三十二ノ罪 地天激動大戰⑬ 怠惰&傲慢VS光の天使
『……』
「……クッ、どうしてだ。どうして動かない!!」
「……」
「!! 三吉!生きているのか!?返事をしてくれ!」
「……」
「三吉!返事をしろ!」
「うるっ……さい……。僕はもう……、死にたいんだ……」
「そういう訳にはいかん!私のsin僟で必ずここから貴様を救い出してみせる……!」
遠く意識が薄れていく中、亜久良の視界には白き巨影が静かに、冷淡に、神秘に此方へと歩みを進めているのが映った。
———10分前。
sin僟隊と天使がそれぞれの相手を求めて分散し、傲慢のパイロットである千方 亜久良と怠惰のパイロット、八瀬三吉は光の天使・ラファエルと対立していた。
「私は、ある程度の神典や説話は把握しているつもりだが、貴様は一体、何の天使だ?神嶌と戦ったミカエルという天使でもなければ、俺達とも戦闘をしたウリエルではなさそうだが」
『……』
「答えたくはないのか、答える必要がないのか。その所々に映える眩しく黄玉に輝く光。俺が知っている天使と少し様子が違うが、五大天使であれば……」
強大なる敵、‘‘天使’’を前に、亜久良はブツブツと独り言を始める。
自分の頭の中にある知識全てを持って自分と相対する天使の名前を見つけようとするが、それを三吉が制止する。
「もう、名前だってどうでもいいから、さっさと終わらせようよ」
「天使なんて、結局見た目とかあんま変わんないし、誰を殺そうが一緒でしょ。っていうか、天使なら僕のこと殺してよ」
「貴様はどれだけ死にたがりなのだ!」
天使であるラファエルの攻撃は強大なものと考え、亜久良は傲慢のsin僟と怠惰のsin僟に防御力を上昇させるバフを振り撒く。
「八瀬!貴様のsin僟に私のバフとやらを上乗せしたぞ!これで貴様も、あの天使の攻撃に耐えられるはずだ!」
「耐えたところで、アレを斃せなかったら意味ないでしょ」
「それもそうだが、貴様のsin僟なら斃すことも可能だろう!……悔しいが、僕のsin僟にはそう言った機能は備わっていないようだからな」
白き神の使いは、天に神槍を突き上げると先端の先に直径10mほどの光の円を生成する。
その円は一つ、二つと次々と頭上に出現し、白く醜い足が姿を現す。
およそ、百もの光の穴から姿を現したのは醜き天の獣、天獸であった。
「クッ!直接僕たちを攻撃するつもりはないと言うことかっ!どこまでも舐めた真似を!」
「また、あんなの相手にするのもう飽きたよ。殺すなら早く殺してくれ」
「三吉!貴様、いい加減にしろ!なぜそうも死にたがる!僕は命を粗末にするような人間は好きではない!」
「他人の気持ちなんて、結局頭が良くても分かるわけがないんだ。寧ろ、頭のいい人間ほど他人の気持ちなんてわからない。自分が全部正しいと思っているから」
「何だと!今はこの街が、人々が危ない状況なんだろ!だったら、sin僟に乗った以上、それらを守るのが僕たちの役目なんじゃないのか!それなのに、‘‘殺してくれ’’、‘‘死にたい’’と聞かされるこっちの身にもなってくれ!」
「……君は何も分かっていない。このsin僟の真の恐ろしさが」
「何?」
「来るよ」
「!!」
口論となっていた二人の元に百もの天獸が一気に襲いかかる。
隣同士の同種である獣を押しのけあい、まるで、目の前の餌を求めあうように涎を、歯茎をひん剥き出しながら、地面を抉り、ビルを壊し突撃する。
亜久良の乗るルシイドはその羽根で上空へと舞い上がり、回避するが三吉のアスロトは、天獸の群れに埋もれてしまう。
四方八方から囲まれ、全方向から攻撃されるアスロトであったが、sin僟一の防御力+ルシイドの防御機構ヲ与エシ粒子によって強化されたため、衝撃はあるものの機体自体にそれほどの損傷は見られない。
アスロトに群がる天獸を上空から亜久良はただ、見下ろすだけだった。
だが、それに気づいた別の天獸がその羽根を使い、亜久良の方へと向かってくる。
焦った彼は、急いで自身の機体に‘‘力ヲ与エシ粒子’’を振り撒き、強化された拳で何とか対応する。
これが、今までの戦闘を通して亜久良が学んだルシイドを使っての戦闘方法であった。
しかし、これが通じるのは通常種の天獸のみ、上位種の属性を持った天獸や天使には元々攻撃力を持たないルシイドでは強化した所でそれ程意味を成さないモノであった。
それを理解しているからこそ、今、この現状で唯一頼りとなるのが三吉の乗るアスロトであった。
その頑強なボディはsin僟‘‘随一の防御力’’を誇ると共に、吸収したその衝撃を一気に跳ね返す強力な攻撃力を誇る。
更に、ルシイドの力ヲ与エシ粒子を受けることで、sin僟‘‘随一の攻撃力’’を誇る。
宙を舞う亜久良は、天獸の相手をしながら、アスロトに支援するその隙を伺う。
やがて、上空を飛ぶ天獸は同士討ちを始めるモノも現れたことによって、ルシイドに一瞬の隙が生まれた。
「ここだ!!」
ルシイドの羽根から放たれた赤赤しい大量の粒子は群がる獣を貫通し、アスロトに取り込まれていく。
モニターに映し出される攻撃力の数値がみるみるうちに上昇し、それを確認した三吉は、貯まったエネルギーを一気に開放する。
白い山の様に群れた天獸は全方向に吹っ飛ばされ、辺りは綺麗さっぱりと更地となった。
「よくやったぞ!三吉!僕の計算通りだ!」
「……」
「三吉、どうした」
「……ハァ、ハァ、ハァ」
『……』
神々しくその輝きを放つ無言の天使は天獸の第二波を放つ。
これが、彼らにとって、地獄の始まりであった。
32話読了ありがとうございます!今回から、怠惰のパイロット・三吉と傲慢のパイロット・亜久良が光の天使・ラファエルとの戦闘が始まりました!!
結構癖のある二機ですが、どうやって天使達と戦うのか?
どうぞご期待ください!




