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SeLica ~Who am I ? ~  作者: 鴉野 兄貴
お父様。お母様。セリカ(芹香)のお仕事が始まりました

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第十七話。社員研修。開始

「社会人の心得はなんだ? 」

「えっと。やはり新人である以上、自分を覚えてもらうことから」

「殺される前に殺せっ! 仕事はそれからだっ! 」また変な奴が出てきた。

 「弾倉交換が遅いっ! 」

ピシッ! とセリカ(芹香)の手首に指示棒が当たる。

「痛ッ……」手首を押さえてうずくまるセリカ(芹香)に。


 「色仕掛けはワシには通じんぞっ?! 立たんかぁああああああああッ??! 」

白髪の気の良さそうなご老人は豹変しており、鬼教官になっていた。

白河であった。


 どうしてこうなった。

セリカ(芹香)は涙目で今日起きたことを振り返ろうとしたが、

「ボーとしていて『眷属』から身を護れると思うなっ?! 犯される前に殺せッ! 殺される前に殺せッ! 」

白河のビンタがセリカ(芹香)の頬に直撃した。回想に入れさせてください。白河軍曹殿。


 セリカ(芹香)の銃は真由美が見てくれたものだが。

「……数ばかりで豆鉄砲ではないか」真由美もそういったのだが。

ちなみに、弾倉に15発装填可能である。


 「軽くて、弾の多い銃」がセリカ(芹香)の要望だった。

真由美は夢路が異世界から持ち込んだ銃、「デザートイーグル」を手に「これくらいは必要じゃないかしら」と言ったがそれは遺伝子強化人間の彼女だからであって、2kgもある銃を日常的に持ち歩くようなことはセリカ(芹香)には不可能である。

余談だが真由美の銃は44マグナムの1.5倍の破壊力がある50AE弾を使用。弾倉には七発弾が入る。

弾薬の補充は夢路任せなのが泣き所である。


 「ぜんぜん当たっていないではないか。教練はどうしたのだ? 銃の使い方はわかるな? 」「知りません。私は通信教育で育ちました」

軽く真由美から講義を受けたが、そもそもダークエルフは銃を好まない。種族的傾向である。

魔力を操る彼らからすればたくさんの釘を握って適当に投げたほうが高威力、高射程、高精度だからだ。


 「はぁ? 何処のお嬢様だ」白河は苦笑する。

「撃ったら手を動かすな。しっかり保持しろっ! 」「はいっ! 教官! 」

「手が動いているっ! 止めを刺したら5回止めを刺せッ! 手がぶれたら連射できんぞっ! 」「は、はい。教官殿! 」

「豆鉄砲を使うなら全弾当てろっ! 沢山撃てると甘えるな! 一撃必殺を十五発連射だっ!」「はいっ! 」「いい返事だっ! 弾倉交換は速やかにっ! 15発撃ちきる前に交換しろっ! 」

「空になってから交換するなぁああっっ?! 無防備になるっ! 眷属はその瞬間を狙っているぞっ!! 」

16発を撃ちきった時点でセリカ(芹香)の手は既に震えだしていたのだが、

弾倉を5回交換するまで白河の叱責は止まることがなかった。


 「姿勢を変えて、あと五回」

白河は弾倉を10セットセリカ(芹香)に渡した。つまりこれを撃ち切れということである。

結局セリカ(芹香)の「初仕事」は夜が更けるまで白河と実弾で銃撃戦をすることで終了した。


……。

 ……。


 「いやぁ。セリカ(芹香)ちゃんが可愛いからついつい気合が入っちゃった。ごめんごめん」

ニコニコと笑う元の好々爺に戻った白河。セリカ(芹香)は泣きそうな顔でにらんでいる。


 「ふざけるな」セリカ(芹香)の口元が勝手に動いた。

「私は砂利をまとめて握って投げたほうが早いし強い」


 白河は『芹香』の様子の変化を単純にキレただけと解釈した。

『純血』の魔族であるセリカ(芹香)の殺気を受けてもニコニコしている白河。只者ではない。

「砂利より銃だ。魔導否定の力を持つものもいるぞ」「それは否定しないが」

「それに、銃は人間をこの世界最強の存在にしている武器だ。

知らないわけではなかろう。子供でも銃を取れば戦士になる。お前たちの魔力とて万能ではない」

「……」「お前は筋がいい。銃も覚えておいて損はない」

黙り込む『芹香』に白河は楽しそうに銃を扱う利点を強調する。

『銃を取れば人間は世界最強』と言い切る白河だが、この世界の人間の大部分はそう思っていない。

しかし、ダークエルフには種族的な弱点がある。眷属を作る事は簡単だが純血が生まれることはまれだ。

「判った。努力する」「そうしなさい」


 回想に入る。

挨拶を終え、セリカ(芹香)の本日の予定をしつこく聞いナンパしてくる河田先輩に閉口しつつ。

セリカ(芹香)は社員研修のために移動し……「なんですか。ここは」

射撃場だった。


 「おっ! きたね! 」

ニコニコ笑う老人。白い髪に小柄な体格の好々爺。ちなみに大田より小さい。

「あ。白川さん。こんにちは! 」「? なぜ君は私の名前を知っているのだい? 」


 「朝、真由美さんと一緒に挨拶しましたが」「……そうか。すまんね」

白河はセリカ(芹香)の全身を舐めるように見る。とはいえ、別に性的意図があるわけではない。


 「歳は? 」「18になります」「名前は? 」「セリカ(芹香)・九頭龍クトゥルー楼蘭人ローラントと申します」

白河は苦笑いした。「私の娘も芹香っていうんだ。奇遇だね」

そういってセリカ(芹香)の周囲を舐めるように周回し、体格を見る。

使用する武器を選んでやる必要があるからだが。


 「では、君の腕と銃を見せてもらおうかな」

「あ、あのぅ……」セリカ(芹香)は疑問を口にすることにした。


 「社員研修といえば、応対とか、礼法とか、観光地の知識とか、お茶の汲み方などを」

「礼法で敵が殺せるかっ!!!!!!!!!! 」白河は豹変した。


 「まず戦って勝てっ! 生き残って初めて仕事は成り立つっ! 」

むちゃくちゃである。

絶句するセリカ(芹香)。「ふむ。よくわかっていないようだな。今からみっちり仕込む」


 芹香が銃の握り方もまともにできないことに気がついた白河は、

激怒しつつも丁寧に握り方から弾倉交換、補修や清掃の方法を教えてくれた。

「銃撃戦のさなかでも清掃、補修はできるようになるように」

無理です。


 「ぜんぜんあたってないな。もっとしっかり持て」「はい」

セリカ(芹香)はしっかり両手で銃を保持し、指導されたとおり腰を入れて撃つ。

「命中しました」「死ぬほど銃の才能がないな」隣のターゲットの胴を撃っていた。


 その後、白河から「筋がいい」といわれるまで訓練は続行された。

ちなみに、セリカ(芹香)の「筋がいい」部分は「度胸」らしい。

あまり、婦女子的に嬉しくない。回想終わり。


 「白河さん」「ん? 」

「手が、動きません」「ははは。最初は皆そういうよ」

「おじ様から『簡単な社内礼法』という本を頂いたのですが」「いい叔父さんだな」「ええ」

「しばらく、訓練ですか? 」「そうなるな」泣きたいとセリカ(芹香)は思った。


 「手を抜くつもりはないから、そのつもりでね」「はい……」

そういえば。セリカ(芹香)はつぶやいた。「白川さんの娘さんは」


 「死んだ」

白河は苦笑いした。

「魔族の眷属に犯されてね。頭が吹き飛んで内臓が飛び散っても他人を犯しつくし殺しつくす為に暴れ続けたから」


 「私が、トドメを刺した」

白河の表情は。読めなかった。

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