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sin僟・ザイガ  作者: HEiTO
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二十六ノ罪 地天激動大戰⑦ 出会い

 それから彼女、天宇夢魔の人生は壮絶なものだった。


 両親を亡くした彼女は、親戚の家をたらい回しにされ、一人の独身男性の家へ預けられることとなった。


 その男性は父親の遠い親戚で、今までの人生の中で出会った回数は1~2回程度であった。




 男は、自身のフケが溜まった頭を掻き毟りながら、何年も風呂に入っていないであろう垢まみれの手で夢魔の手を取り、寝室へと連れていく。


 夢魔をベッドへと投げ飛ばした後、彼は彼女の足を手に取り、舌で足裏を嘗め回し始めた。




 歯も磨いていないその口は唾液まみれでベチャベチャと不快な音を立てながら夢魔の足の味を吟味するように入念にしゃぶりつくす。




「や、やめてください……」




 恐怖に駆られ、助けを求める夢魔の声は誰にも届かず、彼女は男のされるがままだった。


 しかし、彼女は当時中学生だったため、義務教育期間だと言うこともあり中学校には通っていた。


 彼女にとって中学校は男子生徒達との一件もあり、嫌な思い出しかないところではあるが、以前とは違う学校、そして何より、男から離れられると言う解放感から彼女は毎日学校がある日は通い、夢魔自身にとって平穏な日々を過ごしていた。




 そんな夢魔には一人気になる人物がいた。


 彼はとても爽やかな人相で、成績も優秀。


 スポーツは苦手だったが、そんな全てが完ぺきではないところに彼女はどこか惹かれた。


 ある日、彼女はそんな彼に呼び出され、一緒にテスト勉強をすることとなった。


 場所は彼の実家。


 夢魔にとって、男性の家へ行くことは初めてであり緊張したが、地獄のようなあの家へ帰ると思えば、全然よかった。


 彼と出会ったのは、夢魔にとっては小さな幸せであった。




 しかし、それは彼女にとって、最後の悪夢の始まりでしかなかった。


 なんとか睡眠中の叔父の隙を伺い、家を抜け出した夢魔は、心惹かれる青年の家へと向かった。


 家は、ごく普通の一軒家。


 初めての男子の家に夢魔の緊張はピークを迎え、震える手でインターホンを鳴らそうとした瞬間、ドアが開き青年が迎え出てくれた。




「いらっしゃい、天宇さん。さ、中入って?」




 爽やかな声で青年は震える夢魔の手を握り彼女を自分の部屋へと招き入れる。


 台所らしいところから、彼の母親であろう人物の顔も見え、「いらっしゃい。ゆっくりしてってね」と優しい声で言われた夢魔は軽く会釈をした。




 力強く引っ張る彼の姿を見つめる夢魔であったがすぐに彼の部屋へついてしまった。


 初めての男子の部屋。


 しかも相手は少し気になる男子。


 夢魔は彼の部屋へ入るよう気持ちを作ろうとするが、それを彼は待ってくれなかった。




 ドアを開けるとそこには彼以外の数人の男子がこちらを見つめていた。




「じゃーん!!天宇夢魔ちゃんでーす!皆ー!仲良くしてあげてね~!」




「フー!!夢魔ちゃーん!」




 ナニコレ?と夢魔は思った。


 今日は彼との単なる勉強会。


 そう思っていた夢魔だったが、実際は違った。


 彼は嘘を吐いていたのだ。


 それを彼女は見抜くことができなかった。




 彼女の警戒心はあの優しい母親の声で薄れてしまっていた。


 勿論、母親は関係ない。


 これから息子が連れてきた女の子がどんな惨状になろうか知る由もない。


 そんな母親の優しい、一声が彼女の警戒心を解くには十分すぎていた。




 気づけば夢魔は他の男子たちと共に渋谷のカラオケボックスでまわされていた。


 意識はもうあってないようなものだった。


 無感情のまま好き放題にされる夢魔を見て、彼等は猿のように奇声を上げ、喜ぶ。




 ここで彼女は己の人生に心の底から絶望を感じた。


 誰からも愛されず、誰にも救われず、自分は結局こうなる運命だったのだと。


 昔見たアニメのような王子様は現実世界には存在していないのだと。




 夢見る少女の幻想は既に壊されていた。


 絶望する彼女の瞳から一筋の涙が流れるが、周りは誰一人として気づかない。


 ただ、狂ったように騒ぎ続ける。




 自分達の頭上に、破滅の星が刻一刻と近づいているとも知らずに……。






 ————橋姫、夢魔、両名が閉じ込められて数分後。




「おいおいおい、二対一で俺とやりおうってか?」




 ウリエルと一対一の勝負に臨もうとしていた白狐だったが、彼の目の間にはもう一体、サキエルの姿があった。




『邪魔をするな!!サキエル!俺は一人で此奴と闘いたいんだ!』




『そういうわけにはいかねぇよ……。ウリエル、お前、その隠し持っているものをさっさと出せ』   




 サキエルは、ウリエルの企みを看破していた。


 そう、ウリエル彼は持ってきてしまっていたのだ。


 悪魔の果実を……。




 サキエルの狙いは最初からソレだった。


 今回の天使対悪魔との戦いに、最初は参加するつもりはなかった。


 しかし、ウリエルが禁断の果実を持って下界に降りたのを知ったサキエルはせめて彼がその実を使うのを阻止するために下界へと降り立った。




「ごちゃごちゃうるせぇんだよ。二対一でも、その変な果実を使おうが俺には関係ねぇんだよ!とっとと来い!俺一人でお前ら二人とも相手にしてやる!」




 宿命のライバルであるミカエルを前にして傑は背後に漂う異様な雰囲気を察知した。


 ミカエルの今にでも首元を突き刺すような視線を感じながらも恐る恐る白狐に通信する。




「今どんな状況だ?」




 しかし、白狐の返答はない。


 まさか、とは思ったがそれでも傑は白狐はまだ斃れてはいないと信じた。


 もし、白狐が天使に斃されれば既に自身の前に現れているはずだから。


 だが、そうではないと言うことは確実に白狐はまだ生きている。




 傑は一か八か全速力で後方を振り向き駆け抜けた。


 当然、ミカエルは傑の後を追いかける。


 圧倒的早さのミカエルにサタスはただひたすらに走り続ける。




 目の前には人々がウリエルの手によって変貌した天獸の群れが押し寄せてくるが傑は迷いもなく、その群れへ突っ込む。


 鬼狼ノ爪を出した両腕を前方へと伸ばし踏みつけた軸足で真っすぐ正面へと飛び込むと同時に横回転を掛ける。




 横向きの竜巻のような回転でどんどんと天獸を貫いていき、前へと進む。


 群れを抜けた傑は休む暇なくサタスを動かす。


 後方からはミカエルが極小の光のエネルギーをこちらに向けて放つがサタスは上手いこと躱す。




 あれからどのくらい経ったのか、やっと傑は白狐の元へと辿り着いた。




「白狐!無事か!?」




「テメー何しに来た!!俺は俺の力で斃すんだ!余計な真似はすんな!それより、橋姫と夢魔の事を頼む!」




 白狐の元に夢魔と橋姫の元にいた天使がいる現状を見て、傑は察した。


 そして彼の言葉を信じた傑は更に奥、夢魔と橋姫の元へと走り出す。




『そうはさせるか……ヨッ!』




「待てよ、テメーら三人の相手はこの俺がしてやる」




 傑が駆るサタスは一瞬も脚を止めることなく走り続ける。





 そして、現在―――――。


 過去の記憶にうなされる二人の脳裏にある男の影が思い浮かんだ。


 それは地獄で出会った一人の男だった。


 暗い闇の奥から一筋の光がこちらに向かい、段々とその影から傑の姿が現れた。


 その姿を見た時二人は意識を取り戻し、自身が操るsin僟を動かす。




「ハァ!」




「タァ!」




 アストは脚で、レヴィーは鞭で自分達を囲む闇の球体へ攻撃する。


 それと同時にサタスが鬼狼ノ爪で外側から2つの球体を破壊した。




「二人とも無事か!?」




「はい!」




「ええ!」



26話読了ありがとうございます!

前回に引き続き、夢魔の回想スタートです。

結構重たい雰囲気の内容が続いてますが、彼女達がどういった人生を歩んできたのか、傑という人間にどんな感情を抱いていたのかが伝わってくれたらなと思います。

次回、27話もどうかご期待くださいませ。

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