寒い空気の中で。
「期待、していいよ。」
私が呟くと、彼は私を抱きしめた。
それはそれは力強くて、壊れてしまいそうだった。
だけど、振りほどく気にはなれなかった。と、いうより、ずっとこのままでいたいような気分だった。
「…今までずっと気が無いような素振りしといて、そんなのアリかよ。」
弱気な口調のくせに、抱きしめる力はもっともっと強くなる。
昔は離れて歩いていた。
なのに今は、こんなに近くにいる。
でも今考えると、なぜあの時過去に戻れたのだろうか…。
あの時彼も私も死んだはずだった。
彼は私によって、私は彼の銃によって。
…もしかして、彼の持っていたもので自分を殺す事によって過去に戻れるのだろうか。
いや、他にもたくさん可能性がある。
彼の死んだすぐ後に自分を殺す事…。
とにかく、私の死が過去に戻るきっかけになったのは絶対であろう。
「…。」
目をつぶる。
彼は、少し震えながらも私の唇に唇を重ねた。
冬景色の中でキスする私達は目立つようで、数少ない通行人はみんな私達を見る。
「……ホントに、かぐやだよな?
月夜かぐやだよな?」
ちょっと顔を赤くしながら早口で確かめる彼は、きっとだれから見ても可愛く見えるだろう。
「そうだよー!なんならなんか確かめる?」
からかいながら言うと、彼は「じゃあ…」と言って私のほっぺをつまむ。
そう、彼は幼い頃からなぜか私のほっぺをつまんでくる習性がある。
なんか、柔らかくて好き…とか前に言っていた記憶はあったがここ最近は触られていなかった。
久しぶりだったので触られた時びっくりしたが、力を抜いて触っているのがすぐ分かって力を抜いた。
「…この柔らかさ…、かぐやだ…。」
だからそう言ってるでしょうが。と呟きながら私は微笑む。
彼は笑って、私をお姫様だっこする。本当にいきなりできゃっという小さな悲鳴を上げ、足をバタつかせる。
自分の顔が赤いのを、寒さのせいという事にして顔を伏せた。
「嬉しすぎるぜー」
…もう。
ため息を吐こうとしたが、幸せが逃げて欲しくないのでやめておいた。
この幸せが永遠に逃げませんように。
しかし、私はハッとした。
私がどれだけ変わっても歴史は変わらない。
…つまり、戦争は起こる。
キュッと彼の服を掴む。
もし、どんなことになったとしても私は彼を好きでいる。
あのような事はもう起こさない。
そう決意して私は笑う。
彼も笑う。
ふいに目が合って、お互いに微笑む。
やっぱり、顔が赤いのは寒いせいだ。




