プロローグ
十一歳のバースデイ。私は箒に跨り、空を飛んだ。
魔女に開花した私の髪の色は。
それまで真っ黒だった私の髪の色は、そのときに染まった。
バーミリオン。そういう色らしい。
その色を見て、お父様は驚いていた。
そのときはただ私が魔女になることが出来たから、とても驚いているのだと思った。喜んでいるのだと思った。
その夜、私は得意のバイオリンを、お母様のピアノに合わせて奏でた。
想いが叶って、無邪気な私は、弦が切れるまで奏で続けた。
素晴らしい未来しか想像できなかった。
ほどなくして私はバーミリオンの色の意味を知る。
火と鋼と風のトリコロール。
つまり私は三つの属性を持つ、イレギュラな魔女だったのだ。
三つの属性の発現の可能性は限りなくゼロに近いという。
私は特別な存在なんだ。
その時ハッキリと、そのことを理解した。
理解してから私は真空管工場の試験室で、あらゆる国から取り寄せた様々な魔導書を読んだ。様々な言語の、様々なことを記憶した。様々なことを研究し、新しいものに昇華させた。それは可能なことだった。私が特別な存在であることは事実だった。
十二歳のバースデイ。私は真倥管を発明する。
それが全ての間違いだった。私は特別な存在だった。そんな特別は、いらなかった。
そう思っても。ここにはある。だから今日も。私は。