第二十二話。未来世界の吸血鬼
治安出動。警察や軍だけでは対応できない場合、民間部隊も増援として出撃する必要がある。
だが、警察や軍でも対応しきれない敵には民間人に過ぎない彼らにできることは少ない。
セリカ(芹香)の大切な人もまた。倒れた。
「セリちゃん! 治安出勤! 」「ええっ? 」
散弾銃を片手に駆け出す真由美に怯えながらついて行くセリカ(芹香)。
「警察の手が足りないっぽいね。私たちまで出る事態だし」
「け、け、け。『眷属』ですか? 」「……」『眷属』を怖れる純血に真由美は嘆息した。
「吸血鬼っぽい」「ええっ? 」
「セリちゃん十字架ッ! 」「はいっ! 」十字架を受け取るセリカ(芹香)。
じゅ。
「や、や、火傷しましたっ! 吸血鬼攻撃用に十字架を加熱したんですかっ? 」
「そんな悪辣な悪戯、するわけないでしょ……」真由美は呆れた。
そういえば、この間案内所交番に差し入れされた桃を食べて血を吐いて倒れたっけ。
真由美は大量の白木の杭を発射する特殊弾丸をショットガンに詰め、セリカ(芹香)を伴って駆け出す。
「きたか。セリカ(芹香)ちゃんがいると助かる」
憲兵の寺嶋は真由美とセリカ(芹香)を見て安心したように呟いた。
人間全てが軍属であるこの世界では、憲兵の役割は大きい。
「警察は? 」「絶滅だろうな。指揮は俺が取る」
「寺嶋さん」「ん? 」「絶滅って……」震える声のセリカ(芹香)。
「そういうこともある。軍が来るまで持ちこたえる」あるいは、退却を指揮する。
「今は昼間ですがっ?! 」「昼に行動できる皮膚状防護服が開発されている」
「帝都観光。案内所交番より二名」「寺畑軌道。沿線防衛隊より七名」
「各員、配置につけっ! 」『はいっ! 』
殿は、俺と、『帝都観光』二名が担当する! 『寺畑軌道』は敵を引き付けて……逃げろ。
背後から俺たち三名は強襲! その後撤退戦だ。
吸血鬼はダークエルフと戦えるほど恐ろしい種族とされる。
警察が全滅している今、民間部隊ができることは「一般人に被害が及ばないように逃げる」ことである。
「ジャスティンさんたちは」「仕方ないわよ」
聖騎士達は彼女たちが治安出動する前に何らかの通信を受けて大慌てでどこかに行ってしまった。
監視対象のセリカ(芹香)を放り出して。である。
「きたぞっ!!!!! 」
犬の体をした人間。その両目からは血の涙を流している。
「コロシテクレ」人間の口が言葉を紡ぎ、セリカ(芹香)たちに襲い掛かってきた。
真由美のショットガンが複数の白木の杭を放ち、
セリカ(芹香)の三次元映像機が吸血鬼よけの陣形を描く。
「斬ッ! 」
寺嶋が『魔剣能力』を発動。『言霊』が文字となって寺嶋を包む。
百万の経を乗せた一撃が人面犬を構成する呪詛を砕き、灰燼に戻した。
「終わりですか」「今のところは」「……気をつけて。セリカ(芹香)ちゃん」
強力な『眷属』には強力な『親』がつき物だ。吸血鬼には特にその傾向が強い。
しかし、セリカ(芹香)は我慢できずに戦場となった建物の中に飛び込んだ。
死屍累々の血と肉の塊にセリカ(芹香)は胃の中の物を全て吐き出しながら親しい人の姿を探す。
「由香さん! ジャスティンさんっ?! あとついでに常勝さんッ?! 」
「ついではひどいぜ」明るい声がセリカ(芹香)の耳に届く。
「なんとか、生きていますよ」苦笑する聖騎士にセリカ(芹香)は抱きついた。
「ちょ? ちょっと? 楼蘭人さん? 」「よかったっ! 」
「よくない」「ああ」
二人の顔と、この場にいない人間。
「由香がやられた」




