと経済不安による研究所の事業縮小で、ユウナは18歳から10年も勤めていた研究所を解雇という名目で追い出された。

 やりがいがあって熱中していた仕事を奪われ、産まれてから住んでいた我が家を追い出されそうになっている。

 新しい家を借りようにも、とうのたった無職な女の1人暮らしは世間から冷たい目で見られるようで、いくら貯蓄があっても物件がなかなか決まらない。

 やさぐれたユウナは前後不覚になるまで夜な夜な飲み歩かなければ、ストレスでどうにかなってしまいそうだった。今思えば、どうにかなっておけばよかった。後悔先に立たず。

 けれど探せば同じような境遇の仲間もおり、少しずつだが、ユウナも立ち直り始めていた。

 前向きに生きていこう。そうだ、1人暮らしを始めたら犬を飼おう。

 引きこもっているよりも、外にいた方がなにかいい出会いがあるかもしれない。

 思い立って昼間に家を出ると、広場には水晶岩の形を模した飴の売店があった。

 それをみて水晶岩がこの町の聖跡に出現していたことを思い出したユウナは、せっかく前向きになった記念にと、聖剣を抜くイベントに参加してみることにした。それが転落人生の追い打ちだとも知らず、呑気に。

 鼻歌交じりに剣を抜くための列に並び、20分ほどでユウナの順番がやってきたので、まるでアイドルの握手会のような流れ作業で聖剣へ手をかけて、軽く握って引いてみる。


 ゴゴ


 鈍い音に驚いてユウナが手を引くと、聖剣はその勢いでクルクルと天へ舞い上がり、ストンと綺麗に地面へ刺さった。

 あまりのことに誰もが口をつぐむ。


 ユウナは「まさか自分が抜くわけがない」そう思って、イベントを楽しむためにやってきていた。

 どこかの正義感にあふれた誰かが聖剣を抜いて、魔王と討伐するのだと思っていて、自分には無関係だと、思い出になればいいくらいの気持ちだった。


 一拍の間をおいて、水晶岩を守っていた兵士たちに、逃げられないように両脇を抱え込まれてあれよあれよという間に王宮まで引っ立てられ、そのまま家族にお別れを言うこともできず、旅の仲間を押しつけられてユウナは魔王討伐の旅に出たのだ。


 まぁ、その仲間も今はいないがな!と心の中で吐き捨てて、ユウナは重い足取りで魔王城の門扉に手をかける。

 1人で押し開けることなんてできなさそうな3メートルはありそうな巨大な鉄の扉だ。


「あーやだなー。もー。」


 どれだけ嫌がっても、もうどうすることもできない。

 わかっているけど、今も逃げたくて仕方がない。

 重たい気持ちのまま、力を込めて扉を押す。


ピンポーン


 扉にはふさわしくない、間抜けな音が響く。


「は?」

『今開けます』

「へ?」


 どこからともなく聞こえた若い男性の声にユウナは首をかしげる。

 鉄の巨大な門扉を見上げる。

 首をかしげる。

 それを数度繰り返したところで、ゴゴ、と重そうな音がして扉が少しだけ開いた。


『隙間から通れると思うんで、遠慮せずにどうぞ』

「…え?」

『通れます?もう少しあけましょうか?』

「あ、いえ。通れます。大丈夫です」

『中に入ってまっすぐ進むと扉があるので、それを開けてください。あ、紅茶とコーヒーはどちらがおこのみですか?』

「コーヒーで」

『わかりました』


 どこからともなく声が聞こえ、重そうな門扉が自動で開いた。これが魔王の力か、とユウナは会話の穏やかさから目を背けた。

 ここで突っ立っていてもはじまらないか、と渋々、開いた扉の隙間に身をくぐらせる。

 少し狭かったのは決して旅の途中で贅沢三昧したからではない。

 そう思いたい。


 見るからにおどろおどろしい魔王城がそこにあると思い込んでいたユウナは、あまりのことに息をのんだ。

 まるでおとぎ話のような庭園と真っ白なお城がある。

 ぱちくり、と数度、目をしばたいて、イヤイヤこれはきっと魔王がみせる幻だと気を取り直して、先ほどの男性が言っていた通りにまっすぐ進む。


 おかしなことにこれほど大きな城でありながら、視界のどこにも、城を守るための魔人や魔物が現れることがなかった。

 聖剣が守ってくれているとしても、遠くに魔獣が見えることもあったのに、まるでこの城にはいないかのように、誰もいない。

 気にはなるが、前に進むしかない。ユウナは右手にまきつけられている聖剣をグッと握りこみ、歩き続けた。


 庭園を随分と進むと、小さな小屋が立っていた。

 おかしい。

 小屋の奥には城が見えるのに、正面には真新しい普通に平屋の小屋がある。煙突もあり、煙も出ている。しかも香ばしいコーヒーの香りもほのかに香っている。

 けれど声の指示通りであるのなら、真っ直ぐに進んで扉があり、それを開けろと言っていた。

 罠なら罠で構わないか、とユウナは意を決してドアノブを回す。


ガチャリ


「いらっしゃい」

「…は?」


 なんだここは。

 呆気にとられているユウナの目に飛び込んできたのは、短い黒髪の赤い目をした涼しげな眼もとの青年がコーヒーカップを二つ机に置きながら、こちらへ微笑んでいる姿だった。


「遠いところまでわざわざありがとうございます。まぁ、とりあえず座ってください」


 ダイニングテーブルの椅子を引かれ、ユウナは言われるがままに腰を下ろす。


「コーヒーは豆から引いてみたんだけど…あ、これお茶うけにクッキー焼いてみました。よければどうぞ」


 すすめられたクッキーはバターの芳醇な香りで大変美味しそうなのだが、なぜかお花の形をしていて中央部分に丸くジャムが乗っている。確かに美味しそうだが、ますます混乱を誘う。

 とりあえず進められるがままに、1枚手に取って食べてみることにした。毒入りだったらそれはそれで致し方ない。聖剣を持っていない左手で、クッキーへ手を伸ばす。


「……おいしい」

「口にあったようでよかったです」


 にこりと優しげに微笑んで、彼自身もクッキーに手を伸ばす。一口食べて、満足そうに頷いているから、おそらく上手く焼けたのだろう。


「あの…」

「はい」

「ここって魔王城ですよね…あなたは魔王ですよね…?」

「そうですね。そう呼ばれてます」

「えっと…」


 コーヒーとクッキーをご馳走になっておいていきなり切りかかってもいいものか、と思案したユウナは右手に縛り付けられている聖剣に視線を落とした。

 なにやら発光が強くなっているのは気のせいだろうか。


「あぁ、剣。そうでした、そうでした」


 ユウナの視線に気づいた黒髪の彼もとい魔王は、慌てて席を立ち奥の部屋へ引っ込んだかと思えば、聖剣のように発光している鞘を持って戻ってきた。


「はい、これに納めてください」

「え、でも」

「これにいれちゃえば、天気が悪いのも魔獣が多いのも全部おさまりますから」


 はたして信用していいものだろうか。確かに美味しいコーヒーとクッキーには毒は入っていなかったが、もしかしたらこちらを安心させて、聖剣から手を離させた瞬間にグサリと一突きされてしまうのではないだろうか。ユウナが疑わしい気持ちで魔王と手に縛り付けている聖剣を交互に見ていると、魔王はじれったくなったのだろう。ユウナの手と一緒に聖剣を握り、鞘へ強引に納刀してしまった。


「あぁっ!」

「そうだ。赤い石の指輪ってどこですか?」

「あ、あかいゆびわ…?」

「あれ?とってきてないですか?じゃぁこれからちょっと取ってきます」

「もしかして…」


 カバンから指輪を出して魔王へ差し出すと彼は晴れやかに笑った。


「なんだ、持ってきてくれてるじゃないですか。はい、左手出してください」

「ひだりて…」


 ユウナしか触れなかったはずの指輪に触れられたことに驚いて、いわれるがままに左手を出すと魔王は躊躇いなくその指輪をユウナの左手の薬指へはめた。

 指に仄かな熱を感じたかと思った次の瞬間、ユウナは魔王に唇をふさがれていた。

 彼の唇で。


「これからもよろしくお願いしますね」

「……意味わかんない!なに!なんなのこの展開!説明して!!」

「説明…ですか?」

「あなた、魔王じゃないの?!」

「魔王ですよ」

「私、勇者なのよ!」

「そうですね」

「勇者は魔王をたおして、世界を平和にするんじゃないの!?」

「いえいえ、勇者は魔王の伴侶ですよ」

「伴侶ってなによ!……はんりょ?」

「えぇ。この剣を抜いて、鞘を持つ魔王の元まで持ってきた人は、新しく誕生した魔王の伴侶です。世界がそう定めてます」

「え?だって魔王は魔獣を操って…人間を苦しめて…だから神は聖剣を人間に渡したんじゃ…」

「なんですか、その言いがかりは。魔人は確かに僕が治めるべき存在ですが、魔獣や魔物は知りませんよ」


 ムッとして眉間に皺を寄せた魔王は、とりあえず椅子に座ることをユウナへ進めた。

 どうやらお互いに、現状を理解しなくてはならないようだ。


 魔王は言うには、この世界にあふれている魔力の源が魔王の核であるが、生まれたばかりの魔王は核を制御しきれず、魔力を餌とする魔物や魔獣が増え、天候に影響を与えてしまうらしい。

 そしてそれを憂慮した神々や妖精王達が、魔王の力を安定させるために何が必要なのか知恵を絞りあった結果、魔王の力を制御するための器用な存在が近くにいればいいという結論に至った。

 さっそく魔人たちが魔王を支えるために名乗り上げたが、魔人とはとかく大雑把な存在だった。繊細な作業は向いていないのだ。

 そこでこまごまとした作業に特化した精霊などをあてがってみたが、今度は魔王の魔力が強すぎて、精霊が消滅してしまった。

 どうしたものかと頭を抱えた時、1人の神が人間はどうだろうかと言い出した。

 誰もが、確かに人間は器用だが、魔力に耐えうる器ではないと考えていたが言いだしっぺの神が連れてきた一人の人間を魔王へあてがったところ、驚くべくことに、万事滞りなく魔力が循環するようになった。

 拍手喝采。

 その場にいた神や精霊たちが、こぞって理由を問うたところ。


「魔王と相性のいい人間連れて来たら一目惚れしてさー。この人の悲しむ姿を見たくないって思ったらできてたらしーよー」


 愛は全てを乗り越えるのね。とうっとりする女神たちと、終わりよければそれでいいと鷹揚に頷く精霊王たち。

 さぁ解散しよう、と会議を終了させようとしていたが、伴侶を得た魔王が声を上げた。


「この人が死んだら、僕も死にます!人間の寿命は僕にそろえることができるけど、僕の寿命はどうにもなりません!」


 魔王はもともとは魔人だ。

 魔人も始祖をたどれば人間であり、高い魔力を持ち人間の数倍は生きるが、寿命がある。魔力の核を受け入れたとしても、寿命に変わりはない。

 神様たちや精霊王たちは再び額を突き合わせる。

 様々な意見を飛び交わせた結果、



「…魔王が誕生した時に剣を抜くことができたら相性最高とか…なにそれ…」

「ちなみにその指輪は僕の心臓ですから、大切にしてくださいね」


 机に突っ伏していたユウナは目をむいて左手にはまっている赤い宝石…魔王の心臓が付いた指輪を見た。


「とはいっても、それに触れるのは僕と貴方しかいませんけどね」

「じゃぁ、私がこれを壊したら」

「僕、死にます。ちなみに、貴方も死にます」

「はァ!?」

「さっき納付の儀式と口づけをしたので」


 魔王の心臓の指輪は、何代か前に聖剣を以て運命の相手が現れないことに絶望した魔王が自刃したことにより作られた、自殺予防の指輪だ。

 魔力の核を受け入れた魔人の心臓は、本人が決して取りに行けない場所へ移動して、聖剣が運命の相手をそこへ導く仕様になっている。ちなみに当人たち以外が触れられないのは盗難防止だ。間違って持って行かれたこともあったらしい。

 納刀の儀式は運命の相手に出会えたことを神々に知らせて水晶岩を消してもらうための合図で、口づけは魔王と伴侶の寿命をそろえるための、魔王の魔法ということだ。


「!!!」

「幸せにします」

「いやいやいやおかしいって。そもそも名前も知らないし、アンタ若く見えるけど幾つよ!?」

「シュヴァルツです。シュウと呼んでください。人間でいうと…80歳くらいですかね」

「はちじゅっさい!」


 シュウは一見二十歳そこそこの見た目なのに、ユウナの祖父よりも年上だ。


「あなたは?」

「ユウナ。に…にじゅうきゅーさい」

「29歳!魔人だとまだまだ子供の年齢じゃないですか…!僕、決してロリコンではありませんから!」

「いや、うん…大丈夫」

「えっと…ユウナちゃん…ユウナさん?」

「ちゃんは止めて」

「では、ユウナさん」

「うん」


 シュウは咳払いをして、ユウナの両手を包み込む。


「ずっと運命の相手が聖剣を持ってきてくれるのを待っていました。幸せにします。結婚してください」


 赤い紅玉のような瞳に真摯に見つめられて、ユウナはとくりと胸が高鳴るのを感じた。


「…ま、まずはお友達からお願いします」






 水晶岩が聖跡から消えたことにより、民衆は勇者が勝利したことを知る。

 けれど勇者はいつまでも戻ることはなく、歴史書は事実のみを伝える。


【聖剣に選ばれた勇者は、世界に平和が取り戻されても、終ぞ魔王の元から戻ることはなかった。】





勇者の剣って何を基準に勇者を選んでるのかなー?と考えてみた結果です。



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