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SeLica ~Who am I ? ~  作者: 鴉野 兄貴
第二部。お父様。お母様。御元気ですか。セリカ(芹香)は今からくじけそうです。

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第ニ話。私は負けない

彼女の心の支え。小さな安らぎは小さな家庭の中に。

しかし、その位置は徐々に魔族に奪われようとしている。

彼女は決意する。奪われないことを。闘うことを。

 「正気。……ですか御姉様方」

適恵(カナエ)の唇はその言葉を出そうとしたが、

あまりの衝撃ゆえ言葉は言葉にならず、

幸か不幸かその声はセリカ(芹香)の耳に届く事は無かった。


 ――― 姉二人はこの魔物の魅了の術にかかっているのではないか。


 小父様は人間だ。正真証明の人間だ。

試験管で産まれた下の姉や、両親の遺伝子を元に作成された上の姉とは違う。

自分と同じく、いまどき珍しい“普通の人間”だ。

そんな小父が彼の説明通り闇の種族と親子関係にあるはずがない! ―――


 彼女はいままで姉二人の言う事に素直だった。素直過ぎた。

素直というより盲目的に服従していただけかもしれない。


 姉達と小父のいう、「小父の娘をしばらく小父共々うちで居候させる」という話。

これは二人の姉と小父に対しての不信感を覚えるには充分過ぎる。



 だが。遅い。

自分は二人の姉の頼みとは言え、闇の血族を家の中に『自ら招き入れてしまった』のである。

もはやこの家の中にあるあらゆる結界はこの闇の一族には機能しない。


 彼女は小父から武芸を一通り学んでいたが、

姉二人と違ってそれを実際に使った事はまったく無い。

それどころか内気で淋しがりやの彼女は、学校では同級生の執拗ないじめにあっているほどだ。

闘う為に必要な闘争心がほとんど欠如している彼女には、

たとえ姉二人と小父を惑わす闇の血族とはいえ、このような。


(適恵はセリカの“魅了の瞳”の影響を受けぬように微妙に視線をずらしてセリカを見た)


……愛らしい少女を殺す事など出来ない。

適恵の唇は自然にこういう言葉を放った。


 「御食事にしましょう。御姉様」

彼女は。適恵はかつて無い無力感を感じながら、食事の準備を始めるのだった。


 彼女の思いとはうわはらに、

彼女の両手は調理という一連の動作を的確に行っていく。

調理場の片隅にネコイラズがあったのを思い出した彼女だが。

遂にそれが食事に入る事は無かった。


 適恵が全ての食事の準備を終えた頃には、

居候の癖に一番風呂を終えた夢路が彼女の作った漬物を肴に、

何処からか持ってきたのか分からぬ大吟醸を呑んでいる。

ここまではいつもの事だが。


 適恵の足が止まる。


夢路の隣――彼女が普段座る場所だ――には、

あの闇の一族が(かなり遠慮して。だが)座っている。


適恵の居場所が。無い。


「いやぁ~適恵(カナエ)の漬物は絶品だな! 」と相変わらず無神経に叫んでいる夢路。

セリカ(芹香)は遠慮してほとんど口につけていないのに、居候の分際でよく食べる。


 和服に割烹着(かっぽうぎ)姿の適恵(カナエ)は無言でおひつに入れた御飯をよそおいなおした。

ありがとうと叫ぶが早いか、ガツガツ食べる夢路に真由美は嘆息した。


 「よく食べるわね」

上の姉のこの一言は勿論厭味だ。

婉曲的に言っても通じない相手なのは姉とて百も承知であるはずだ。


 だが。上の姉は昔から“小父にだけ”は狂暴で厭味にふるまい、

子供のように感情を剥き出しにする傾向がある。


「まぁな。でも、食わなきゃ死ぬぜ?」

厭味を言っても無駄な相手なのだが。


「小父さんも死ぬの? 」

無言を保っていた智魅(トモミ)がふと漏らす。

200年生きていたり、魔族弐体と正面から切り結んで生還するような小父なので説得力がない。


 「当然だろ!?? 」

と夢路は叫ぶとちゃぶ台に大きい音を立てて湯呑をぶつけた。

小父は時々そうやって高い茶碗を破壊する。


 「おかわりですか? 」適恵が訊くと「おうよ! 」と元気な返事が返る。

小父の無邪気な笑みを見ると適恵(カナエ)はいつもつい微笑んでしまう。


 一方。セリカ(芹香)が呆れているのを見て、真由美は苦笑しながら耳打ちした。

「呆れるでしょ? 」セリカ(芹香)は何気なく返した。「なら、追い出したらどうですか? 」


 別に意識した発言ではない。

だが、真由美はちょっと頬を赤らめて言った。

「ま。まぁ。アレはアレで賑やかだし」


 「適恵(カナエ)! おかわり! 」

無邪気な笑みを浮かべて三杯目のお代りをねだる夢路。


 「はい。わかりました。小父様」


 普段ならにこにこ笑って、小父の隣に座り、茶碗を差し出すのだが。

夢路の隣にはセリカ(芹香)が(かなり小さくなって)正座している。

ちなみに。当然といえば当然だが、芹香は無神経な夢路と違い、遠慮して一口も食べていない。

適恵は少々戸惑った表情を見せた。


 そして。

適恵の動きが止まっているのを不思議そうに夢路は見上げ、

放心していると判断した夢路は、適恵に礼を言うと、適恵からご飯と幸の物を受けとる。


ごと。


ご飯と幸の物がセリカ(芹香)の前に置かれた。

「セリカ(芹香)。おまえもしっかり食って大きくなれよ」

適恵の笑みが凍った。


 「私は。その」

流石にいきなり人の家に押しかけて、同じちゃぶ台でバカバカ食べるほど彼女は無神経では無い。


 「ちゃんと食べないと、おおきくならんぞ。

まぁ、おれが二十歳の頃と比べると、日本婦女子の背は高くなったがな! 」


 夢路の笑い声が頭に響く。

適恵にとって安らぎの源である小父の笑い声。

だが。それがここまで不愉快に感じたのは、産まれて初めてだと適恵は感じた。


 適恵は小声で呟いた。

「私も。食べます」

「? 」「?? 」「??? 」


 そういって自棄になったように食事を口に運ぶ様は普段おとなしい彼女とはまったく違う。

むせながら無理やりのように御飯とおかずを食べる適恵に三人は不思議そうな顔をしていた。


 本当は泣きたかった。

薪(マキ)小屋か井戸にいけば誰も気がつかないはずだ。

しかし、彼女はここから立ち去りたくなかった。

もし立ち去ったら、今まで自分が座っていた場所が全て無くなってしまう気がしたからだ。

逃げたくない。泣きたくない。


 彼女は気がつかなかった。

それは彼女に欠如していたものである事に。


 何度もむせながらごはんを食べるというより飲み込み、

味噌汁をあおるように飲んで舌と口の中を焼く。

普段の彼女の行儀よさとはうってちがった、その鬼気迫る食べ方に三人の両手が止まった。



「適恵? あなた普段はほとんど食べないじゃない? 大丈夫? 」

真由美が心配そうに声をかける。

「別にいいんじゃ無い?適恵はもっと肥らないとダメよ」

智魅はそういって奥から明太子を出してくる。


 呆然としていた夢路だが、明太子には目が無い。

「お。博多明太子か!?? 俺にもくれ! 」といって、

“にゅっ”と茶碗を持った手を智魅に伸ばし、おかわりを頼む。


 「……」

適恵の目がすぅっと細まった。

適恵は。言った。


「小父様。お茶がいいですか。お湯にしますか」


「いや。おかわりを」

夢路は不審がる目を適恵に向けた。普段の彼女とは明らかに違っていた。


 適恵の笑みは相変わらず優しい。が。目は笑っていない。

御飯粒のついた愛らしい小さな唇が動いた。


「御湯にしますか? 御水にしますか? 」

「水でいいです」

流石の夢路もここまで言われれば遠慮することを知っていた。


 真由美と智魅は御互いの顔を見合わせた。

「信じられない」御互いの顔にはそう書いてあった。


 普段は夢路が一方的にまくし立て、

真由美が五月蝿いと叫び、

智魅が真由美と夢路にチャチャをいれ、

飛び交う物を適恵がキャッチして回る、

それなりに賑やかな食卓なのだが。

……今日に限ってとてつもなく、空気が重かった。


 夢路は漬物で茶碗を洗い、ちびちび水を飲んでいる。

真由美は戸惑った様子で食事を行う。

普段怒鳴ったり、色々言う対象が黙っているのだから仕方が無い。


 セリカ(芹香)は本当に小さくなっている。

勿論食事も食べていない。


 だから、セリカ(芹香)の小さくなったおなかが、

「くぅ」と可愛らしい音を立てた。


くすっ。


 智魅は笑った。

「仕方ないわね」


 沈黙を破った智魅は適恵に一言。

「適恵。ちょっとあとで私の部屋に来て」


 「はい。喜んで」

反射的に答えてしまう適恵に智魅は苦笑して、

「断ってもいいのよ」と言った。


「お断りします」明言。


 真由美が驚いた目を適恵にむける。

適恵が自分の意思を伝えるなど今までなかったことだったのだ。


 上の姉のガサツさと、下の妹の繊細さを見て育った智魅は外見に反した類稀なる気遣いが備わっている。

当然ながら、妹の豹変の原因も即座に察した。


 「じゃ、この場で言うわよ。これは私が知ってる限りの事だけど! 」

智魅(トモミ)は大仰(おおぎょう。大げさの意)に両手を広げ、一気にまくし立て出した。

その大げさな仕草にその場にいる皆の視線が集まる。


 「我らが親愛にして無能なる小父サマは、

セリカちゃんの身柄をセリカちゃんのご両親から頼まれたの!!! 」


「誰が無能だ」と夢路は毒ついたが、

真由美に「誰が無能じゃないの? 」と厭味で返された。



「本当はちゃんとした里親がセリカ(芹香)ちゃんにはいるんだけど!

…あ、セリカ(芹香)ちゃんと呼ぶね? いいでしょ? 」

セリカ(芹香)。智魅の勢いに押されて首を前後に振る。


「帝都にセリカちゃんがいる今だけは!

我らが無駄飯ぐらいの遥夢路少尉どのが引き取ることになっているのよ! 」


 そして。芹香に聞こえぬ様、息を吐き切ってから適恵に耳打った。

こうすれば声が他人に漏れる事は無い。


(それから、姉さんにも私にも「魅了の瞳」は通用しないわ。知ってるでしょ? )


 闇の一族の血を呑んだ『眷属』には「魅了の瞳」のような基本的な『チカラ』は効かない。

智魅はまた立ちあがると大げさに小首を傾げ、こめかみに指を当てた。


 「されど、ああなんたる悲劇! 我らが小父さんには、自分一人養う甲斐性だってありゃしない! 」


 「どういう意味だ」

夢路が毒づくと真由美が「そのままじゃない」と返す。


 「そこで、この子を哀れに見た我らが御姉様が、連れて帰ったという次第! 」

智魅のやかましさに一同は眉をひそめた。


 「いつぞやの犬といっしょにしないでよ! 」

怒るのは真由美だ。上の姉は色々よく分からないものを連れ帰る癖がある。


 「ああ。可愛そうなセリカ(芹香)ちゃん。今夜私が慰めてあげるね! 」

そういって唐突にセリカ(芹香)の背後に回りこんで、大げさなそぶりでセリカをいきなり抱きしめる智魅。

おもわず小声で叫んでしまうセリカ。


 すかさず、妹の優秀な頭脳に鉄拳を飛ばす真由美。

それを見て、素早くちゃぶ台の上の食事を避難させる適恵。これは無意識でも出来る行動だった。


 ひと騒動おわって。

「しかしまぁ。相変わらずたいした記憶力だな」と夢路が呆れる。

適恵は知らないが、夢路が三人の両親に愚痴っていた時期は智魅が一歳あるかないかの時期だったからだ。


「私はなんでも覚えているわよ。例えば」

そういって智魅は、恥らうような視線を夢路にむけてこういった。

彼女がこういう視線を他人に向けることは、実は珍しい。


「乙女の秘めどころを。柔肌を。弄んだ責任をいつ取ってくださるの? 少尉どの? 」

全員の顔が一気に紅潮した。


「あ、あ、あなたは。なんてことを」真由美が拳を握り締める。

適恵は頬を赤らめて俯いてしまった。


 激しく気まずい雰囲気と沈黙を夢路が破る。

「四人ともオシメかえただけだろ!!! そんなに記憶力があるなら糞尿の始末ぐらいしろ! 」

転生チート主人公でも、オシメの交換だけは出来ないのが定番だぞ。夢路。


 適恵はおもわずセリカ(芹香)と目をあわせてしまった。

セリカ(芹香)は美人だ。少々幼さが残るが、今までで見た誰よりも美しい。

無表情なら冷たい美貌の持ち主で通る。

しかし、その可愛らしい笑みはその冷たさを吹き飛ばしていた。


 セリカ(芹香)も適恵と目があった。

小柄で華奢な体に愛らしい表情。

首筋で切りそろえられた艶やかな黒い髪に白い肌。

姉と大違いな印象だが何処か似ている。


思わず二人はくすくすと笑いあった。


 和やかになった雰囲気の中で、

「ち」と智魅は残念そうに言って舌を出した。


 「責任とって結婚してもらおうと」「お前、俺の年収知ってて言ってるのか? 」

即座に文句を言う夢路に「ふふふ」と微笑む智魅。

この下の姉はいつもどこまで本気なのかわからない態度と行動を取る。

「紛らわしい」と呟いた真由美の手には。大きな中華鍋が握られていた。


 「ねえさん」

智魅が額に手袋(下の姉は食事をしていても薄い布手袋をしている)で覆われた指を当てた。


「お姉様」

「あのな。真由美」

それで夢路を殴るつもりだったようだ。流石の夢路でも中華鍋でぶん殴られたら痛いと感じる。


「真由美さん」

芹香も呆れるしかない。

「どこから、そんなものだしてきた(の? ですか? )!!! 」

重苦しかった食卓にいつもの笑い声が戻ってきた。




 「……中央帝都政府速報です」

勝手に古びたテレビのスイッチが入る。


「我ガ帝都軍。南極戦線ニテ、資源強奪ヲ欲スル強欲ナル列強ヲ討チ下ス。勝利近シ。

南阿弗利加(南アフリカ)開放戦線デハ…(中略)アパルトヘイト打倒ノタメ、帝都軍奮戦ス。

(中略)…黒人同胞トノ連帯強マル。八紘一宇ノ理想適ウ時近シ。

濠太剌利(オーストラリア)デハ、昨日、白人反乱軍……」

春先で風の音しか聞こえなかった郊外の家に、けたたましい進軍曲が流れる。


 真由美はウンザリした表情を見せた。「またか」

それは「おお。やれやれ!」と夢路が叫んでいる事と好対照だ。


 智魅は特に言う事は無いらしいが、

茶の間に流れる勢いの良い曲と勇猛に闘う帝都軍兵に冷たい瞳をむけている。

適恵はただ、死んでいく敵味方の霊に祈りを捧げ、茶碗を置いた。


真由美は勇猛な音楽にウンザリしながら席をたって、音量を下げた。

そして一言。


「そんなに有利なら既に勝っているわ」

(適恵が「御姉様」と制止したが真由美は続けた)


「南極は泥沼。南阿弗利加は第弐のインパール。

濠太剌利なんて支配者が白人から我らが“剣の魔王”が強力な発言力を持つ

アボリジニ政権に変わってるだけじゃない。見たくも無いわ」

といって、真由美が電源コードに手を伸ばした。


 が。


「人が小さな箱に入ってますが」

セリカ(芹香)のボケに適恵、彼女の姉、全員がすっころんだ。


「おまえはテレビもしらんのか!!! 」


もちろん。知るわけが無い。


「セリカ(芹香)さんは電映受信機を存知無いのですか?! 」

これは適恵にも意外だった。


「セリカ(芹香)ちゃん、それはあまりにも」

智魅がちゃぶ台に優秀な頭をぶつけながらうめく。

「……」……真由美は喋る気力も無いらしい。


ピンポン♪ パンポ~ン♪


軽くて明るい音楽が急に流れた。

突如画面が切り替わる。


少々露出度の高めの、明らかに変わったデザインに明るい色彩の衣装を身にまとった可愛らしい少女が大写しになる。


「はい。笑魅(エミ)です!

皆さん。お元気ですか? 」


 そういってカメラアイが遠ざかり、少女が元気よく飛びあがる様子が移される。

「お~♪ えみちゃ~~ん♪ 」といって意味無く拍手する夢路。


「今日は政府広報のお仕事できちゃいました♪ 」カメラが近づく。


「はい。この写真をみてみましょう! 」

大きなパネル二つが背後に現れる。


 「右は麻薬中毒患者の顔で~す♪

左が、アカの方(現在療養中)で~す♪ 」


 にっこり笑う少女。

「両方とも、目がいっちゃってまーす♪」


ハキハキとした語り。


「アカは病気です♪ 麻薬無しではるかかなたに意識がとんじゃいまーす♪

そして当たり構わず妄言を繰り返す現代病で~す♪ 『神』の実在をいまだみとめませーん♪


 宗教なども考えもせず“麻薬だ”の一言で断じて跳ね除け、

貴重な遺跡をぶっ壊しちゃいます♪ 」


「本人の頭の中にはだれもが平等な理想社会が広がっていますが、

現実は本人以外の存在を認めない為、結果として死体の山を量産しようとします♪ 」


そういって「こわいこわーい♪ 」といいつつ泣き真似をする。


「職場にアカがいる時! 」

そういって横から大きなボードが出てくる。

少女はバカでかい黒ブチ眼鏡をつけると、

教鞭でボードを「びし! 」と打った。


「政府はアカの存在を認めています!

けっして彼らの思想信条の自由を侵害しないでください♪ 」


「アカは個人個人でいる場合、現実を見る勇気は無いけど、理想世界を夢見る優しい人です♪

そんな人をいじめちゃだめ♪ エミとの約束だよ♪ 」

そういって小指をつきだし「ゆびきりげんまん♪ うそついたら♪ 」と唄う。


「でも、アカは群れようとします!

団結せよ!と叫び、人々のこころの弱いところをつき、

アカを移そうとします!アカは伝染しま~す♪ 」


 夢路が呟いた。

「おれが若い頃はこんな珍妙な宗教はなかったんだがなぁ。まぁヤソはいたが」

真由美はあきれたように返す「いつの時代よ」


「そして、最後は当たり前ながら内部分裂! 仲間内で虐殺しあいます♪

そんな悲劇を防ぐべく、皆さんの協力が必須です♪


ひとぉ~つ! アカは放置しましょ~♪


ふたぁつ! アカの婚姻は認められていますが、アカが子供を養育すること、

地域の子供の面倒をみることは児童虐待になりま~す♪

放置する周囲の人間も児童虐待として扱われます♪

速やかに、虐待の現場を見た場合児童相談所にご連絡を~♪


アカがあなたや身の回りの人を何処かに誘い出そうとしたら断り、

速やかに上司の判断を仰ぎましょ~♪

拉致、監禁、洗脳はアカの十八番です♪


アカの本の研究は推奨します! どんどん研究してください♪

ですが、アカの本は図書館持ちだしはできませ~ん。ごめんね♪

アカの本がなくなった場合、図書館長さんは責任をとらなきゃいけません!

写本は著作権法にかかります!絶対にやらないでくださいね♪

そしてアカの本の研究を行う場合、必ず月にいちどの精神判定を受けてください!

怠ると逮捕される可能性すらありま~す」


そうして一言。

「研究熱心なのはいいけど、たまにはやすもうよ♪ 」


笑魅(エミ)と名乗った少女はにっこり笑うと、

「ではみなさんお元気で!新日本帝国・中央帝都政府。政府広報でした~♪ 」

またね♪ と叫ぶとテレビの電源が勝手に落ちた。



 『……』

セリカ(芹香)は呟いた。

「なんですか? あれ? 」

作者も説明不能だ。


「知らん」

夢路よ。気持ちは判るぞ。


 夢路は愛娘(?)にそう答えると、

自分で勝手に茶碗にいれたお茶の中に漬物をいれて箸でまわして中を洗って。

「適恵。ご馳走さま」と。いって席をたつ。


 「あーつかれたつかれた。ごめん。適恵。後かたずけ当番、任せた」

そういって寝ようとする智魅に真由美が叱る。

「コンパにいっただけでしょ? 貴方も手伝いなさい」

智魅はふざけた調子でひらひらと手をふった。

「ちょっと、いろいろあって逃げて来たのよ」


「色々ってなによ? 」真由美の眉が動く。

「さぁ? 姉さんには縁の無い、オ・ハ・ナ・シ♪ 」

襲われかけて全員返り討ちにしたとか、姉と妹には話したくない話題だ。


 そうして智魅は自室に戻って行く。姉の小言など聞く気は無いらしい。

「あとで来てね。か・な・え・ちゃん♪ 」一見上機嫌な足取りで歩く下の姉。

こういう時は、なにかあったのだが。

下の姉は決して態度に出そうとはしない。


 上の姉は下の姉に対する愚痴をごぼしつつ、

適恵の片づけの手伝いをしだしたが。


 「がちゃーん」

皿を割った。こと家事に関していえば上の姉はかなりガサツなのだ。


「お姉さま。片づけは私に任せて御先にお風呂に」適恵はそういった。

普段の姉はこういった申し出は断り、

余計家事をややこしくするのだがここにセリカ(芹香)が一言。


 「私も手伝います」

結局、二人に追い出される形で真由美は風呂に向かった。


 皿に鍋をもって二人は井戸に向かった。

三月の始めの風はまだ厳しく寒い。

洗剤と焦げ落としのついたたわしが軽快な音を立てる。


 不意に。

適恵(カナエ)の愛らしい唇がある一言を紡いだ。


 「私。負けないから」

セリカ(芹香)は手を止めた。


 「え? 」

適恵は。セリカ(芹香)を無視するように呟いた。

適恵手もとの鍋が泡の音を立てる。


「私は負けない」


 そういって、彼女は芹香に、

いや、それを超えた遥か彼方に向かって微笑んだ。


 「姉さんにも。貴方にも。誰にも。……ね」

彼女の決意は、新たな運命を切り開くのだが、それはまた後日。

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