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沈黙パート2

緊急アラームは日没前に鳴った。


長い三回の警報。


近距離侵入。


近すぎる。


学生たちはまだ朝の戦闘の回復途中だったが、廊下の照明が赤に切り替わった。


「また亀裂か?」誰かが呟く。


「予測にはなかったぞ……」


それが問題だった。


亀裂は“出現する”ものではない。

数時間前から記録される。


ただし――何かが無理やり開かせた場合を除いて。


葵はすぐに雷禅の手を離した。


戦闘モード。


「後方から動かないで」彼女は言う。


「はいはい、母さん。」


「ふざけないで。」


彼は笑ったが、胸がまた焼ける。


発動ではない。


存在感だ。


決して負けない者


中庭に出たとき、すでに誰かが立っていた。


黒い制服。学生の灰色とは違う。

顔を横切る赤い刻印が光の傷跡のように輝いている。


亀裂の前に。


一人で。


「誰だあれ……」学生が囁く。


教官の体が強張る。


「外部部隊……こんなに早くか?」


少年がわずかに首を向ける。


冷たい目。分析する目。


「お前たちは邪魔だ」感情のない声。


コードネーム:クロガネ。

エリート戦闘クラス能力者。


亀裂から怪物が出現した。

先ほどより巨大。骨の装甲板に覆われている。


戦術はなかった。


連携もなかった。


クロガネが消える。


次の瞬間、空


怪物は二つに分かれた。


地面に触れる前に死んでいた。


絶対的な沈黙。


学生たちは武器すら構えていなかった。


雷禅は妙な感覚を覚えた。


尊敬ではない。


比較。


あれが“システムに選ばれた者”と、

自分のような存在との距離。


クロガネは歩み寄り、観察する。


雷禅の前で止まった。


「お前。」


雷禅が瞬く。


「俺?」


「今朝の報告にあった。不要な介入。負傷。低レベル能力。」


「憂鬱な要約どうも。」


クロガネはわずかに首を傾げる。


「足手まといの弱者は敵より損害を出す。」


葵が一歩前へ。


「仲間を救った。」


「統計的に無意味だ。」


雷禅は気づいた。


クロガネの視線は軽蔑ではない。


計算だ。


合わない変数を確認するような目。


「その刻印……異質だな。」


空気が重くなる。


葵が雷禅より先に言う。


「発現異常です。医療記録済み。」


クロガネは数秒見つめ、興味を失った。


「鍛えるか死ね。どっちでもいい。」


彼は地区の出口へ去った。


雷禅は気づかぬうちに止めていた息を吐く。


葵は吐かない。


「見すぎてた。」


「誰にでもああだろ。」


「違う。あなたを“評価”してた。」


雷禅は自分の手を見る。


震えている。


クロガネへの恐怖ではない。


彼の能力が……反応していなかった。


それは一つの意味を持つ。


街は、彼が“感知できない脅威”を連れてきている。


能力は近い死に反応する。


反応しないなら――


次の脅威は速い。


致命的。


予兆なし。


バリアの上空で、声が再び響く。


『心理的圧力、適用。』

『上位変数の導入、成功。』


間。


『不規則個体、感情耐性を示す。』


別の声が応じる。


『刺激を増加させよ。』


その夜、雷禅は眠れなかった。


葵は眠った。


だが二人のベッドの間の机に手を置いたまま。

彼がまだそこにいるか確かめるように。


そして力を得て以来初めて――


雷禅は利己的な願いを抱いた。


皆を救うことでもない。


神を倒すことでもない。


ただ……


明日、もう誰の力も奪わずに済むこと。

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